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Be yourself〜立命の記憶I~23

◆第15章:必然の遠回り(2)


ゆっくりアイスコーヒーを飲みながら、しばし考えた。

私、日々の忙しさにかまけて、最近、深く考える事忘れてたな・・・。
自分らしさも失っていたな・・・。疲れてたんだ私。

それをウチの主人は察していたんだ。
だから海外旅行に行かせてくれたんだ。私が海外が好きなのを知ってるから。
Konamiさんに会いたいなって言った私が、本当に会いたそうな顔してたんだろうな。
それを見て、「会いたい友達に会ったら」「好きな海外に行ったら」私が元気になれると思ったんだろうな。

そう考えると、主人が、どんな気持ちなのか、理解できる。
・・・・ホント優しい人だな。

・・・あれ?よく考えたら理解出来るじゃん、私。人の気持ち。
空気では理解できないけど、深く深く一生懸命時間をかけて考えたら、理解出来るじゃん。
他の人よりも何倍も遅いし、ヘタすると数年かかる事もあるけど。

主人は、思っている事がすぐ顔に出るタイプだ。付き合い始めの頃から、私の事を好きだって事も、顔を見ればすぐに分かった。今時珍しいくらい、真面目なタイプで、分かりやすい冗談しか言わない人だ。
だから、私、主人の事を好きになった。楽しくて、明るくて、優しくて、頼りになる。
どんなに辛い事があっても、この人とだったら乗り越えられると思って結婚したんだ。
私、やっぱり主人の事、愛してるな。

人の気持ちって、目に見えるものが全てじゃないし、見えない気持ちが空気に混ざって、世界中に溢れてるんだね。

世界中に、言葉に出来ない想いがある。

私、今まで目にみえるものしか信じてこなかった。騙されないように、傷つかないように。
私、バカだった。

やっとわかったよ。

もっと五感を研ぎ澄まして、見えないものを感じ取らないといけない事。
愛してるって言葉の奥に、もっと深い気持ちが潜んでいる事。

あぁ・・・、私、主人に愛されてるなぁ・・・。
タイまで来てやっと分かったよ。

タイって不思議な国だね。
私、びっくりするくらいに五感が冴え渡って、全身の感覚が鋭くなっている。
とても感受性が豊かな、昔の自分に戻っている感じがする。

そして、昨日の彼のセリフが蘇る。

「そんなのあなたらしくないじゃない?あなた、「いつも元気な愛ちゃん」だったでしょ?」

そうだ、私、高校の頃、言っていた。
みんなの前に立って話す前は必ず。自分のキャッチコピーのように、

「いつも元気な愛ちゃんです!みんな元気~??」

って。そしたらみんな、いつも笑ってた。

私、忘れてたんだ。
小さな頃から本を読むのが好きで、学校の作文などは、本気で何枚も書いて賞とかも貰った事がある事。
中学生の頃からは、作詞や作曲もしていた事。自分のサインまで作っていた事。
歌うのが好きで、夏祭りの舞台に出たり、それがラジオで流れたり、コンテストで色んな物貰ったり。扇風機とか、ポテトチップス1年分とか。

いつも「頭にお花が咲いてる」と言われていて、いつも明るくてゴキゲンな、フワフワした不思議ちゃんだった事も。
霊感みたいなものが強いのか、他の人には見えない何かが、そこに居る事を感じる事が出来たり、自分の未来が映像で頭に浮かんだりしていた。

だから、私、17歳で親を必死で説得して、上京した。
絶対にCDデビューするって思ってた。未来が見えていたから。
最初は小さなチャンスを掴んで、一生懸命頑張った。
沢山の大人の中で、10代の田舎の女の子が、必死でチャンスに食らいついた。
歌手になるなら、作詞作曲が出来たほうが良いというのは聞いていたから、作品を書き溜めていった。
それを認めて貰えて、TV番組のオーディションで採用してもらえた。
メジャーデビューのシングルCDは、私の曲が採用して貰えた。嬉しかった。

ただ、その後、デビューしたユニットは解散して、ソロになった時に、私、自分を見失ってしまった。
デビューする事がゴールになっていたのか、急に、自分の未来が見えなくなった。
私の五感は鈍り、豊かな感性は無くなっていき、どんどん曲が書けなくなっていった。
歌もどんどん歌えなくなってきて、しまいには、ステージに立てなくなった。
いや、立ったのに、失敗ばかりしていたんだった。

辛かったなぁ、あの時。

自分の才能の無さに嫌気がさして、音楽を辞めた。
正確に言うと、努力が出来ないくらい、精神的に病んでいたんだと思う。
そのタイミングで、田舎の両親に扶養から外れなさいと言われて、社会保険の付いているパソコン教室に就職したんだった。
私の転機だった。
そこから、ちゃんとした社会人としての私が始まった。
いっぱい失敗もしたけど、いっぱい良い事もあった。
資格も取ったし、面白いと思う事をどんどん追求して、沢山の事を吸収した。
転職も経験して、経営感覚も身につけて、会社が上場するところも見守った。

その頃には、もう未来はどうなるのかは、見えなかったけれど。
ただ、目の前の事を、必死でやっていただけ。
そして、結婚、出産、起業。怒涛で目まぐるしい日々が続いていた。

私、すっかり忘れていた。
本当の自分がどんな自分だったのかを。

ここにきて、私、やっと自分らしさを取り戻した事に気が付いた。
本当の私、元気な私が、今、ここに居るもの。

そして、やっと分かったよ。
私、子育てに疲れていたんだね。
理想の母親像に縛られて、無理な事を一生懸命やっていた。でもうまく出来なかった。
理想の家庭像を実現出来ずに、とりあえずお金があれば何とかなるかと、ひたすら働いて。
でも、段々と何のために働いているのかも分からなくなって。
その内、仕事と家事と子育てだけの生活に疲れ果てて、何かをやる気力も体力も無くなって、自宅では横になるばかりだった。

自分の子供の泣き声に、いつもイライラしたり、悲しくなったり、悔しくなったりしていた。
ママ友の前では、明るく振る舞っていたけど、私、家ではいつも子供に怒っていた。
自分の子供がかわいく思えない時もあった。それは母親失格だろう、と自分の事も嫌になった。

私、自分が嫌だった。
産後のダイエットを頑張る事や、お金は使え無くもないのに、美容院やネイルサロンにマメに行く気力さえ無くて、ただ子どもたちの世話と家事と仕事をこなす事だけに追われて。
日頃の憂さを晴らすように、お昼にみんなにご馳走して美味しいものを食べて、夜はお酒を飲んで、また太っていく。

私、こんなはずじゃ無かったと思っていたんだ。
でも、その現実に向き合わずに、目を反らし続けていた。

私、自分に自信が無くなっていたんだね。
心から、子供達の事、可愛いと思えていなかった。

でも、今はもう、分かるよ。私、元気になったから。
今は、子どもたちの事、本当に可愛いと思ってる。
いつか、彼のお母さんのように、魂のメッセージを送ってあげたいと思ってる。

あと、私、やっぱりすごく思い込みが激しい。
彼の事はずっと、冷たい人だと思ってた。私に対する言動と、表情だけを考えると。
でもよくよく考えたら、彼はとても優しいのね。
昨日、優しかったわ。励ましてくれてたのか・・・。
今頃気づいた。やっぱあたし、おバカだなぁ。

もーぅ、タイのオシャレなカフェなのに、ハエがイチイチ寄ってくるなぁ。ウザいぞ。
そろそろ帰れってか。ハイハイ。
ん?この2匹のハエ、ウチの会社の二人が無意識に飛ばしてるんじゃないの?早くお土産買いに行けって・・・。最初居なかったのに、ちょっと前からブンブン飛び始めたし・・・。

あ、そうだ、私、彼にまた大事な事言おうと思ってたんだ。
今日、彼に伝えるの忘れないようにしなきゃ。

昨日、彼と話をしている中で、彼が、自分の上司である工藤さんに会わせたいという話をしてくれた。彼の良きメンターなのであろうとは思ったんだけど、彼がその人の受け売りばかり話していたから経営者としての彼の手腕がちょっと心配になったのだった。

あと、私がみえた彼のお葬式のシーンが怖くて、絶対にそんな事にはさせたくないと思ったから、事故とかには本当に気をつけて欲しかった。

そう思って、私は、
「たぶん私、本を書くからメモに使わせて」と、あらかじめ伝えてあった会社のみんなとのグループLINEにこう投稿した。
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備忘録
今日、彼に伝える事

工藤さんと会いたいから紹介して
Change your destiny(訳:あなたの運命を変えて)
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さ!よし、帰ろう!
と私は、立ち上がった。
その時、彼からメッセージが。


続き→第15章:必然の遠回り(3)

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