セーフィー 7年2ヶ月の軌跡。ARR約90億/売上100億円に迫る -関連売上100億を生んだ1プロダクトのプロジェクトオーナーとして商品企画からリリースまで-

こんにちは。セーフィー株式会社で執行役員 営業本部副本部長 兼 VPoS(セールス)をしている鈴木竜太と申します。先日、twitterで投稿した内容が多くの反応をいただいたので、『セーフィー 7年2ヶ月の軌跡。ARR約90億/売上100億円に迫る 4つの取組み』を全3回でまとめ中です。4つの取組はこちら。

鈴木 竜太(すずき りゅうた): セーフィー株式会社 執行役員 営業本部副本部長 兼 VPoS。2016年にセーフィーへ営業部長として入社後、2018年10月にパートナー営業本部長、2020年12月に執行役員に就任、2023年にはセールスイネーブルメントオフィスの立ち上げをリードし現在に至る

全3回のうち1回目は『パートナーセールスの戦略と実行』としてnoteで公開しました。早速数件のDMもいただき新たな仲間にも出会えました。
今回は『関連売上100億を生んだ1プロダクトのプロジェクトオーナーとして商品企画からリリースまで』について共有したいと思います。
商品企画からリリースまでに行った11の計画内容とリリース後に売上貢献したポイントをまとめています。
ベンチャー経営層の方や新規事業を検討している方、ワンプロダクトをしっかり検討しリリースを準備されている方などの参考になれば幸いです。

※注)セーフィー(4375)は上場企業となる為、詳細な数字や将来の予測等についは一切触れておりません。詳細の数字や進捗等は公式のIR資料を参照ください。


関連売上100億を生んだ1プロダクトのプロジェクトオーナーとして商品企画からリリースまで

対象となるプロダクトはコロナ禍の2020年7月1日にリリースしたウェアラブルカメラ『Safie Pocket2』です。

本来であればPdMなどがリードしリリースするプロダクトですが、当時のセーフィーは人数が多くなかったことや社運を賭けたプロジェクトで取締役以外で責任を持って推進するという方針のもと、当時、プロジェクトオーナーを担当させていただきました。
企画からリリースまで、ほぼ全ての部署を巻き込んだプロジェクトとなりぞれぞれの部署のプロが集結し結果として関連する売上が2020年7月から現在までで約100億円の売上を1プロダクトから上げることができました。

1.プロジェクトサマリーをシンプルに書き出す

社内全員が理解できるレベルでプロジェクトのサマリーを以下の項目でまとめました。この時点で各項目の詳細を具体的に明記はしていません。先ずは全員が概略を理解できるようにシンプルで分かりやすい文章で書き出しました。

  • プロジェクトの概要を100文字程度でまとめる

  • プロダクトの企画目的を100文字程度でまとめる

  • 現状わかっている想定されるターゲットを一旦書き出す

  • 想定される解決課題・利用用途を書き出す

  • 商品イメージを共有する(モックやwebページのイメージなど)

  • 開発期間・推進体制を明確にする

  • 最低限かかるコストを明確にする

  • 想定提供価格を決める(あくまで想定)

  • リリース想定時期を決める

2.R&D(開発)とS&M(セールス&マーケ)における大きなステップ設定

約3年の期間で大きなマイルストーンを2ステップ設けました。R&Dであれば成果物となる重要な機能をリリースするタイミング、S&Mであればターゲットへの展開順・商流・マーケ施策などを大雑把でもステップごとに書き出します。この時点で詳細なスケジュールには落とし込まず、先ずは目指すべき目標を設けました。

3.サービスプランと機能価値の整理

既存サービスや他社サービス、代替となりそうなサービスと比較してできることの差分を明確にしサービスプランの整理をしていきます。
ポイントとして顧客インサイトに基づく機能の掘り下げに重点を置く事が多いと思いますが、機能の使い易さにだけに終始せず、顧客の業務フロー全体のなかでサービスが使い易いかを徹底的に考えました。利用する機能の前後にある顧客体験を大切にしました。

4.サービス名称とタグラインの役割

サービス名称の決め方は様々な方法があると思うのでここでは割愛しますが、プロダクト名の露出だけではサービスの内容や誰が使えるものなのか訴求が難しい可能性があります。そこでタグラインを策定しプロダクト名称とともに発信していきました。本件の場合は『遠隔業務を変えていく』というタグラインを作りだし、ターゲット層がプロダクトの用途を想起しやすいように配慮しました。

5.サービスの展開市場と展開サイクルを具体化する

サービスの展開市場とそのサイクルを具体化するために以下をまとめました、①市場、②ターゲット、③企画・商品Plan、④PR&MK、⑤営業活動、・サイクルとして回す事(ターゲットの拡大、プランの追加)。プロジェクトメンバーは阿吽の呼吸でわかることも多いですが、資料化し全メンバーに浸透させアクションの方向性をシャープにしていきます。ポイントとして、不変のこと、変化すること(=サイクルとして回していくこと)を明確にした事と、統一して使う3つ程のキーワードメッセージをPR&マーケで決めました。


6.ターゲットを定量的に具体化する

ターゲットとなる業種・業界を絞り込みます。絶対に落としてはいけないターゲットを『コアターゲット』と設定し、アクション次第で獲得できる可能性があるターゲットを『戦略ターゲット』と分けました。
ターゲットの数を"企業数"とするのは緩いターゲティングです。ポイントとして、サービスが使われる場所や人(人数)、部署など可能な限りサービスを利用するシーンの解像度を上げていきます。利用シーンの数・利用する人の数などを具体化してターゲット数と置きました。後に市場規模の試算やKPIが非常にクリアになりました。

7. PRの方向性を定めて絞る

商品やサービスがリリースされた事実だけをPRしても誰にも刺さりません。上記 6で明確にした『コアターゲット』に響く方向性にPRを絞り実行しました。コロナ禍にも関わらず敢えてオンラインとオフラインの記者発表会を開催し、コアターゲットのTOP企業に登壇いただきパネルディスカッションを企画し、サービス用途とその可能性についてコメントをもらい発信していきました。
注意したポイントとして、この時点で戦略ターゲットまでPRの対象にいれてしまうと訴求が薄れる可能性があるので思い切って絞った事は非常に効果がありました。

8.マーケティングプランを具体化する

上記の6(ターゲット)と7(PRの方向性)がシャープになると同時にマーケプランも洗練されてきます。『コアターゲット』の認知・獲得に注力し、ターゲット業界のメディアへも一斉に出稿しました。記者発表会のインタビューブログを即記事化し業界での興味を惹き、デジマを回しながら直販営業とセールスパートナーで確実にユーザーを増やしていきました。
ポイントとしてリリースの数ヶ月前からセールスパートナーへは周到な準備(勉強会、デモ機器配布、申込方法レクチャー、サポート体制)を行い、リリース同日に営業活動が仕掛けられるように仕込みました。リリース前のサービスをパートナーが共有される事は嬉しい取組みだと評価もいただきました。また、リリース時点で1年先のプランニングまでは行いコアターゲットと戦略ターゲットへの予算振りを明確にしておきました。

9.営業活動の方向性を具体化し実行する+@アクション

上記 2"S&M(セールス&マーケ)における大きなステップを設ける"の詳細をここまでの計画を加味して作成しました。1年後、2年後、3年後の市場でのありたい姿・ポジションを定義しました。初期はコアターゲットに注力して営業することとし、エンタープライズ企業リストを作り、パートナーとともに全てアプローチしました。結果として1.5年でコアターゲットの業界ベスト20のうち80%以上のお客様に利用いただくことに成功しました。
また、営業活動と並行してサービスのプレゼンスが上がってきたタイミングで新たなパートナーの開拓も同時に行いました。利用ユーザーに直接ヒアリグし、ベストなパートナーを都度開拓しました。

10.プライシングの決定

パートナーセールスの戦略と実行 でも触れた通り、原価、顧客、競合、パートナーの側面からプライシングを決定しました。特に本サービスの場合は明確な市場や競合は当時なかったことから、顧客とパートナーに重点を置きサービス価格を決定しました。結果として顧客、パートナーから受け入れられる価格となり売上へのインパクトも大きくなりました。
※サービスのプライシング決定についてはかなりの議論があり当時の様子を代表の佐渡島がいろいろなインタビューで答えています。こちらのインタビューがそれに詳しいです。

11.収益試算シミュレーションの100本ノック

売上につながると考えられるレバーは全て書き出し、パートナーとも1社ずつ目標を精緻化し、日々の市場の変化を加味しながら収支ファイルを何度も更新していきました。結果として数十パターンのシュミレーションができあがり、プライシングや営業目標の妥当性、必要な人員数、調達計画の精度が高くなったと共に、目標がビハインドした際の要因がすぐにわかるようになりました。リリースから3年後の2023年には当時計画していた数字とほぼ同じ着地を迎えることができました。

以上、関連売上100億を生んだ1プロダクトのプロジェクトオーナーとして商品企画からリリースまで、計画した11項目をポイント絞って共有させていただきました。慣れている方には基本的な事が多かったかと思いますが、1つでも参考になるポイントがれば幸いです。

次回は全3回の3回目『強い営業“組織”を創るセールスイネーブルメント以上の取組みと採用プラン&面接スキル-』についてまとめたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

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