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公用文から理解する文の解釈と作成の考え方

私が公用文について学ぶ必要性を感じたのは、民間病院のリハビリテーション部門の部門長を務めていた時です。施設基準や診療報酬を確認するために開いた「医科点数表の解釈」の解釈に悩む点がありました。それは、「A、B、C又はDが必要」という文章をどう解釈するかということです。結論は、「A、B、C、Dのうち1つあれば良い」ということです。
 そこで本noteでは、病院の部門管理者が知って損はない公用文の解釈を整理します。具体的には、公用文を解釈する上で有用な「公用文作成の要領」に代わる「公用文作成の考え方」の抜粋です。したがって、より詳細に理解したい方はそちらを確認して下さい。

公用文作成の要領とは

公用文作成の要領(こうようぶんさくせいのようりょう、昭和27年4月4日内閣閣甲第16号)とは、公用文の表記の改善を目的として1952年(昭和27年)4月4日に内閣が内閣閣甲第16号として各省庁の次官宛に発出した通達(指示文書)である。
2022年(令和4年)1月7日、文化庁、文化審議会は、「公用文作成の要領」(昭和26年 国語審議会建議)にかえて政府における公用文作成の手引として周知・活用されることを目指して「公用文作成の考え方」を文部科学大臣に建議した。同建議を受けて2022年(令和4年)1月11日に「「公用文作成の考え方」の周知について」が内閣官房長官から各国務大臣に宛てて通知された(令和4年1月11日内閣文第1号)。同通知により昭和27年4月4日内閣閣甲第16号は廃止された。

つまり、公用文の表記の改善を目的として、昭和27年に「公用文作成の要領」が通達されましたが、令和4年に「公用文作成の考え方」に代わり「公用文作成の要領」は廃止されたということです。

公用文作成の変更点とは

下の表は、読売新聞オンライン(2022.1.8)から引用したものです。

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文化庁のホームページには、具体的内容として次のような点が挙げられています。

○公用文と呼ばれる文書の範囲を整理・分類(法令は直接の対象としない。)
・公用文を「告示・通知等」「記録・公開資料等」「解説・広報等」に分類。
・国民に直接向けた広報などを中心に、読み手に合わせた分かりやすく親しみやすい書き表し方を積極的に認める。
○ 社会状況及び言語環境の変化に対応
・横書きの読点は、「、(テン)」を用いることを原則とする。
・専門用語や外来語の扱いに関する考え方を提示。

これまで私が投稿した論文の投稿規程は、句点は「.」(ピリオド)、読点は「,」(カンマ)で記載が求められていました。また、教職の方からのメールは同じ特徴がありました。この辺も今後は、句点は「。」(マル)、読点は「、」(テン)に変化していく可能性があるかもしれません。

数字の使い方

・横書きでは、算用数字を使う。
・大きな数は、3桁ごとにコンマで区切る。
・兆・億・万の数字は、漢字を使う。
・全角・半角は、文書内で使い分けを統一する。
・概数は、漢数字を使う。(二十余人、数十人)
・語を構成する数や常用漢字表の訓による数え方などは、漢数字を使う。(一人)
・縦書きする場合には、漢数字を使う。
・縦書きされた漢数字を横書きで引用する場合には、原則として算用数字にする。
・算用数字を使う横書きでは、「○か所」「○か月」と書く。(7か月)
 ただし、漢数字を用いる場合には「○箇所」「○箇月」のように書く。

文の書き方

・一文を短くする。
・一文の論点は、一つにする。
・三つ以上の情報を並べるときには、箇条書を利用する。
・基本的な語順を踏まえて書く。
・主語と述語の関係が分かるようにする。
・接続助詞や中止法を多用しない。
・同じ助詞を連続して使わない。
・修飾節は長いものから示すか、できれば文を分ける。
・受身形をむやみに使わない。
・二重否定はどうしても必要なとき以外には使わない。
・係る語とそれを受ける語、指示語と指示される語は近くに置く。
・言葉の係り方によって複数の意味にとれることがないようにする。
・読点の付け方によって意味が変わる場合があることに注意する。

用語の使い方

及び・並びに
・A及びB :二つの物事を結び付けたり、同時に採り上げたりする。
・A、B、C及びD:等しく扱うべき三つ以上の物事を結び付かせたり、同時に取り上げたりする。最後のつながり部分にのみ「及び」を用い、他は「、」とする。
・A及びB並びにC(及びD):三つ以上の物事を結び付けるなどの際に、結び付きの強さに段階がある場合、1段目の結びつきには「及び」を、2段目の結び付きには「並びに」を使う。
又は・若しくは
・A又はB:二つの物事のうち、どちらか一方を選ぶ。
・A、B、C又はD:それぞれ同格の三つ以上の物事の中から一つを選ぶ。最後に示す物事の前にだけ「又は」を用い、他は「、」とする。
・A若しくはB又はC(若しくはD):三つ以上の物事から一つを選ぶ際に、結び付きの強さに段階がある場合、1段目の結び付きには「若しくは」を、2段目の結び付きには「又は」を使う。

その他、文の最初や改行した直後の書き出しでは1字分空けるが、電子メールやSNSではこの限りではないこと。また、ウェブサイトなどでは、段落間を広く空ける工夫で読み取りやすくなることなども知ることができました。
 日本人として、端的で美しい文章を追求していきたいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考

・ウィキペディア:公用文作成の要領.https://ja.wikipedia.org/wiki/公用文作成の要領(参照2022.2.19)
・文化審議会国語分科会:新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告).https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/92895101_01.pdf(参照2022.2.19)
・文化審議会:公用文作成の考え方(建議).https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf(参照2022.2.19)
・文科省ホームページ:文化審議会建議「公用文作成の考え方」について.https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93650001.html(参照2022.2.19)
・読売新聞オンライン:公用文に「?」「!」使えます!…国家公務員向け手引、70年ぶり見直し.https://www.yomiuri.co.jp/national/20220107-OYT1T50309/(参照2022.2.19)

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