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見た目も中身?

ある日、突如として巨大なUFOが地球に飛来する。そのスケール、テクノロジー、洗練されたデザインは人類の文明をはるかに凌駕していることが明らかだった。

人々は呆気にとられ、とりわけUFO直下にいた人々は取るものもとりあえず逃げ出す始末だった。国連軍やマスコミらも遠巻きに静観するほかなかった。

そんな中、UFOからメッセージが放送された。それは気の利いたことに英語に翻訳されていた。


以下のような内容だった。
「まず始めに強調しておきたいのだが、我々に地球侵略の意図はないので安心してほしい。

我々は永い宇宙探索の果てにこの銀河系に辿り着いた。この星は、宇宙広しと言えども、極めて多様な生物の宝庫であり、生命体の生育環境としても奇跡的な調和を保っている稀有なケースである。

これは提案だが、我々のメンバーのごく一部を調査研究のためにこの星に移住させてほしい。もちろん、あなた方にもメリットはある。我々は人類文明の進化を飛躍的に加速させ、目下人類を悩ませている諸問題を解決へと導くことが出来るだろう。エネルギー、気候変動、人口増加と水、食料の不足、戦争、民族問題などだ。それらは我々がはるか昔に乗り越えた課題ばかりだ。もちろん話し合いの時間を持ってもらって構わない。」

国連で連日協議されたが、実際には選択の余地などなかった。

その気になれば彼らのマザーシップでなく、その周りを小判鮫のように飛んでいる小型UFO一機だけで地球を侵略できそうに思えた。

猶予期間が終わり、最初の一人目が地上に降り立つ時が来た。全人類が見守る中、UFOの底から一筋の光が放射され、その中をゆっくりとなにかの物体が降りてくる。初めて宇宙人にお目にかかれると人類はみな期待して待った。

降りてきたのは巨大なナマコみたいなやつだった。体表は粘液で覆われ光っており、ある部分がカタツムリの触覚のように伸びたり、エイが泳ぐ時のように地面と接する部分が波打つように動いて移動することもできた。

映画で人間とそう変わらない宇宙人を見慣れていた地球人はドン引きして、
「ともかく一旦UFOに帰って欲しい」
と伝えた。

そして、首脳陣は話し合いの末、要望を出した。その要旨は以下のようなものであった。
「あなた方のテクノロジーを持ってすれば可能だと思うが、もう少し見た目を偽装してもらえないだろうか?憧れの宇宙人がそのような見た目では多くの人間に受け入れてもらうことができないから。」

そして、要望書に地球人にウケる人物像の画像を添えることも忘れなかった。

それを受けて宇宙人は、しばらく沈黙した。それまで人間からの様々な質問に即答してきただけに数日間に及ぶ沈黙は人間を怯えさせた。

もしかして、ひどいショックを与えたのではないか?

あるいは、

ご立腹なのではないか?

価値観が違い過ぎて、彼らの容姿がウケない理由がわからないのではないか?

などと憶測が飛び交った。

やがて、UFOは返答もせずに数百の小型UFOを格納すると一瞬で消え去り、人類はまた呆然とした。

UFOの直下にいてUFOグッズを売り捌いていたストリートチルドレンの頭上に一枚の写真が舞い降りてきた。

それは特使が宇宙人側に渡した見本写真で水着審査時のミス・ユニバースだった。

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