muanitya

死後は遺骨をセーヌ川に流して欲しいと夢見る人間。 このNoteでは、「無(anitya…

muanitya

死後は遺骨をセーヌ川に流して欲しいと夢見る人間。 このNoteでは、「無(anitya,アニトヤ)」を愛し、Carpe diem(今を生きる)をモットーに、 日本からフランスへと開いた小窓を通して、文学、美術、音楽等を楽しみ、感性と知性を養うことを目指す。 自称「愛と美の伝道師」

マガジン

  • 芸術の楽しみ ー 文学、絵画、音楽

    芸術作品に接することは、私たちが日々体験する現実とは、未知の世界の体験です。その楽しさや意義について考えていきます。

  • ことばの世界

    日本語、フランス語、英語など、言語について様々な視点から考察しています。

  • 日本の今を考える

    日本の現状について、できるだけニュートラルで多角的な視点から考えていきます。

  • 今を生きる

    今の世界を生きていく上で考えていきたいことについて、参考になればと思うことを書いていきます。

  • 歴史から今を考える

    歴史を単なる過去の事実として暗記するのではなく、今に続く現在の出来事して考え、自分たちの今を知るヒントを探していきます。

最近の記事

宝塚歌劇のレビューのモデル ミスタンゲット 1936年 ムーラン・ルージュの舞台

宝塚歌劇団のレビューのモデルと言われているミスタンゲットが、1936年にムーラン・ルージュの舞台に立った時の映像。歌は"Je suis de Paris"。 Quand on m'voit On trouve que j’ai ce petit je n’sais quoi Qui fait qu’souvent l’on me fait les yeux doux Ce qui me flatte beaucoup. J’l’avoue, j’aime flirter

    • 日本人にはなぜ英語やフランス語の習得が難しいのか? 構文について考える

      日本人にとって、英語やフランス語を習得するのは難しい。その理由は何か? 答えは単純明快。 母語である日本語は、英語やフランス語と全く違うコンセプトに基づく言語。そのことにつきる。 この事実は当たり前のことだが、しかし、日本語との違いをあまり意識して考えることがないために、どこがわかっていないのかがはっきりと分からないことも多い。 例えば、英語の仮定法と日本語の条件設定との本質的な違いを理解しないまま、if を「もし」と結び付けるだけのことがあり、そうした場合には、大学でフラ

      • 政治と金 自民党派閥の政治資金問題 悪者退治から問題解決へ

        自民党の派閥が不正な会計処理をしていたことで、相変わらず政治と金の問題が何一つ解説していないことが明らかになった。 そして、これまで通り、マスコミやSNSでは悪者探しをして盛り上がり、しばらくすれば、別の話題へと関心が移っていくだろう。 そうした流れは、2019年参議院選挙において広島選挙区の河井夫妻選挙違反事件を思い出すとわかる。大規模な買収を行ったことが大きく取り上げられたが、彼らが断罪されただけで、選挙における金の問題は全く解決されないままで終わった。 今回も、安倍

        • 日本語の音楽を聴く  文学の楽しみ

          音のない言葉を考えることはできない。 声に出して話したり読んだりする時だけではなく、頭の中で何かを考える時にも音があり、それらの音の繋がるリズムを感じている。 日本語を母語とする者にとっては、5/7を基本とするリズムがごく自然に心地よく感じられる。 これらの言葉の魅力は、意味だけではなく、口調の良さによってももたらされている。 言葉たちが音楽を奏で、私たちはその音楽に耳を傾けて、うっとりするといってもいいだろう。 言葉が奏でる音楽は、和歌や俳句、詩だけではなく、散文に関し

        宝塚歌劇のレビューのモデル ミスタンゲット 1936年 ムーラン・ルージュの舞台

        マガジン

        • 芸術の楽しみ ー 文学、絵画、音楽
          8本
        • ことばの世界
          6本
        • 日本の今を考える
          7本
        • 今を生きる
          9本
        • 歴史から今を考える
          7本
        • ジブリ・アニメを理解するために
          13本

        記事

          コミュニケーションの道具としての言葉の力  —  理解と感情

          「阿吽(あうん)の呼吸」とは、言わなくてもお互いにわかり合っているという意味で使われる表現。 そんな関係では、何かのおりに「ありがとうございました。」とお礼を言うと、「そんな水くさいこと言わなくても。。。」という返事が返ってくるかもしれない。 言葉で言わなければわかり合えない関係では、言葉を使ってコミュニケーションを図る。その場合には、「話せばわかる」という前提に立って会話をするのが基本である。 言葉は通じるものであり、そうでなければ、話し合う意味がない。 ところが、言い

          コミュニケーションの道具としての言葉の力  —  理解と感情

          コミュニケーションについて 村上春樹『風の歌を聴け』のジェイズ・バー 柄谷行人『探求 I 』

          村上春樹のジェイズ・バー村上春樹の『風の歌を聴け』の中に、コミュニケーションについて考えるヒントとなる場面がある。 ロールシャッハ・テストにでも使われそうな図柄が、「僕」には、二匹の猿が二つのテニス・ボールを投げ合っている姿に見える。他方、ジェイは、一方の猿がビール瓶を投げ、他方の猿は代金を投げていると言う。 では、なぜ「僕」はジェイの解釈に感心するのだろう? 2匹の猿がテニス・ボールを投げ合う場合、どちらの猿も投げる行為と受け取る行為を交互に行い、役割が固定されていな

          コミュニケーションについて 村上春樹『風の歌を聴け』のジェイズ・バー 柄谷行人『探求 I 』

          「国際」の意味とは何か? 発見と無主地・占有 台湾出兵 琉球処分

          国際法における「無主地」「国際法(International law)」では、領土の取得について、「無主地」(terra nullius)に対する「先占」という考え方が認められている。 それは、非常に単純化して言えば、主権が確立していないと考えられる土地に関しては、「発見」した主体が所有権を獲得できるという原理。 その原則は、15世紀から始まったいわゆる大航海時代以来、新大陸や新航路「発見」に続き、「文明国」が世界各地を支配下に置いていく過程で成立したものであり、様々な利害

          「国際」の意味とは何か? 発見と無主地・占有 台湾出兵 琉球処分

          ノーベル文学賞 次の日本人受賞者は宮崎駿監督?

          大江健三郎がノーベル文学賞を受賞した後、1994年10月17日に国際日本文化センターで行った講演「世界文学は日本文学たりうるか?」の中で、彼は日本文学に3つのラインを設定した。(『あいまいな日本の私』岩波新書所収) (1)世界から孤立した、日本独自の文学。 代表は、川端康成、谷崎潤一郎、三島由紀夫。 (2)世界の文学、とりわけフランス文学、ドイツ文学、英米文学、ロシア文学から学んだ作家たちの文学。 代表は、大岡昇平、安部公房、大江健三郎自身。 (3)世界全体のサブカルチャー

          ノーベル文学賞 次の日本人受賞者は宮崎駿監督?

          癒やし 大江健三郎 大江光の音楽 村上春樹

          ある時期から日本で「癒やし」という言葉が爆発的に使われるようになった。 しかし、その言葉があまりにも一般化したために、いつ頃から、誰の影響で、これほど普及したのか、きっかけが忘れられているように思われる。 私の個人的な経験では、「癒やし」という言葉は、大江健三郎が1980年代に発表した作品群、とりわけ『「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち』や『新しい人よ眼ざめよ』などの中で集中的に用いたのように記憶している。 それらの作品群の中心にいる存在は、光(ひかる)と呼ばれる障害

          癒やし 大江健三郎 大江光の音楽 村上春樹

          川端康成「美しい日本の私」 大江健三郎「あいまいな日本の私」 日本と世界をつなぐ回路

          1968(昭和43)年、日本人作家として初めて川端康成がノーベル文学賞を受賞し、12月12日、ストックホルムのスウェーデン・アカデミーで、「美しい日本の私 ー その序説」と題する授賞記念講演を行った。 その際、川端は日本語で講演を行い、エドワード・サイデンステッカーが同時通訳した。その内容は、平安時代から鎌倉時代を中心とし、禅の精神性に裏付けられた日本的な美を紹介するものだった。 1994(平成6)年、大江健三郎がノーベル文学賞受を受賞し、二人目の日本人作家として、12月

          川端康成「美しい日本の私」 大江健三郎「あいまいな日本の私」 日本と世界をつなぐ回路

          かぐや姫の物語 自由と自然 思いやり型の映像表現

          高畑勲監督が2014年に発表した「かぐや姫の物語」は、スタジオジブリの作品としては、まったくヒットしなかった。 同じ年に公開された宮崎駿監督の「風立ちぬ」が810万人(興行収益120億円)だったのに対して、「かぐや姫の物語」は185万人(25億円)だったと言われている。 フランスで公開された時には、芸術性が優れているという点で評価が高く、日本でも一部からは優れたアニメとして認められている。しかし、人気は出なかった。その理由はどこにあるのだろうか。 不死と生命「かぐや姫の物

          かぐや姫の物語 自由と自然 思いやり型の映像表現

          おもひでぽろぽろ 思い出と向き合う

          高畑勲が監督した「おもひでぽろぽろ」は、アニメ作品にありがちなファンタジー的な要素がなく、特別な主人公の特別な冒険物語とは正反対の作品。 主人公タエ子は27歳。独身で、東京の会社に勤めている。 物語は、田舎に憧れている彼女が10日間の休暇を取り、農業体験をするために山形の親戚の家に行くところから始まる。 田舎に行くと決めた時から、突然、小学校5年生の思い出がポロポロとこぼれ落ちるように蘇り、彼女の心を一杯にする。 山形では、親戚の家族に混ざって紅花を摘む作業を手伝ったり、

          おもひでぽろぽろ 思い出と向き合う

          風立ちぬ 生きることと美の探究と

          「風立ちぬ」は、「紅の豚」の延長線上にあるアニメだといえる。 主人公の堀越二郎は、飛行機の設計技師。彼の友人である本庄は、兵器としての戦闘機を制作し、彼の爆撃機は殺戮兵器として空を飛ぶ。 それに対して、二郎は、「ぼくは美しい飛行機を作りたい。」と言い、実用ではなく、美を追い求める。 そうした対比は、「紅の豚」においては、イタリア軍のエースパイロットであったマルコと、軍を離れ自由に空を飛ぶことの望むポルコの対比として表されていた。 そうした類似に基づきながら、「風立ちぬ」で

          風立ちぬ 生きることと美の探究と

          紅の豚 大人を主人公とした、大人のためのアニメ

          「紅の豚」の主人公は、豚の顔をした中年のパイロット。格好良くもないし、英雄でもない。何か特別なことを成し遂げるわけでもない。 そんな作品に関して、宮崎駿監督は、「紅の豚」の演出覚書の中で、「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のための、マンガ映画であることを忘れてはならない。」と書いている。 また、「モラトリアム的要素の強い作品」という言葉を使い、大きな流れから一旦身を引き、執行猶予あるいは一時停止の状態にいる人間の状況がテーマであることを暗示する。 そのような状況設定に基づ

          紅の豚 大人を主人公とした、大人のためのアニメ

          ハウルの動く城 歩くことと家族の形成

          「ハウルの動く城」は、公開時から人気を博し、観客動員数では「千と千尋の神隠し」に続いて2位になった。その一方で、批評はかなり厳しく、「ストーリー、とくに後半のストーリーがわかりにくい」、「盛り上がりに欠ける」、「分からないからつまらない」など、映画の評価としては過去最低だった。 確かに、見ていると楽しいけれど、映画全体を通して何を言いたいのかわからない。ストーリーを思い出すのが難しいほどだし、たくさんの謎がある。 ソフィーがおばあさんになったり、若返ったりする理由。 城の扉

          ハウルの動く城 歩くことと家族の形成

          千と千尋の神隠し 水と生きる力の物語

          ある日、一人の人間が何の手掛かりもないまま、突然いなくなってしまう。それを単に失踪と見做すのであれば、現実的な出来事である。しかし、あまりの不思議さのために、神の仕業ではないかと考えれば、神隠しになる。 「千と千尋の神隠し」の主人公である千尋は、両親と一緒に引っ越す先の家に向かう途中、異次元の空間に入り込む。 その空間は、神々が身を休めるお湯屋であり、非現実の世界。現実的な視点から見たら、千尋たち一家は神隠しにあったように見えるだろう。 名前を失う 両親の車の中でだだをこ

          千と千尋の神隠し 水と生きる力の物語