「待機児童対策」最前線にいた私が感じる限界感

4月1日を過ぎ新年度が始まりましたね。保育園も年度が替わり、ならし保育が始まる頃ですかね。「日本死ね」の書き込みから、待機児童問題への世間の関心はますます高まっているようですが、私自身こればっかりはどうあればいいという解決策が全く浮かばないお手上げ問題なんですよね。

私は役所時代に待機児童対策の最前線で働いておりましたので、ある程度は首都圏で起きている問題の状況はわかっているつもりです。私が勤めていた地域では、大規模マンションの建設ラッシュで、子育て世帯が大量に引っ越してきていました。そのせいで(と言ってはなんですが)余計に保育園に入りづらい状況になっていたんですね。500戸のマンションが一気に何棟もできたら、それは入れるわけないでしょう、ということになります。

私がいつも思っていたことは、開発するデベロッパー側にマンションの1室を保育室として提供することを義務付ける、という案です。何戸以上のマンションを建てる際は、何人定員の保育室を設置し、その部屋の固定資産税等は減免にするなど。一応、建築確認の際かなんかに、保育系の部署と設置に向けた協議を行うこと、という努力義務規定はあったようなのですが、実質それで保育室を設置する開発業者はいませんでした。また、ここで作られる保育室は、小規模保育事業に該当する規模になると思うのですが、小規模保育だと認可事業なので、フルタイムの人から優先順位をつけ、役所で入所者を決める方法を採ることになるので、マンションの住民が優先的に入れるシステムにはなりません。もしマンションの人を優先的に入れる保育室を作る場合、それは認可事業ではなく認可外になるので、公費の助成が入らないため保育料は高額になります。認可外であれば、マンションの人を優先するなど保育室側が入所者を決められることになります。

私はここまで想定して、デベロッパー的にもマンションの人にインセンティブがない小規模保育事業を設置するわけがないし、認可外を作ったところで人が集まるかはわからないのでその案もないだろうし、委託業者探すのも面倒だし、努力義務レベルでやる事業者なんてないだろうなぁと思い、「現実味ないなぁ」と思っていたものです。

事業所内保育(会社の福利厚生の一環として置くなど)は結構いいかな、と思っていたのですが、電車通勤だとお子さんを連れて行くのが難しいのと、集団生活を経験しないまま小学校にあがってしまうことへの懸念(であれば3歳から幼稚園に入れるとか方法はありそうでしょうけど)、オフィス内の環境が悪いなどの問題点もあるようです。もし従業員の子供だけで定員が埋まらないのであれば、「地域枠」というものがあるので、その地域の子どもを役所が優先順位付けした上で入所させることもできます。単なる事業所内保育所は認可外扱いなのですが、地域枠を設定することでその分公費も入ります。しかしながらオフィスのある都心は住民も少ないため、そのニーズすらあるかどうか、ベッドタウンの企業の事業所とかだったら良いかもしれません。まぁそもそも事業所内保育を作ろうという企業の意識がほとんどないのでいずれにせよ難しいでしょうね。

ちょっとマニアックな話を書いてみましたが、最前線にいた人でなければここまで語れないでしょう(笑)。役所が場所を見つけて設置できれば一番良いのでしょうけど、実際なかなかないですよ。保育園を作ってほしいという要望があるのは当然と思いますが、「ここにあればよいのに」と思う場所にはだいたいテナントが入っていて、空き場所がない。実際交通の便が不便な場所だと定員割れしているところもあります。人々のニーズは駅前に集中。自己擁護するわけではないですが、待機児童問題は政府や自治体のみならず、企業、デベロッパー、駅ビルなど社会全体で考え、取り組まなければならない問題だと思います。すべての人の当事者意識が欠如していて、他人のせいにして生きている。「助け合い」ではなく「押し付け合い」。そんな意識が浮き彫りになる終わりの見えない待機児童問題なのでした。

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