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なぜ、私は頑張っているのに給料が上がらないと感じるのか?そして、給料を上げるにはどうすればいいのか?

自己研鑽しても給料は上がらない。時間を切り詰めて目一杯収入に貢献しても給料は上がらない。管理職と同じ仕事をしても給料は上がらない。そんなことを嘆くリハ専門職を見聞きします。
 なぜ、こんなに私は頑張っているのに給料が上がらないのか?そう感じさせるのは、“不公平感”であると私は考えます。
 そこで本noteでは、不公平感とは何かについて整理すると共に、仮に自己研鑽や目一杯の収入への貢献、管理職業務の代行により給料が上がった場合の影響を考えます。そして、給料を上げるためには具体的にどうすればいいのかを現実的な視点で考えます。

不公平感とは何か

不公平感とは、他人と比べて自分の処遇が公平か否かによって感じる感情と考えます。つまり、比較する他人がいなければ、不公平感は感じないと考えます。
 不公平感に関する実験で興味深いものの一つに、オマキザルの実験があります。

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二匹のオマキザルは、それぞれ室内に入れられた石を実験者に渡すことで報酬がもらえるということを学習しています。そこで、二匹のオマキザルを透明な仕切りで区切り、双方の状況が見える環境にします。そこで、室内に入れられた石を実験者に渡した報酬として、一方のオマキザル(左)にはキュウリを与え、別のオマキザル(右)には好物のブドウを与えました。すると、キュウリを与えられたオマキザルはブドウを与えられたオマキザルを羨むような行動をした後、報酬として得たキュウリを実験者に投げ返す行動が観察されました。
 このことから、自分の処遇の良し悪しよりも、他人と比べて自分の処遇が公平か否かに重きを置いて不公平感を認知していることがうかがえます。

これを踏まえ、職場で不公平感が生まれるわけについて考えます。例えば、「職場が療法士に求めるレベル」に達していない療法士Aと、職場が療法士に求めるレベルを上回っている療法士Bがいたと仮定します。
 この状況で、給料などが「療法士A=療法士B」である場合と「療法士A>療法士B」である場合は、療法士Bが不公平感を抱くことは容易に想像できます。

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筆者作成

つまり、職場における不公平感とは、自己研鑽や収入への貢献、管理職業務の代行を他人よりも行なっているにも関わらず、他人と自分の処遇に差を感じないことが起因していると考えます。
 では、不公平感を抱く方が訴えるように、給料などの金銭的インセンティブを増やせば解決するのでしょうか?

金銭的インセンティブの特徴

金銭的インセンティブに関する実験として、心理学者のデシの実験が有名です。

エドワード・デシの実験
彼は、パズルが好きな大学生を集めて2つのグループに分けて、3日間パズルを解かせました。
 ひとつめのグループでは、1日目には自由にパズルを解かせ、2日目ではパズルを解くごとに金銭的報酬を与えました。そして、3日目では金銭的報酬は与えず、また自由に解かせました。
 一方で、ふたつめのグループは3日間自由にパズルを解かせ、金銭的報酬などは一切与えませんでした。
 その結果ひとつめのグループでは3日目のモチベーションが著しく下がってしまったのです。ふたつめのグループではモチベーションの低下は見られませんでした。
引用:心理学用語「アンダーマイニング効果」とは?意味と具体例を解説
<https://gimon-sukkiri.jp/under/>(参照2022-6-9)

つまり、好きなことや、やりがいを感じて行っていた行動でも、金銭的報酬を受けることで、金銭を受けることが目的となってしまう可能性を示唆しています。これを、「アンダーマイニング効果」と言い、内発的動機づけに対して外発的動機づけを行うことで、内発的動機づけが減少してしまうことを言います。
 したがって、前述の療法士Bに対し、仮に給料などの金銭的インセンティブを与えたとしても、自己研鑽の目的が金銭となる可能性があります。そうなると、モチベーションを落とさないようにするためには、金銭的インセンティブを増やし続けるしかありません。

給料を上げる現実的具体策

企業が職員に対して金銭的インセンティブを増やし続けることは可能でしょうか?多くの企業の財務体力は無尽蔵ではないため、それは難しいと想像します。しかし、不公平感は結果的に療法士Bのような優秀な職員のモチベーションを低下させ、離職の可能性も高めてしまいます。
 では、療法士Bのような優秀な職員はどうすべきか?すぐには金銭的インセンティブは得られなくても、ライフステージの変化などで物入りとなる30代後半以降に、確実に昇格や登用の機会をものにできるように中長期的視点での準備を行うことが得策と考えます。

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上の図は、令和2年の医療・福祉業界における年齢階級別賃金と、令和3年の年齢階級別1世帯あたりの1か月間の消費支出額を組み合わせたものです。これによると、消費支出は50歳代半ばまでは増え続け、その後緩やかに減少していることがわかります。したがって、30歳代半ばから50歳代半ばまでの約20年間の収入が重要となります。
 したがって、30歳代半ばまではさまざまな”挑戦”を行い、必ず訪れる昇格の機会を最短で確実にものにすることが給料を上げる現実的具体策と考えます。その”挑戦”の一部が、他人よりも自己研鑽することや収入に貢献すること、そして管理職業務の代行経験ではないかと感じています。

管理業務の代行については、上司や先輩の尻ぬぐいと感じて強い抵抗感をお持ちの方も少なくないと推測します。そのような方は、以下の記事を参考にしてください。

医療従事者が学び続ける訳

職場が求めるレベルについて前述しましたが、そもそも職場が求めるレベルが明確でない組織も少なくないと感じます。しかし、職場が求めるレベルの設定と共有は、医療サービスの品質を担保する上で必要不可欠です。ラダーや職能要件書、規定や手順などのツールを活用するのも一手です。
 さて、医療従事者はなぜ学び続ける(必要がある)のでしょうか。それは、医療の進歩に遅れないようにするためということもありますが、医療サービスの特性を考えるとそのヒントが見えてきます。

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医療サービスの特性として、”無形性”と”生産と消費の同時性”があります。無形性とは、形がないために、経験しないと質を判断できなかったり、良し悪しを事前に見極めることができないというものです。また、生産と消費の同時性とは、サービスの生産と消費が同時に発生するため、サービスの生産プロセスに患者も関与するということと、適切でないサービスが提供された際にそれをやり直せないというものです。
 したがって、医療者が患者にいかに働きかけるかが患者の満足度を規定する決定的要因となるため、多様な患者の多様な期待に応えるために学び続ける(必要がある)のだと私は考えます。

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以上、不公平感を”他人と比べて自分の処遇が公平か否かによって感じる感情”と整理し、職場における不公平感の起因を解説しました。また、仮に自己研鑽や目一杯の収入への貢献、管理職業務の代行に金銭的なインセンティブが与えられた際の懸念事項を述べました。そして、すぐに給料が上がらなくても、必要な時に確実に給料を上げるための現実的具体策の私見を述べました。
 これらは、あくまで現時点での考えです。したがって、この問題については今後も考え続けたいと考えています。

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