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【連載小説】マジカル戦隊M.O.G.(第18回)

前略

こないだの続きだ。
どこまで書いたっけな。
ええと、確かヘリとぶつかって、起き上がってその後からだな。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

もうホント、あんなに強烈な怒りを感じたのは初めてだった。
俺の周囲が真っ赤に燃えていたみたいだった。
空に上がった俺は、曲がったホウキの上でバランスを取りつつ、ワンドを逆手に持ち替えた(そのほうが大きな火の玉が出るんだ・・・消費MPが倍になるけどな)。
命令なんてもうどうでもよかった。
俺は焦げた匂いのする市街地を蜂のように飛び回って、目に付いた兵器という兵器に片っ端から火の玉を投げつけてやった。

こんなものが、こんなものがあるから!

中には味方の分もあったかもしれないけど、そんなこと知ったことか。
戦争なんてなくなってしまえ!
今すぐこの世から消えてなくなれ!

俺はとにかく夢中になって、体中にまとわりついた、黒いドロドロを拭い去ろうともがいた。
爆炎に煙る街はどこまで行っても闇だ。
いや、街だけじゃない、世界中のあらゆる場所が、人が、この重っ苦しいタールの海にとっぷり漬かっているんだ。
これが現実で、これが世界だ。
それでも、俺は納得なんかしない。
妥協なんかしない。
ちっぽけな肉体に宿る限られた魔力が尽きるまで、この気持ち悪いヘドロの海をなぎ払い続けてやるんだ。
俺はありったけのMPで火球を乱射し続けて、街を黒焦げにしていった。

ふと気がつくと俺は、都市の上空300メートルくらいのところに浮かんで、ぜいぜいと肩で息をしていた。
街のあちこちからもうもう黒煙が上がり、首都はまるで焼きすぎたピザみたいになっていた。

他のグループの仲間はどうなったろう?
市民は救出できたのだろうか?

俺が放心状態でぼんやりとそんなことを思っていたら、後ろの遠くからパリパリと魔力の感覚が伝わってきた。
振り返って見下ろすと、ホウキ部隊が何グループか、首都中心部に向かって飛んでくるところだった。
作戦終了だろうか。
帰ったら軍法会議だな。
命令違反で銃殺刑になってもいいや。
そんときはもうひと暴れしてやろう。
疲れ切った俺は、その時そんな風に思っていた。

だが、何か様子がおかしい。
彼らは、上空から首都を無差別に魔法で爆撃している。
それに、よく見たら・・・制服が違うじゃないか。
まさか、まさか・・・

そう、そのまさかだった。
敵軍にもとうとうMOGが・・・。
おそらく、敵側の同盟国が魔道部隊を派遣したんだろうが、この際そんなことはどうでもいい。

やめさせなきゃ!
これ以上関係ない人間を殺させてたまるもんか!
俺はホウキの先を真下に向け、重力に任せてきりもみしながら急降下した。

激しい戦いだった。
俺は上がってきた味方のホウキ隊と同時に、敵の部隊の只中に突っ込んだ。
そこここで激しい魔法戦が始まった。
火球や電撃が飛び交い、吹雪や突風が渦巻き、結界と結界が激しくぶつかり合う。
つむじ風に呑まれ回転しながら落下する者、結界を反転させられて時空のかなたに飛ばされる者、MP切れで力場を失ってホウキから振り落とされる者・・・。
俺のMPはほとんど底をついていたけど、怒りに任せてそこらじゅうの魔法使いに向かって稲妻を乱射しまくった(それでも今度は味方に当てないよう、ちょっと気を遣ってたと思う)。

俺の上や下で、魔力の絶えた魔道士が落下し始めた。
俺は緑色の服のやつを選んでガンガン爆発させてやった。
十何人目かの魔道士を黒こげにしたとき、まだ息のある魔道士を白魔道隊が介抱しているのが、はるか下のほうでちらりと見えた。
そこで俺は、自分がもうすっかり疲れ果てていて、MPもほとんど残ってないことを思い出した。
そろそろ一度着地したほうがいいかと思ったその時、背後から鋭い何かが通過した。

一瞬何が起こったかわからず、とっさに自分の体を見た。
ない。
なくなってる。
両足のひざから先がすっぱりなくなってる。
気がつくと同時に、吹き上がる間欠泉のように、全身を苦痛が駆け上がった。
俺は叫び声を上げ、体をねじって背後を見た。遠くのほうから緑の服を着た魔道士が高速で近づいてきて、手にしたワンドをこちらに向けた。
ワンドの先から無数の真空波が飛び出し、俺と俺の乗っていたホウキは、一瞬ののちにばらばらにされていた。

手足をなくした俺は、激痛と血と墜落感にもみくちゃにされながら、むなしく戦場から転がり落ちていく。
これが俺の死か・・・これは間違いなく死ぬだろうな・・・そう思った。
これで戦争を終わらせることができなくなっちまった。
最後まで生きて、生き延びて、戦争で生まれる悲しみを少しでも減らせたらと思ってたのに。
畜生、死にたくない、死にたくない、神様、死にたくないよ・・・

そこで意識が途絶えた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

で、どうなったか?
気になるかい?
へへ、今日はもう消灯なんだ。
また続きを書いて送るから、ちょっと待っててくれ。

早々



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)