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読書の記録(35)『ケモノたちがはしる道』 黒川裕子 静山社

手にしたきっかけ

YAに向けたリーフレットづくりでご一緒した司書さんに教えてもらった。
イマドキの中学1年生が、熊本のジジさまのもとでわな猟を体験し、価値観を揺さぶられていく話。

以前、中学校の入試問題を作ったことがある。その時に、『野生動物と共存できるかー保全生態学入門』高槻成紀(岩波ジュニア新書)を問題の本文とした。その後、東京書籍の中学1年生の国語の教科書に『オオカミを見る目』が採られ、それも興味深く読んだことを思い出した。

2022年に家族で知床にいった時に『ソーセージの悲しい最期』を知った。


大阪に住んでいると野生動物と遭遇することはあまりないが、今年度『アーバンベア』のニュースをよく耳にした。漫画『ゴールデンカムイ』 野田サトル 集英社 や『マタギに育てられたクマ 白神山地の命を守って』金治直美 佼成出版社 を読んだこともあり、野生動物との共存にアンテナが立っていた。そんな時に、この本を紹介されてぜひ読みたいと思った。

心に残ったところ

罠にかかったシカの描写。ものすごくリアルだった。最期ってこういうことか…とズーンときた。さっきまでそこにあった命が、個体番号になる。息づかい、温度、目線…といった生きている証が、最終的には数字の羅列になる。

野生動物を見て起こる感情。お肉を食べて起こる感情。最期の場面に遭遇して起こる感情。どれも人間の自然な感情だ。普段はそれらの感情はバラバラに点在していて、つながってはいない。むしろ、毎回つなげていたら、しんどくなってしまうかもしれない。

写真映え、共感、リアルとバーチャル、メガソーラー、動物との共存。どんな世代の人でも、何かしらの体験にこの本『ケモノたちがはしる道』は引っかかってくると思った。普段は見えていない(見ていない)けれど、本当は見ようとしていないだけなんじゃないの?どこかに押しやろうとしているんじゃないの?という感覚を掘り起こして、「ほら、ここに確かにあるよね」と見せてくる感じがした。

まとめ

小学生から中高生まで、色んな子にお薦めしたい。子どもだけではなくて、大人にもぜひ一緒に読んでほしい。「私らが子どものときにはね〜」とか、「田舎で鶏を飼っていてさ〜」とか、「食育ってなんだろうね」とか、自分とは違う世代の人とも、意見を交流したくなる本だ。

青少年読書感想文全国コンクールの、高学年の部か中学生の部の課題図書になりそうな気もする。

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