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【テニス】 ラケット破壊は悪なのか?

先日、全豪オープン4回戦で日本の西岡良仁選手が試合中にラケットを破壊しTwitterで物議を醸しました。
結論から言うと、私はテニス選手の試合中におけるラケット破壊は問題無いと思います。

しかしこの話題になるとほぼ100%の確率で

「メーカーの人の気持ちを考えろ!」
「スポーツマンシップがなってない!」
「感情をコントロールできないなんて子供みたいだ!」
「どんな理由があっても物に当たるのはダメ!」
「一流はそんなことしない!」

というコメントが寄せられますが、テニスではラケットを破壊しても警告と罰金程度で済むのが現状です。他のスポーツではそういった野蛮な行為をすると即退場なんて話がありますが、何故テニスではそうならないのかをまとめていきたいと思います。

1.テニスという競技がある程度認めている

まず私自身、「物は大事にしなければならない」という主張に異論はありませんし、ラケット破壊という行為に善悪をつけるならであることは分かっています。
切り取られたシーンを見て「物に当たるな」と言いたい気持ちは分かりますが、あなた方がそんな当たり前の事を説教しなくても選手達自身もそれくらいの倫理観は持っています。

そしてコートの中ではそういった倫理観が崩壊する程のストレスがかかり、テニスという競技が選手のストレス発散を一種のエンタメとして受け入れているのが現状と言えます。
これをエンタメとして受け入れないなら「ラケット破壊したら即失格」のようなルールを作れるはずですが、そうすれば

選手にストレスを溜め込ませ続けて試合を続行
or
ストレスが爆発すれば失格

という競技になってしまいます。勿論前者のような状態でも自分の感情をコントロールできる精神性を持つのが理想ですが、それが非常に難しいことはフェデラーですらラケットを折ったことがあるという例で十分に伝わると思います。史上最高と呼ばれる選手でも難しいことを他の選手に求めるのはなかなか酷な話で、こんなルールが適用されれば試合が途中で終わったりする事態になりかねません。
ラケット破壊で気持ちが切り替わってそれで試合が続行するなら、ファンとしても観戦を楽しめます。テニスもビジネスですから、そんなことで試合が途中で終わっていたら商業として成り立たないということですね。

「ああ、もうラケット破壊するって前提で話が進んでいくんですね」

と思った方、その通りです。テニスはそういう競技なんです。
では選手達を苦しめるコート内でのストレスとは何なのか、テニスのストレスが他の競技とどう違うのかを考察していきたいと思います。

2.テニス特有のストレス

長年テニスを観戦していますがこの競技はかなり特殊で、他のスポーツとはストレスの質が違うのが伝わってきます。

まず選手は試合中ずっと孤独であること。
と言いたいところですが、今年の全豪オープンではルールが変更され試合中に陣営と言葉を交わすことができるようになっていました。逆に言えば、今までは如何なる状況でもコーチング禁止だったので選手は一度コートに入ると味方と接触することができませんでした。
これはテニス選手にとって非常に過酷なルールです。チームスポーツならチームメイトと意見交換したりしますし、他の個人競技では休憩中にコーチと話している姿をよく目にします。

テニスではそれができない上に、更に追い打ちをかけるルールがあります。
それは考える時間がほとんど無いこと。
というのもテニスのポイント間は25秒と決まっており、その中で汗を拭き、呼吸を整え、サーブorレシーブの準備をしなければなりません。見ている側としてはこれ以上感覚が長くなっても困るので助かりますが、選手にとっては過酷でしょうね。
客観的なアドバイスをくれる人もおらず試合中に上手くいかないことは全て自分で対処しなければならないのに、考える時間がほとんどない。それが3時間、4時間と続いていくのがテニスという競技です。

しかし先程も言った通り今年の全豪ではコーチングが許可されており、これが設定された理由の一つに「選手のストレス緩和」があったのではないかと思います。このおかげ(?)なのか今大会で私が目にしたラケット破壊は西岡選手だけでした。このルールが他の大会にも適用されれば以前よりも野蛮な行為は減っていくのでは無いでしょうか。

3.「物に当たってはいけない」←本当に?

テニスのラケット破壊が警告程度で済む理由の一つに「別に誰も傷付けてない」というのがあります。よく物に当たるのはダメなんて話がありますけど、皆さん人に当たるのはどうお考えですか?

例えば野球の乱闘。デッドボール喰らった選手が怒ってマウンドに寄る光景なんてあったりしますけど、私からしてみれば「そんな騒ぎ起こすくらいならベンチ戻って一人でバットでも折っとけばいいのに」って思いますね。デッドボールなんて誰も得しませんし、わざとじゃないのは皆分かってるじゃないですか。
テニスだって選手に豪速球当たることありますけどそこで乱闘騒ぎになってるのは見たことないですね。

テニスで人に当たった例を挙げると、審判台を叩いた選手が失格になったのを見たことがあります。こういう例を見ていると人に当たるくらいなら物に当たってくれる方がまだマシだなって思いますね。

4.まとめ

いかがだったでしょうか。とりあえず私が言いたいのは切り取られたワンシーンだけ見てテニスという競技や選手の人格を否定する前に、こういった背景があるという理解を示してほしいということですね。
確かにああいったシーンを見れば誰だって「何やってんの」って思いますよ。でもそこで感情のままにコメントして誹謗中傷ってちょっと幼稚じゃないですか?ドヤ顔で「1+1は2なんですけど?」みたいに言ってる人多くてキツいですね。いや、知ってるから。みたいな。

では最後に史上最強のテニスプレーヤー、ノバク・ジョコビッチのラケット破壊に対する見解を紹介して終わりましょう。

「ラケット破壊が良くない事は分かっているが、どうしても試合中は折らざるを得ない場面がある。これからもそういった場面は何度もあると思うが、その都度折る」







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