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その14:書いたらどうなる?

ここに書く話題を考えていたら、めっきり文字を書かなくなっていたことに気付いた。
萬年筆くらぶという集まりに属していながら、ここのところの万年筆が観賞するものになっているじゃないか。
これはいけないとは思うのだが、パソコンで仕事をするのが当たり前の現代において、文字を書く機会を見出すことも容易なことではない。
まして書かないと日増しに漢字は忘れるし、 書く文字は下手くそになる。これがまた書かない行為に拍車をかけている 。
よく「書いて覚える」なんて学生の頃には幾度となく見聞きしてきた。実際に漢字や英単語を何度も書いて覚えたものだ。書く行為の良さは、脳と身体が連動するように刺激することにある。
文章を考える時は左脳、それを手で書く時は右脳が刺激されるそうだ。両方の脳を活発に働かせながら、手書きだとパソコンのような予測変換も利かないので、一言一句を確認することになる。それが脳への強い働きかけになるという。パソコンで打ったものよりも記憶に残るということだ。
手書きの文字には、筆跡という人それぞれの個性も出る。それにより画一的な活字よりもビジュアル的に記憶に残りやすい。またインクの色でもそうだ。更にはインクの匂いで嗅覚からも記憶のアンカリングが出来たりする。最近だと万年筆のインクも様々な色、香りのするものが売られている。
パソコンばかりで文字が下手くそになることを考えてみると、これはパソコンで打ち込むスピードに書くことを追い付かせようとする心理の働きだろう。 忙しない日々で書くことにまで早さを求めてしまうのか、自ずと殴り書きに近付いて行った。まさにタイピングに馴れた生活の末路だ。
ゆっくり過ぎてもどうかと思うが、 丁寧に文字を書く心の余裕もまた現代人には必要かもしれない。 丁寧な暮らしはここからも始まるのではないだろうか。
好きな文章を書き写してみたり、なかなか会えない友達に手紙をしたためてみたり、 読んだ本の感想や日記を書いてみたり、自分と向き合うツールとして、丁寧に文章を書く機会を設けることはいくらでも出来るはずなのだ。
ネブラスカ大学の研究では、手書きメモの方がタイピングよりも自分の考えをうまく表現出来るとされた。プリンストン大学とカリフォルニア大学の研究者の発表でも、タイピングより手で書く人の方が飲み込みが良く、情報を長く記憶して新しいアイデアを理解するのにも長けているそうだ。
取り急ぎ、私はこの原稿を手書きで書いてからタイピングの正書に取り掛かるべきだろう。毎回のネタに困り出した私にとって、足りないものはこれかもしれない。早速、万年筆にインクを注ごうと思う。

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