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お金って何だろう?

最近、お金についてよく夫と話す。
お金って何だろう?

ふと、昔の記憶がぼんやりと蘇った。
私が小学校4年生の頃、私の父は仕事を失った。
そして、住むところも。

私も、それまで住み慣れた町も、その当時いた友人も失った。
そして、私たち家族は、新しい街に移り住んだ。

引っ越して初めての冬。
阪神淡路大震災が起きた。
あの大きな地震の揺れの中、我が家の被害はコップ3つ。
「貧乏の神様が、守ってくれたんやなぁ。」そう家族の誰かが言ったのを、強烈に覚えている。
地震後しばらくはトイレットペーパー、水がスーパーから消えた。
家がダメになった同級生もいた。少しの間、地元を離れた同級生もいた。
テレビでは、衝撃的なニュースが流れていた。
世の中だけでなく、我が家にとってもとんでもない年だった。

そんな中、父はなぜか新しい家族を迎えた。
家に帰宅すると、私の貯金箱からは札が消え、もふもふの可愛い子犬に変わっていた。
この時、初めてお金が違う形に変わる瞬間を、しっかりと感じた。
「なんで、勝手に小遣い使ったんや!」と、私が怒ると「家族やからさ。家族のお金でと思って。」と両親のどちらかが答えたように思う。

この事を振り返るたび、思っていた。つい最近まで。
この時に、このお金の使い方は絶対間違ってると。
我が家は、借金もある。裕福ではないのに、犬を飼うなんて。
当時の父は気が触れたのだと思っていた。
私なら、もっと生きることに、暮らすためだけに使うのに。
この人は間違ってる。
そうずっと思い続けていた。

でも、最近思う。
苦しい時、生きるためだけに使う。
辛い時、生きるためだけにしかお金を使ってはならない。

そうせざるを得ないこともあるし、当時の我が家もそうだったはず。
でも、この考え方は、生きていくのにとっても苦しい。
そして、こうも思う。
私が、今まで一番貧しかったんだと。

この当時飼っていた犬は、ペットショップのオーナーが渋々売りに出してくれた犬だった。
何度も、この犬はやめてくださいと断られたらしい。
そして、こうも言われたようだ。
「お金出して買っても、すぐ死ぬかもしれませんよ。
お金が無駄になるかもしれませんよ。お子さんが居るお家に迎える犬じゃないです。体が弱いので。それでもいいんですか?」
それでも父は、何度もお願いし、やっとのことでこの子を連れ帰った。
ペットショップオーナーが、すぐ死んでしまうほど体が弱いと言ったこの子は、その後17年生きた。

私は、なぜ、この苦しいタイミングで新しい家族を迎えたのか。
本当の理由は、いまだに知らない。
しかし、お先真っ暗で、お金がなく、どんどん空気の悪くなっていく家の中に自然と笑い声が戻ったことは確かだ。
そして、父と母がこの子を大切に大切に育てるのを見て、なんか無性に嬉しくなったのも覚えている。

お金って何だろう?
この問いの答えは、まだ無い。
でも、この時の父のお金の使い方が、今はとっても好きだ。
それだけは言える。




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