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映画評『フェイブルマンズ』/スティーブン・スピルバーグ監督が死ぬ前に撮らなければならなかった作品

スティーブン・スピルバーグ監督の最新作が日本にきた。
『ウエスト・サイド・ストーリー』から間をおかずに届いた。
なんて嬉しいことだろうか。
どうやら自伝的な物語らしい。
それくらいの前情報だけにとどめて、観にいった。

動揺した。
観て、面食らった。
いつものスピルバーグの映画は始まって30分以内に、完全に、テーマの提示がある。
主人公が対決せざるを得ない「人生上の大問題」の提示だ。
それは「敵」と言いかえても良いかもしれない。
トラックが、巨大ザメが、トライポッドが、不正まみれの政権が、東西冷戦が、復讐の構造が、不寛容が、これまでの敵だった。
アメリカ映画が得意とするドラマツルギーの、もっとも良い実例がスピルバーグ映画だ。

しかし、『フェイブルマンズ』にはそれがない。
主人公が対決せざるをえない「敵」というネガティブな存在はいない。
むしろ、最初に提示されるのは、ポジティブなものだ。
「映画作りにハマること」。

(※以下、この記事は、わたしが主宰している映画メルマガ「僕らのモテるための映画聖典メルマガ」の連載から抜粋して転載しています)。

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