見出し画像

ノーベル文学賞 次の日本人受賞者は宮崎駿監督?

大江健三郎がノーベル文学賞を受賞した後、1994年10月17日に国際日本文化センターで行った講演「世界文学は日本文学たりうるか?」の中で、彼は日本文学に3つのラインを設定した。(『あいまいな日本の私』岩波新書所収)

(1)世界から孤立した、日本独自の文学。
代表は、川端康成、谷崎潤一郎、三島由紀夫。
(2)世界の文学、とりわけフランス文学、ドイツ文学、英米文学、ロシア文学から学んだ作家たちの文学。
代表は、大岡昇平、安部公房、大江健三郎自身。
(3)世界全体のサブカルチャーが一つになった時代の文学。
代表は、村上春樹、吉本ばなな。

(1)のラインでは川端康成が、(2)のラインでは大江健三郎が、ノーベル文学賞を受賞した。
残っているのは(3)のラインということになり、毎年10月頃になると、村上春樹が受賞するのではないかという話題が持ち上がる。

そのニュースに接する度に村上春樹が可哀想になるし、現在の村上の扱いはサブカルチャーではなく、どちらかといえば純文学。

世界的な知名度という点を考えると、世界とつながるというか、世界の潮流を先導するサブカルチャーの代表として相応しいのは、ジブリ・アニメの宮崎駿監督ではないだろうか?

「風の谷のナウシカ」(1984)から始まり「ハウルの動く城」(2004)までの約20年の間に制作された「天空のラピュタ」「となりのトトロ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などの作品は、文学的な質も高いといえる。

しかも、日本の文化を紹介するという意味では(1)のラインに入り、海外の作品から学んでいるという意味では(2)のラインにも位置する。
そして、(3)のラインのサブカルチャーとしては、村上春樹をはるかに超える認知度がある。小説よりもアニメの方が親しみやすく、より多くの人々が接する機会があるのだから、それはごく自然なことだといえる。

2016年には、アメリカのミュージシャン、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞し、ノーベル賞における「文学」の枠が拡げられた。
従って、今後ジブリ・アニメが受賞したとしても、おかしくはない。
そんな風に考えると、次の日本人受賞者として、宮崎駿監督の名前があがったとしても、驚くにはあたらない。

そんな噂があるわけではないし、そうした働きかけを誰かがしているわけでもないだろう。しかし、「文学」とは何かを考え直す上でも、「宮崎駿、ノーベル文学賞受賞」のニュースが流れると面白いと思ったりもする。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?