はじめての瀬戸内芸術祭(2022・春)
瀬戸内芸術祭という凄まじく興味深いお祭りが行われているとは聞いていた。実際に友人も何人も訪れていて、口を揃えて「良かったよ〜」と言う。それで大学生くらいからとても気になっていたのにそのままになっていた。
そもそも瀬戸内海にも行ったことがなく、チャンスを虎視眈々と狙っていた。今年行ける機会があって思わず飛びつく。ということで、初心者の私が巡った島のこと、感じたことをまとめておく。
前提として、私にはアートの知識はほとんどない。絵を描くのが好きだとか表現が好きだとか言うだけで、美術史とかはほとんどわかっていない。なんなら「アート」と括弧書きされるものがむず痒くもあった。
だからここに記していくのは、アートの解説ではなく完全に個人の備忘録だ。
そんな私がこの瀬戸内芸術祭でアートについて思ったことは2つある。
①タイトルがついていないと、アートとそれ以外の区別がつかないものもある
アート自体が解釈によって左右される表現であり、同時に逆にどんな解釈でもいいよ!というものだと思っている。正解はない的な。だから作者がつけたタイトルによって何かを感じることが多かった。
でも逆に、タイトルがついていなくても自分でタイトルをつけたくなるような景色にたくさん出会えたし、瀬戸内の島の日常と作品との調和、あるいは異物感を楽しむことができたと思う。
②感動できないとかよくわからない作品があったとしても、それはただ単に相性だから、楽しめるものを自分のペースで楽しめばいい。
アートって言われると、アーティストか普段から馴染みのある人でないと身構えてしまう気がしている。でも、必要以上に肩の力を入れなくてもいいと思えた。感動するもの、いいなと思うものもあれば、ん?と感じるものもある。でも人間の相性と同じで単なる相性だと思えば、もっと楽しめる。
アートをすごいものとして見なきゃとか、理解しなきゃと思うのは自然とやめていた。ただ島の存在と、そこにある何かを感じることを楽しんだ。
島巡りの記録
1日目 豊島・宇野港
2日目 直島・高松港
3日目 女木島・小豆島
島を歩いた記録は別の記事にして公開する(とんでもなく長くなりそうだから)。
その中で見られた作品は限られているけれど、特に印象的だったものはここに残しておこうと思う。
1番好きだった作品
リサイクルショップ複製遺跡(女木島)
スプーンやパンチが並べてある机と、それが石膏で型取られて跡だけになったものがある。ふたつの机が、島のビーチに面する美しい部屋に置かれている。
見た瞬間にはわからなかったけれど、じわじわと引き込まれた。日常やそれぞれの人間のストーリーに私は強く惹かれるのだと思う。
この作品をみて1番創作がしたくなったし、ひとりでストーリーを読みながら居座ってしまった。書斎としてスペースが用意されているのもいい。
1番ぞわりとした作品
心臓の音のアーカイブ(豊島)
心臓の音のアーカイブは、個人的にはかなり苦しくなる作品だった。リアルなのだ。血管や心音など、血流や人間のコアを意識させられるものが非常に苦手なのだ。実在する人の心音のリズム、強弱に合わせて真っ暗な部屋のたった一つの電球が瞬くという作品で、かなりディープだった。
光が弱い時には部屋に入ってきた人とぶつかりそうになるから次に見える瞬間まで立ち止まらなくてはいけない。自分の中の音と響き合って苦しいのに、揺さぶられているようでなかなか部屋から出られなかった。
1番好きになった島
豊島
最初に行った島で、瀬戸内を一気に好きになってしまった。魅力的な色彩すぎるだろ!と震えたし、なにより心ごとひとりになれる空間があった。
海をただ眺める、ひとりで梢の中を歩く、そんな時間を求めていたんだなあと改めて感じた。作品は2つしか見られなかったけれど、濃い時間を過ごせたと思う。きっと最初に行ったのが豊島でよかった。
次は見たい作品
南寺(直島)
友人にお薦めされたのに見られなかった作品。直島は他にも家プロジェクトなど室内展示で見られなかったものも多い。
秋にも訪れたいと思っているので(この場所を絶対に気に入りそうな妹に即声をかけた)、その時には是非とも行きたい場所だ。
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総じてこの芸術祭をめちゃくちゃ楽しんだ。
とてもいいなと思ったのは、表現について改めての気づきが本当に多かったこと。私はすでに有名になって人々がどんどん消費するパッケージ化されたものも嫌いじゃないけれど、自分が見た景色と日常の境界線を切り取って、自分とリンクするものを自分の手で探す活動が好きなのだと思う。
文章を書くことへの意欲もまた強くなった。暮らしをこれからも描いていきたいなと思う。
また、ひとりで回った時間が多かったことで、自分の好きなものを好きなだけ見ていられた。それも表現と向き合うことに直結したのかもしれない。かわいい写真を撮っている女子たちを少し羨ましくも感じつつ、初回はこれでよかったなと改めて。
とてもじゃないけど作品を回り切れなかったから、また来ようと心に誓って!
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