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大地の芸術祭のオススメと注意点

大地の芸術祭に行ってきました。そこで、思ったことを書きたいと思います。以下、作品への直接の言及はないですが、一部作品の写真があります。ネタバレが嫌いな方はご遠慮ください。

・オススメの3つの作品
・注意点、惜しい点
・その他のオススメ

オススメの3つの作品

芸術は「人間と自然が調和する技術」という考えをもとに、オススメする3つの作品を紹介します。

1,D153 私たちはそれを、ありありと憶い浮かべることができる
D217 庭が生まれるところ…そして
D345 EDEN

ここが大地の芸術祭で1番良かったです。星峠の棚田の近くにあり、3つになっていますが1つの家としてあります。なぜこれらの作品が良かったのでしょうか。それは最寄りの「D143 脱皮する家」と比較するとよくわかります。


「D143 脱皮する家」は公式ガイドブックにも載っており、ガイドマップでも太字で書かれている作品です。人も多くいました。民家の中をすべて彫刻刀で彫られているという力作です。しかし、私には「痛い」という感覚が残りました。質量的には迫力があるのですが、それは元の民家の良さというのを打ち消しているようにも思えました。
一方で、上に挙げた3つの作品は自然の空間に馴染んでいました。あるいはこういうこともできるでしょう。上の作品がどの作品であるかを判別することができませんでした。どれが誰の作品かすらわかりませんでした。つまり、作品がなだらかなグラデーションとしてあったといえます。ここでは「心地よい」という気持ちが残りました。ボランティアの受付の女性も、「今日、ここに来られて良かったです。」と話されていました。


これは大地の芸術祭全体にいえることですが、越後妻有、十日町という地域にとって、アート作品は「異物」です。それは土地の文化から生まれた祭りや器、食といったものとは異なるという意味です。そして、多くの作品はこの「異物」のまま佇んでいます。「異物」であることと向き合い、その土地性と交差した作品が上記の3作品なのだと思います。「人間と自然が調和する技術」としての芸術であり、自分の感覚が喜ぶものでした。

2,Y052 最後の教室

クリスチャン・ボルタンスキーの作品です。小学校の体育館を利用した作品なのですが、「まず場所に対して耳を傾ける」という彼らしい作品だったと思います。

そこには2003年に見たのとは全く異なる風景と雪に閉ざされた学校があった。5ヵ月もの間深い雪に閉ざされる地域を、作家はそのとき実感したのかもしれない。場の記憶を建物の中に密度濃く、重く閉じ込めた作品となった。<http://www.echigo-tsumari.jp/artwork/the_last_class(2018/08/17)>

作品の密度が圧倒的だったといえるでしょう。匂い、音、視覚的な喜び…とインスタレーションとしてお手本のようです。これは一見する価値があると思います。薄暗く、怖く感じる空間の連続なのですが、小さい子供が「ぼく、楽しい!」といっていたのが印象的でした。

3,N080 ライトケーブ

全長750mのトンネルの途中にある清津峡の絶景を望む見晴らし所と、終点のパノラマステーションで作品を展開する。終点には、清津峡の景観を反転して映す「水盤鏡」の幻想的な眺めが待っている。<http://www.echigo-tsumari.jp/artwork/periscopelight_cave(2018/08/17)>

今回の目玉の作品といえるでしょう。今年完成した作品で、大仕掛けの「借景」と呼べます。長いトンネルを歩いていかなければ行けないのですが、探検をしているようでドキドキします。途中にも作品があり、それも面白く飽きさせないです。観光地にある洞窟のアートver.とも思えてきます。

注意点、惜しい点

・自動車で周るには大変、バスで周るには退屈
私は東京から自動車で行きました。周遊バスだと行きたいところに行けず、また、時間も固定されるからです。しかし、東京から十日町へ行くより、大地の芸術祭を周る方が大変でした。東京23区より広いというのは本当でした。何よりも山道が多いからです。例えば、松代に426号線という道がありますが、間違えても通るべきではありません。地図上はまともな道ですが、車一台しか通れない山道でした。そのような一本道がいくらでもあるので注意が必要です。大きな道を通ることを心がけたほうがいいと思います。また、いくつも作品を周ると、車の乗り降りで疲れるということを感じました。作品が散逸している弊害でもあります。

・公式ガイドブック、ガイドマップが中途半端
大地の芸術祭は公式HPの情報だけでは周れません。公式ガイドブック(1200円)、ガイドマップ(100円)が必須だと思います。一方で、公式ガイドブック、ガイドマップが完璧というわけでもありません。例えば、公式ガイドブックにすべての作品が写真付きで載っているわけではありません。「T000がどんな作品なのか」と調べたいときにはスマホを使うしかありませんでした。同様に、ガイドブックで近くに作品があっても調べるにはスマホを使うしかないです。
また、カーナビに住所を打ち込むことが難しいです。作品一つ一つの住所は公式ガイドブックには載っていません。そのため、大地の芸術祭が道に取り付けている案内を頼りにすることになりますが、それも大事なところがなかったり、見落とすので、何度もUターンすることになりました。このあたりは改善の余地があると思います。

・自然、環境を楽しむ機会が少ない
北川フラム氏が総合ディレクターをつとめているので、どうしても瀬戸内国際芸術祭と比較していまいます。その点ではどうしても見劣りしてしまいます。というのも、瀬戸内海の島や海を、船や自転車、徒歩で楽しむ瀬戸内国際芸術祭は、常に五感が働いていました。楽しくて仕方がないという感じです。それと比較すると、大地の芸術祭はどうしても車に乗っている時間が長く、大きな美術館を車で巡っているだけになってしまいます。これでは大地の芸術祭の本当の目的とは違うものになってしまっていると思いました。それとは別に、温泉や食事は十分に楽しめます。

その他のオススメ

・そば屋 長森 南魚沼のそば屋さん。本当においしい。車なら十分にいける。
・へぎそば 由屋  ご当地グルメ。量が多く、小麦粉が多い。わさびではなく、からしをつける。
・千手温泉「千年の湯」 源泉かけ流しなので行ってみた。お盆で人が多かったが、いい湯だった。仮眠室もありよかった。
・353号線の道の駅 十日町側からN080 ライトケーブの先にある小さい道の駅。野菜や無農薬のお米が売っている。地元の人がやっている。(むしろ他に道の駅を見かけなかった。)
・Y072 家の記憶 塩田千春さんの作品。紹介しきれなかったがとてもいい。表紙の写真。

ご家族での旅行やデートなど、ライトにアートを楽しみたいという方はとてもいいと思います。熱心なアート好きな方は、綿密に計画した方がいいと思いました。ぜひ、行ってみてください。

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