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停電を免れた夜に考えたこと - 多様性のある分散型エネルギー社会へ

春分が過ぎ、桜の開花宣言もでたのに、季節外れの寒さ。東京は雪がちらつき最高気温は一桁台。手がかじかむ一日だった。

1月から続いた「まんぼう」もようやく明けたので、「今夜は居酒屋で生ビールだ!」と心に決めていたけど、ニュースからは緊迫感が伝わってくる。キャスターが「節電にご協力を」と繰り返し訴える。

先週の地震の影響で、火力発電所の稼働率が下がっているところへこの寒さ。
政府から『電力需給逼迫警報』が出された。
東京電力管内で、300万軒の停電が起こる可能性があるとか。


停電になる前に早めにシャワーを浴びて、湯たんぽをつくって懐中電灯を用意していたけど、なんとか停電は回避されたようだ。
みんな節電に協力するんだなあ、とちょっと意外だった。

補修している火力発電は、元に戻るまで数ヶ月はかかるらしい。
今が3月で良かった。これから夏までは一年で一番電力を使わない季節だ。
これが真冬だったら、停電を回避するのは難しかっただろう。

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Twitterのタイムラインに
「こういう場合に備えて全国にある原発を再稼働すべきだ」
というツイートが流れた。

どうなんだろう。よくわからないな。
今回は、かなり大きな地震と寒さが重なって起きた稀な事象だ。しょっちゅう起きるようなことじゃない。

日本で大規模停電が起こることはめったにない。
電気は基盤インフラだから、停電させてはいけない法律があるのかもしれない。

だから今回のことを受けて、電力源の議論が起こるのは無理もない。
でも何年か、何十年に一度であっても、大規模停電は起こさないようにしないといけないのだろうか。

もちろん、絶対に停電してはいけない場所もある。
病院や高齢者施設がそうだ。交通インフラも停電は避けたい。コンビニも今や生活に欠かせない生活インフラだから、電力供給は優先させて欲しい。

一般家庭はどうだろう。
子どもや高齢者、傷病者の家庭は、短時間の停電でも命に関わるリスクになりうる。
しかしぼくみたいな世帯だと、たまに停電するくらいは何も問題ない。停電の少し前にメールでおしらせをもらえれば、モバイルバッテリーを充電して、パソコンの電源を抜くなど準備ができる。一晩くらいなら平気だ。
電力会社に『たまに停電するかもプラン』みたいなのがあったら迷わず契約するだろう。

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「絶対に停電させない」ためのコストは高い。
たとえば学校のテストで、80点以上をとり続けることは勉強すればできる人は多い。でも、毎回必ず100点満点をとろうとすると、よほどの秀才じゃない限り、いつか燃え尽きて病気になってしまう。
今の日本には、残念ながら100点満点を取り続けるような力がない。90点とか80点ならコストが下がるし、持続可能性はグッと高まる。

「原発の全面再稼働」は無理だと思う。どんな理屈を並べて説得を試みても、国民のトラウマは拭えない。
再稼働推進派の人は「震災後に新しい技術ができて、危険性はとても低くなった」みたいなことを言う。
原発事故前も「原発は安全だ」って言っていた。多くの人は、原発と政府に不信感を持っている。世論調査がそのことを示している。

311以後の日本で起きた変化の一つは、『専門家に対する不信』だ。
原発事故に限らず、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻も、「専門家」を名乗る人がいろんなことを言う。その度に国民は不安でストレスを募らせる。数日経って状況が変わると、同じ人が真逆のことをシレッとした顔で言ってたりする。
こんなことが続くと、専門家を信じたくても信じられない。

専門家には誠実であって欲しい。
研究ではっきりわかっていることとそうでないことを、ちゃんと区別して語って欲しい。曖昧な憶測で、素人を惑わせないで欲しい。
相手は感染症、災害、戦争だ。一度起こってしまえば、科学や知識の力でどうにかなるもんじゃない。わからないことの方が多いはずだ。

人間の小ささ、無知・無力さに、もっと自覚的にならなければいけない。

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「多様性の重要さ」があちこちで強調される。
多様性のメリットはリスクヘッジだ。なにかあったときに、多様性があればリスクは最小限に止められる。

たとえば食中毒予防で大事なこと。
調理者の立場では手洗いや鮮度管理・温度管理、熱湯やアルコールによる滅菌などだ。
食べる人の立場での自衛方法は「いろいろ食べる」だ。
もし一つの食品が傷んでいたり毒性があったとしても、小量ずついろいろ食べていれば、ダメージは最小限に抑えられる。

電力源も同じことがいえるはずだ。
仮に原発が、安全でクリーンでコストも低いとする。でも、原発だけに頼ることは危険だ。

現在起きている、ロシアによるウクライナ侵攻をみてもわかるが、大きな原発は大きなリスク要因だ。
有事のリスクを最小化するためにも、小さな発電装置が無数に散らばっていることが望ましい。巨大で堅牢さを求められる原発は選択肢から外したい。原発などの重厚長大な発電施設は国防上ハイリスクだ。

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CO2削減、環境危機対策として、自然エネルギーへの転換が急務だと言われている。
日本でもすでにさまざまな成功例がでている。

岐阜県と福井県の県境にある『石徹白地区』は、人口わずか200人ほどの「限界集落」だ。
石徹白では木製の水車発電から始めて、現在は村全体の電力を賄ってあまりある電力を発電する、水力発電設備を設置した。
maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/houkokusyo/pdf/ito2.pdf

このような小規模な水力発電を『小水力発電』というのだそうだ。
https://j-water.org/about/index.html


広域の電力を供給する大きな発電所ではなく、集落や町の電力を賄える程度の小規模な発電設備を点在させることを、もっと進めてもいいのではないか。

火力などの大規模発電をもうしばらく使いながら、徐々にエネルギーの地産地消にシフトするのが望ましい。地域によって、水力・風力・潮力・太陽光など、風土に合った発電方法があるだろう。

大きな設備を少なくではなく、小さな設備をたくさんあちこちに。
そういう『分散型エネルギー社会』がいい。

事故や有事に甚大なリスクになりうる原発や、CO2を大量に放出する火力発電から、ごく小規模な自然エネルギー発電への転換。
不安定な国際情勢と衰退する国内経済、急速な人口減少とアンバランスな人口動態を抱えた日本にとって、優先順位の高い課題だ。

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書きながら考えていたら、なんだか大きな話になってしまった。

とりあえず、やろうとおもいながら手を付けていなかった電力会社の変更をしよう。
自然エネルギーを進めている電力会社、どこがいいかな。

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