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安藤裕美個展 学舎での10年をめぐって 「ナビ派」と「パープルーム」への眼差し@パープルームギャラリー

たまたま来客がありヒマそうにしてたので初日にいったった!

安藤裕美個展 学舎での10年をめぐって 「ナビ派」と「パープルーム」への眼差し

会期|2023.11.10(金)〜11.20(月)
時間|15:00〜20:00
場所|パープルームギャラリー
企画|梅津庸一

https://parplume-gallery.com/

↑冒頭にファンファーレなるので音量注意

アート・コレクティブ「パープルーム」の第1章がついに完結!
マジであとから(どういう形か、あとそれが名誉なのかはともかく)日本の現代美術史に載ることにはなると思うので、いける人はいった方がいいと思われる

たとえていうと「グタイピナコテカ」みたいなもんなので、タイムマシンが必要になる前に行っときたい
(いまピナコテカのリンク貼ろうとおもってぐぐったら、あんまりちゃんとした記事がヒットしないことにもビビる…

パーギャラへの行き方とかは以下を参照

というわけで以下文中敬称略




ステートメント(と補足)

については前掲の公式をみてくれよな!

強いて強調するとこあるとしたら、ここじゃろ

安藤こそが「パープルーム」なのだと言っても過言ではないからだ。

そう、あんどーこそがパープルームなのであり、であるからパープルームのとりあえずの終焉において、あんどーこそが個展を開かないといけなかったのである

今回の個展の副題が『ナビ派とパープルームへの眼差し』なのは、私が12年前から傾倒してきたナビ派とパープルームを重ね合わせて見ているからだ。ナビ派は19世紀末、フランスで活動した前衛芸術グループで、その中心メンバーは画塾アカデミージュリアンに通っていた。この塾は当初、フランスの国立美術学校エコール・デ・ボザールの予備校として設立されたものだったが、だんだんと反アカデミズムの独自の教育を施すようになった。ナビ派はゴーギャンの影響を受けつつもそこから新しい何かを生み出そうとした。ただ、メンバーに裕福な家庭のエリートが多く活動形態もゆったりしていた。そこまで活発ではない作家でもちょっと作風がそれっぽければナビ派を名乗れた節がある。パープルームの場合はみんな作風は違うけれど作家活動にかける熱量やメンバー同士のやりとりは、ナビ派よりもレベルが高いように思う。

というように、あんどーはナビ派の影響をつよく受けた作家である
ステートメントからわかるが、これは画面の中の話だけではない
ナビ派は「親密派」と呼ばれたこともあったぐらいグループ内の付き合いが深く、ある種の結社めいたところがあった
(おそろいの衣装は挫折したが、儀式用の杖はラコンブがガチで作っている

事実パープルームも過激派か宗教と疑われ警察が来たというエピソードを持つし、モデルとして登場する漫画「ブルーピリオド」の「ノーマークス」は露骨に「宗教」としてアカデミズム側から警戒される

なのであんどーは実践でもナビ派の後継者といえる

そもそもパープルーム自体の、(設定上)オルタナ美術予備校として設立され、その後は反美大を掲げてアート・コレクティブとして活動する流れが

この塾は当初、フランスの国立美術学校エコール・デ・ボザールの予備校として設立されたものだったが、だんだんと反アカデミズムの独自の教育を施すようになった。

というナビ派と、ばっちり一致してしまうので、あんどーが自身の運動体(とあえて言ってしまうが)とナビ派とを重ねるのはもう運命なんだ

ナビ派ってなによ

詳しくないので各自しらべてほしい
(正直、これもまともな記事がみつからんかった・・・

なので小咄的なことを書くと、鬼太郎の「このロリコンどもめ!」の元ネタで有名なルドンはこのグループから尊敬されてた
(ルドン自身はナビ派ではなく、メンバーの一世代前の作家
ナビ派の主要メンバーが一同に描かれたドニの「セザンヌ頌」でも、みんな左に立ってるルドンの方を見てる
(ちなみにこのセザンヌの絵はもともとゴーギャンが所有してた、のでこの絵は間接的にゴーギャンもほめてる

あと、このあと彫刻で重要な作家となるマイヨールがナビ派にいてけっこういい絵を描いてるっていうのもおもろい話だ

セザンヌが印象派に対してもってた「みんなあっさり自然に屈服しすぎじゃね?」という不満とか、ゴーギャンの「自分たちの眼の周囲しか見てない」という批難に向き合い、「魂の神秘の世界」を表現しようとしたルドンを高く評価し、感覚主義を超え、絵画を「何かしらの逸話である前に一定の秩序で塗られた平面」と再定義(byドニ)することで、「彼自身の主観性の状態」(by晩年のドニ)を画面に定着させ、作品が「芸術家の魂の状態が反映している鏡」(byゴーギャン)になるのを目指したのがナビ派である、といえる(はず)

〇×派がいつ結成されたのか、みたいなのがわかるグループは多くないが、この人らは例外的にそれがはっきりわかってる
ゴーギャンと一緒に写生にいったセリジュエが「ポンタヴェンの愛の森の風景」って作品を描いて、それをみんなに見せたときナビ派は結成された

この絵はそのままナビ派の「お守り」となり、その後「護符(タリスマン)」と呼ばれている・・・ってのが最高に中二で好き

展示風景とか

なんかいろんな人と行っておしゃべりに忙しく、いつも以上に写真がアレでマジかんべん
まあ、現地でみてくれってことで

展示風景①
展示風景②
展示風景③

とりあえず雑に貼ってみたが、めっちゃ細かい筆致で絵具が重ねられてる
これはたまたま一緒になった人が作家に質問してたのの立ち聞きだが、以前にくらべて「下地の絵具がそのまま残ってる絵が少なくなった」印象があるとのことだった
たしかにそうかもしんない!(適当・・・

上 2015年のパープルーム, 2015-2023
下 みどり寿司で歌う千葉一夫とわきもとき, 2023

パープルームマニアはご存じのあの名シーンも絵画に!!

作品名不詳

作品はきほん矩形なんだけど、なんともいえないはみ出し方してて、そのせいで空間との境目が侵食、あいまい化されている
これは実作品みてもそうだが、冊子で真っ白い背景の上に載せられるとよりはっきり感じる
これをパーギャラでみたとすると、本当に絵とそれが描いてる現場の境目があいまいになってるわけであり、あんどーの絵かっけえ!という気分になり、これがまさに鑑賞ってもんだろって感じだ

作品名わからんので推測すると「わきもとにアドバイスする梅津庸一」あたりで、制作時期は間違いなく2023年である(わきもとの個展があった

パープルームで制作するわきもと, 2023

「背景のぐるぐる」は、パープルームの実際の壁紙がこんな模様なんだけど、それがただ描写された、っていうより、様式化した空間を埋める模様になっててよい
床の青も最高に突き刺さってる

ペンション紫香楽, 2023

同行した「絵? ボブ・ロスが好き!」という知人も見た瞬間「めっちゃいい絵やん」と言った作品
(ちなみにボブ・ロスっていうのは「ボブの絵画教室」のボブ
自分は粘菌(変形菌)とか好きなので「キノコ?」とか思ったが、ゴーギャンの求めるレベルまでいってない鑑賞者の眼なんてそんなもんだ

ただ、絵も粘菌も「時間発展していく自己組織化した系」なのは同じなので共通性はある


展示風景④
展示風景⑤

ギャラリー横の通路から裏にも展示があり、作家の渾身具合が伝わってくる
ほんとにあますところなく見せている感じだ

美術手帖でも「前衛の灯火」を連載してるが、作家はまんがも書く

B.T.こと美術手帖に載ってるアレは白黒だが、カラーだとぜんぜん印象が違うな

タスリマンを求めて

パープルーム第1章がこうして自前ギャラリーでのあんどー初個展で終幕を迎えるというのはある意味で幸福なことだと思った

前衛とか日本現代美術とかいうのはとっくに死にかけてはいるが、あくまで前衛の灯火をやっていくパープルームは、今後も場所を変えて継続すると宣言されており、作家あんどーの旅もまだ続く

所属の代表的作家であるあんどーとわきもとの両氏は、30歳までに代表作を、とこないだの動画で宣言していたが、確かに美術運動には何らかの達成というか、記念碑的作品が必要なのかもしんない

ナビ派じゃないけど、「もの派」が関根伸夫の<位相-大地>でできたように、日本の運動体だってそういう例はある

すでに前衛は死んで久しいが、それでもタリスマンがまだどこかにあってほしいと思っている
ナビ派が手に入れたときのように、それが追求の一方、誰かとの出会いでももたらされるのだとしたら、パープルームはタリスマンを探すのに格好の場所だと、自分は思う

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