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【読書】映画を早送りで観る人たち

彼らは、「観ておくべき重要作品を、リストにして教えてくれ」と言う。彼らは近道を探す。なぜなら、駄作を観ている時間は彼らにとって無駄だから。無駄な時間をすごすこと、つまり時間コスパが悪いことを、とても恐れているから。彼らはこれを「タイパが悪い」と形容する。

『映画を早送りで観る人たち』
稲田豊史/光文社新書

映画やドラマを倍速で試聴したり、10秒飛ばしたりする人に対する違和感について考察した本。自分も倍速試聴したり、興味ない部分をスキップすることはよくある。

タイトルだけ見ると若者批判する老害本か?と思ったけど、そんなことなかったです。倍速試聴を行う人の理解を示しつつ、その行動原理を社会的背景や若者へのインタビューを通じて説明してくれます。

作品を鑑賞する」ではなく「コンテンツを消費する」という視点で行動原理を解明していくアプローチが面白い。

世の中は膨大なコンテンツ(映画、ドラマ、音楽など)で溢れているけど、話題についていくためにはチェックしないといけない。そんな情報過多な状況を解決するのが、倍速試聴・10秒飛ばし。一方で、1つ1つの作品に対する洞察は薄くなってしまう。

倍速試聴の反対派は「飛ばした部分に作品の価値がある」とか「10秒の沈黙があるからこそ感情移入できる」とか言うかもしれないけど、そもそも目的が違うとのこと。倍速試聴派は作品を楽しむのではなく、情報収集としてピークポイントをかいつまむように自由に巻き戻し・早送りしている。

そうなると、「鑑賞」よりも「消費」という概念の方がしっくりくる。技術進歩でスピードとわかりやすさが大きな価値を持つ世の中になるほど、このような習慣が必然的に生まれるんだと思いました。

「映画の見方なんか勝手にさせてくれ」という意見の人も多いと思います。この点、芸術作品への向き合い方やタイパの感覚は、世代間でかなり異なるんじゃないでしょうか。

倍速試聴・10秒飛ばしを否定する人もいれば、そうじゃない人もいると思います。その辺は個人の自由なので、お互いの立場を尊重すれば平和な気がします。

コンテンツの提供方法の観点からも勉強になった一冊。おすすめ!


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