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小説「死ぬ準備」原稿順序不同版①

第Ⅰ この星でうまれた

1-なぜか地球である

たまたま生まれたのが地球なら死ぬのも地球である。地球は太陽系第三惑星で太陽系全体からすれば小さな点にすぎない。その太陽系も天の川銀河系の辺境にある。天の川銀河系は太陽系などの恒星群を伴ってアンドロメダに近づいている。

その銀河系宇宙は、何処へ向かっているのか。
誰も知らないし知る必要もない。

そんな太陽系第三惑星・地球という小さな青い星に私は生まれた。三千万種ある地球上生物の一つとして。種の名称をホモ・サピエンスという。たぶん数十万年前、アフリカのある地点から世界中に広がったのだろう。
獲物を追った長い旅路の果てに定住した。いまや八十億近くに膨れ上がっている。資源枯渇や環境破壊のもとになっている。

人間は国境を定め覇権を競っている。戦争や災害が経済発展のエンジンだから軍拡や激甚災害対策はに余念がない。両方とも巨大産業に関わる。世界中の巨大産業にも繋がっている。中心はユダヤ国際金融である。

だから関連する立場の人は儲かる。嬉しさが顔に現れすぎては不謹慎だから渋い顔をする。擬態である。でも多く人は見抜いている。ただ余計なことをしゃべって仲間外れになりたくない。保護色である。

生きる知恵だ。

でも儲かるから結果的に紛争が多発する。こうやって人類は経済戦争を模して滅ぶだろう。その前に予期せぬ事故が起きるかもしれない。例えばユカタン半島の先に落下した微惑星によって億年生きた恐竜が滅んだように。

哲人は呟く。無駄な諍いをするな。大きくなる。それでなくとも死ぬ機会はいくらでも転がっている。生き物はすべて死ぬ機会の中で生きている。死ぬのが普通なのだ。コロナだってその為に出現した。すべからく生き物は、死ぬ準備体現の為に生きている。金などなくても、偉くなれなくても、まず死ぬ準備が先だ。「死ぬ準備」は生きるための必須条件なのだ。

生きものは一定時間しか生きられない。個々の命を繋いで今日に至っている。私だって八十六年生きた。来年早々に八十七歳になる。最後の軍国少年だったから二十歳までには特攻隊に志願して死ぬつもりだった。戦争が終わって不幸にも生き延びた。こうなったら九五歳まで生きるしかない。あと九年だ。なぜ九年か。母は百歳まで生きたから母よりは五年短くした。
親孝行出来なかった、せめて償いである。

でもさいきんつくづく思う。歳はとりたくない。すっかり気力も体力も衰えた。思いつくままに書いた「死ぬ準備」だって、八十万字を超えるだろう。
それを二十万字くらいに圧縮したい。一冊の本に纏めたい。

中身は小説である。時間ばかりが経過している。 
なぜ小説か、小説でなきゃ書けないことだってある。

そんなことを思いながら老いた熊のように部屋を動き回る。左手に嵌めた万歩計付き腕時計はしっかり時を刻んでいる。
と思った瞬間、なぜか時計の数字が狂ったように流れ始めた。

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満85歳。台湾生まれ台湾育ち。さいごの軍国少年世代。戦後引き揚げの日本国籍者です。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び頑張った。その日本も世界の底辺になりつつある。まだ墜ちるだろう。再再興のヒントは?老人の知恵と警告と提言を・・・どぞ。