ジキル博士とハイド氏/ロバート・ルイス・スティーヴンスン 夏来健次

http://www.tsogen.co.jp/sp/isbn/9784488590017

読了日2020/04/13

女児を踏みつけ、議員を殴りころす粗暴な男がいた。彼の名前をハイド氏という。
一方で友に愛される良い人柄の博士がいた。彼の名前をジキル博士という。
二人は深い面識があるらしい。だが、ジキル博士の往年の友はそんな人物の存在を知らなかった。
しかも彼は弁護士の友人に、自分が死んだら遺産はハイド氏に渡すように遺書まで預けていた。
ハイド氏とは何者なのか。
なぜ殺人を犯すほどの危険人物が、ジキル博士と仲を深めているのか。

多重人格の祖とも呼ばれていた本書だが、不覚読めばそれらとはまったくの別物だった。
いわゆるクスリでタガを外す、といったところ。
品行方正なジキル博士は、自らのうちに巣食う悪の本質を殺して生きてきた。
だが自由になりたい、そんな自分の心の声についに敗北する。
やがて彼は薬物を調合し、新たな自分……すなわちハイド氏になる方法を見つけ出す。

性格はおろか、容姿さえ変えてしまうクスリ!

さて私たちが生きる現代では個人の特定にDNAを使用する。
一卵性双生児ではない限り、何億分の1でしか一致する相手がいないとされている個人識別情報だ。

果たして現代にジキル博士とハイド氏がいたら、ハイド氏の殺人はジキル博士の犯行とみなされるのだろうか。
現代に舞台をうつした時点で、そんなクスリの調合は不可能というナンセンスな問答はしないことにして。

一般に解離性人格障害の場合、上位の人格は下位の人格の記憶を有するが、下位は上位の人格を知らないとされている。
ジキル博士はいちおうは、ハイド氏の記憶を保有しているようだ。
だが殺人はジキル博士の意思ではない。
それなのに万が一、犯行現場で発見されたDNAがジキル博士のものと断定されたら……?

容姿は変えられても、DNAは変えられないのか?
それとも容姿を変えるほどのDNAの異変も生じさせるクスリなのか?

興味は尽きない
この作品が今でも読まれ続けているだけの理由はある

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