詩153「旅人は待てよ」

「旅人は待てよ」

帰らぬ旅人が帰ってきた
消え失せんと望むはうつつ
記された足跡は永遠となって
誰かが望めば
赤い詩集の果てから帰ってくる
むしろ難しいことなどなくて
場所も時間も選ぶこともなくて
瑠璃色を纏った言葉が手紙となって
我々のもとに戻ってくる
理屈などはどうでも良いと思えた時には
あのレインコートを羽織った旅人が見える
失われた時を知る豊穣の女神は歌い
この宝石を南の風で濡らすことだろう
旅人は待てよ


Masanao Kata©️ 2024
Anywhere Zero Publication©️ 2024

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?