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【安曇野から発信する潤一博士の目】25~日本列島に人類の歴史が面白い

 最近、人類の歴史について、面白い本を読みました。
 それは、篠田謙一著「人類の起源」(中公新書)です。

篠田謙一著「人類の起源」(中公新書)

 日本列島の人類は、ほぼ4万年前ごろ渡来した現生人類(ホモ・サピエンス)が最初である、というのが、現在の大かたの意見です。
 ところが、長野県北部の野尻湖底で、1962年から行われている発掘では、通説よりも古い5万年~4.5万年前の地層から、ナウマンゾウなどの化石とともに、人類の存在を示唆する発見が続いています。人類の確実な証拠を求めて、今春3月には、第23次野尻湖発掘が行われます。

第17次発掘(2008年3月)風景

 さて、篠田さんの本によりますと、現生人類(ホモ・サピエンス)よりも古い人類であるネアンデルタール人と、デニソワ人が、前者はヨーロッパ、後者はシベリアからチベット高原などを中心に分布していました。両者の交雑はDNA分析から証明されています。さらにアジアの現代人(ホモ・サピエンス)から、デニソワ人のDNAが検出されていることから、数万年前のアジアでは、デニソワ人と現生人類(ホモ・サピエンス)が共存していたことも明らかです。数万年前には、日本列島のすぐ隣の中国東岸や東アジアには、デニソワ人が分布していたわけです。5万年前頃の日本列島にデニソワ人が渡来した可能性は大いにあります。5万年前頃は、最終氷期の最初の寒冷期で、海水準は100m以上も低下した可能性もあります。
 野尻湖発掘によって、日本列島の人類史に、画期的な一頁が加わることを期待しています。

ナウマン象臼歯の出土状況(野尻湖発掘)

(地質学者・理学博士 酒井 潤一)


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