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【連載小説】マジカル戦隊M.O.G.(第17回)

前略

あはははは!
大変なことになっちまった。
もう笑うしかない。

ま、順を追って少しずつ説明してやるよ。
一回で全部書ききれないかもしれないけど、そんときはまぁ、そんとき考えるかな。
いやー、ホントはもう結論の部分を言いたくて言いたくて仕方ないんだけど、でもいきなりそんなこと言ったって、とうとう頭がおかしくなったんじゃないかと逆に心配されそうだから、ま、ちょっと遠まわしの説明になるかもしれないけど、我慢して聞いてくれ。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

こないだの勝利で首都攻略は目前と言われてたんだけど、敵軍は卑劣にも、都市全体を人質に取ってゲリラ戦を挑んできやがった。
俺たちは空と陸から首都奪回作戦を展開、住民の救出を試みることになった。
まず、住民を安全な区域まで避難させ、ライフラインを奪回し、しかるのち敵の残存兵力を根絶やしにして都市を開放するってわけだ。
でもって俺たちホウキ部隊は、魔道アーマーとタッグを組んで、先発部隊として住民の捜索と敵主戦力の討伐に当たることになった。
こないだの攻撃目標は軍事施設だったからとにかくバンバン撃ちっぱなしでよかったけど、今度は敵をピンポイントに狙っていかないと、都市を破壊してしまうのみならず、周辺の民間人を巻き込んでしまう可能性もある。
厄介な作戦だけに、身軽な俺たちホウキ部隊の活躍が期待されてたわけだな。

まず、ホウキ部隊が首都上空に切り込んだ。
前回の攻撃でもう俺たちの存在は知られていたから、さすがに今回は敵の対応も早かったね。
あっという間にそこらじゅうから対空ミサイルが飛んできた。
だけど、今回の俺たちは、力場周辺に細長い魔力の針を配置して、目視で確認できない部分の索敵を魔力任せにしていた(これは前回の戦闘で得た教訓を生かして、隊員たち自らが編み出した新しい魔法の使い方だ)。
そのおかげで、打ち上げられた対空ミサイルのほとんどは、着弾前に魔法の盾で自動的に破壊された。
俺たちは散開し、低高度で中心部外縁に進入、砲台やらミサイル台やらヤバそうなものを、ある者は火の玉で、ある者は吹雪で、ある者は真空波で片っ端から破壊していった。
途中、方々からハンドガンやライフルで狙われたみたいだけど、それらは魔力の針によってかわされたか、力場に受け止められて俺たちを止めるには至らなかった。
そっちは後発の魔道アーマー部隊に任せて、俺たちは市民が囚われている各施設に、いくつかのグループに分かれて向かった。

俺が行ったのは、市内にある大きな国立劇場だった。
まず周辺の装甲車やら戦車やらを破壊し、地面ぎりぎりを飛行しながら、銃を持ってうろうろしてる(捕虜だったときに見覚えのある)緑色の服のやつらを片っ端から燃やしてやった。
周辺を鎮圧したら、ホウキのまま劇場内に突入、内部の敵を皆殺しにして建物の正面出入り口を開放、外で待機してる白魔道隊に人質を引き渡してミッション完了だ。

ところが、これで終わりじゃなかった。
俺たちが劇場上空で次の目的地へホウキを向けたとたん、地上が轟音とともに炎に包まれた。
ふと見ると、どこからやってきたのか攻撃ヘリが一機、白魔道隊がいた辺りを機銃で掃討してるところだった。
地上はすでに、ミサイル弾で火の海になっており、せっかく救出した市民がどうなったのかはここからでは確認できない。

とっさに俺はきびすを返してヘリに向かい、そいつに金属ワンドを向けて、火の玉よりも到達速度の速いライオ呪文を連射した。
数発の稲妻が音もなく杖からほとばしり、ヘリの横っ腹を直撃した・・・はずだった。

驚いたことに、俺の放った電撃は、まるで紙にインクが吸い込まれるかのように、ヘリの少し手前の空間にすっと吸収されたのだ。
これは間違いなく魔力による結界。
MOGを持ってない敵にはありえない事のはずなんだけど、その時の俺にそんなことを考える余裕なんてなかった。
勢いよくヘリに近づき過ぎたんだ。
体制を整えようと、俺は夢中でホウキを引き上げたけど遅かった。
俺を乗せたホウキは上へ下へとふらふら飛んだ後に、くるくると無様に回転しながら、ヘリの斜め下を直撃した。
結界と力場がこすれ合う「きぃぃ」といういやな音が聞こえた刹那、反転した結界と力場に激突したヘリは、ぐにゃりとねじれて空中分解を起こし、木っ端微塵に爆発しながら墜落した。

もちろん、俺も一緒になって落ちていった。
そこからの高さが多分20メートルもないくらいだったろうし、力場がまだ生きてたせいもあって、どうにかこうにか死なずには済んだ。
でも結局、俺はヘリの落下地点から10メートルほど離れた芝生の上に、ホウキごとたたきつけられ、ゴロゴロと地面を転がって、最後に空を見た。
強烈な全身の痛みと吐き気、あと何故か寒気がしたことを思うと、実はひどく出血していたのかもしれない。
分かったのは両足の骨と手首、それに肋骨が何本か折れていたらしいことだった。
息も絶え絶えに、助けを呼ぶこともできなかった。
だけど、爆撃を生き残った数名の白魔道士がすぐ駆けつけてくれて、かなりの苦痛を伴う「急癒呪文」をかけまくってくれたおかげで(すんごく痛いのよコレ。骨折なんて比じゃない)、俺の傷はものの30分で元どおり癒えた。
着ていた飛行服のほうは、血まみれでボロボロになってしまってたけど。

起き上がって様子を見た。助けたはずだった市民たちのほとんどが黒焦げになっていた。
子供も大人もみんなだ。
赤ん坊を抱いた母親もいた。
彼女は胸に小さな肉体を抱えてしゃがみ込み、そのままの形で炭になっていた。
貴重な白魔道隊員も、グループの半分が犠牲となった。
他のホウキ隊の魔法で消火作業はだいたい終わってたけど、そこらじゅうでまだ炎がちろちろ言ってくすぶってて、豪華でモダンだった劇場の入り口は溶けたガラス質の塊になっていた。
そこからさらに5メートルほど離れた黒焦げの芝の地面に俺のホウキが突き立っていて、激突の衝撃でか後ろ半分が少し「く」の字にゆがんでいた。
俺は白魔道士たちへの礼もそこそこに立ち上がり、やおらホウキを引き抜いてまたがると、再び地面を蹴って空に飛び上がった。
許さない。
絶対に許さない。

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はぁ・・・いいとこだけど、ちょっと疲れてきた。最後まで書けなかったな・・・さっきの薬が効いてきたみたいだから、今日はもう寝るわ。続きはまた今度ね。

早々



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)