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フロ読 vol.24 中島悦次校注 『宇治拾遺物語』 角川ソフィア文庫

最近の角川ソフィア文庫はぶっ飛んでいるとしか言いようがない。読みたかった古典が続々と文庫化されて、ありがたくも我が本棚を潤し我が財布の中を確実に乾燥させていくのである。
 
『宇治拾遺物語』は最近出版されたものではないが、新刊の同文庫を何冊か同じ書棚に並び直しているときに、ふっと目に入りそのままフロの供に。
 
『今昔物語集』から、ありがたい神仏のお話とイイ話とグロテスクな話を捨象すると、色と利得と異形が顔をのぞかせるらしい。
 
巻第一のニ~七。部立てのしっかりした『今昔』に対して雑纂と呼ばれているが、この 部分は全て整形、デフォルメ、インチキという変身譚。いずれも異なる笑いで終わる。
 
素朴な笑いのダイナミズム。観念を壊し概念に頼らない即物的な笑いが1000年の時を越えて伝わってくる。
 
『醒酔笑』に多く再録されているのも頷ける。どこか江戸を感じる笑い。どれも全て色。それは即是空。でも、色があるうちに書き残しておくのもアリだよね。誰も傷つけない優しい笑いでもある。
 
八・九で易・陰陽道の不思議を説くが、十~十四では常識に対して人の考え方の多様性を示していて面白い。あけすけな下ネタが、寧ろ新鮮な爽やかさすら生んでいる。
 
今の文学ではちょっと見られないリラックスとデトックスがここにある。仕事上がりのひとっプロには最適な一冊としてオススメしたい。

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