見出し画像

04 自殺の相談を受けた時にやるべきこと

2020年度の年間自殺完遂者は21,000人ほど。交通事故死者は2,800人ほど。
交通事故の8倍近くの人が自殺で亡くなっています。
そして想定では、この自殺完遂者の20倍程度の自殺未遂者がいると考えられています。
実に年間42万人が自殺を試みていると予想されるわけです。

自殺完遂者とは、少し変な言い方をすると「自殺を成功させて死ぬことができた人」です。
自殺しようとした手段(縊死、有毒ガス、大量服薬、リストカットなど)やその実行の度合いによりますが、軽い症状で済む人もいれば、半身不随になったり脳に大きな障害が残ったりするような結果になる場合もあります。

自殺したいと相談された時に、経験や知識に乏しい素人が間違った対応をすると、状況を悪化させて自殺を完遂させてしまうおそれがあります。
絶対に自殺志願者の相談相手になってはいけません。
素人が相談にのるということは、悪気なく無意識に相手に批判の目を向けて傷つけてしまう可能性が極めて高いからです。

例として、相談を受けた時の心構えを考えてみます。

問題を解決してあげよう!
問題をネガティブなものと認識して、相談相手はその問題をかかえた存在だと考えてしまっています。

勇気づけてあげよう!
相談相手に勇気が欠けていると考えてしまっています。

支えになってあげよう!
相談相手を支えが必要な弱い存在だと考えてしまっています。

このような心構えは、相談してきた自殺志願者にもちろん敏感に察知されてバレます。
さらに悪いことに、経験や知識に乏しい素人は、解決方法がわからないと規範に答えを求めてしまいます。
規範どおりの倫理道徳的な意見は、その正しさが自殺を否定すると同時に相手の人格まで否定してしまうのです。

例として自殺志願者に投げかけられる間違った回答と、その回答に対する自殺志願者の気持ち=()をまとめました。

・自殺はよくないことだ。人として正しくない事だ。(善悪とか正しいとかどうでもいい。死にたい)
・自殺に逃げるのは卑怯だ。(卑怯でもなんでもいい。死にたい)
・死んでも何も解決しない。死ぬ気になればなんでもできる。(解決とかどうでもいい。死ぬ気で死にたい)
・死んだら悲しむ人の事を考えてあげて。(ちょっとだけ悪いなと思うけれど我慢できないくらいつらい。死にたい)
・世の中には生きたくても生きられない人が大勢いるんだよ。(そんなの関係ない。私は死にたい)
・それくらいの悩みで死にたいと思わないで。(それくらいの悩みかもしれないけど私はつらい。死にたい)

とりわけ、思いつめた自殺志願者は自殺決行のための「最後の一押し」を強く求めてしまっています。
これらの間違った回答たちは、回答者の意に反して、その最後の一押しとなって自殺完遂に向けて背中を押してしまう危険性があります。

だから

絶対に自殺志願者の相談相手になってはならない

のです。

また、自殺を取り巻く問題として「死にたい」という人への誤解があげられます。
以下、世間一般で良く言われている自殺志願者への誤解です。
・本当は生きたい、死にたいなんて思っていないのではないか。
・周囲の人にかまってもらいたいのではないか
・精神の異常なのではないか。
・「助けて」というサインなのではないか。

ここに大きな認識の違いがあると思います。

自殺志願者の「死にたい」とは、「ただ純粋に目の前の苦痛から逃れたい。自殺の善悪とか道徳とかどうでもよくて、とにかくはやくこの苦しみから確実に逃れたい!」という事だと思うのです。

熱湯に触れると反射的に手を引っ込めて身体の痛みを物理的に回避するのと同様に、心の苦痛を回避しようとするのは何も不自然なことではありません。
そして「死」は苦痛からの完全で絶対的な回避策になるのは事実です。

「死にたい」はシンプルに「苦しみから逃れたい」という感情の現れなのです。
その認識をしっかり持つことで、自殺に関して善悪や道徳によるズレた批判を無意識にしてしまわずに済むのです。

自殺志願者は、ただ苦しみを感じていて、どうにかしてそれを回避したいと考えている状況なのです。
自殺志願者が抱えている悩み・問題は、相談では解決できません。
解決不可能な問題を他人が相談によって無理に解決しようと頑張ると、そこから自殺志願者の人格否定をしてしまう可能性があります。

そして、自殺志願者の抱えている問題は原理的に解決できません。
だから相談で問題を解決しようとしてはならないのです。

自殺志願者のことを無条件で肯定することが大切です。
それが苦しみから逃れて、自殺をせずに生存するための手助けとなります。
理由なんていりません。
「あなたはあなたでいい。それだけでいい」と伝えてあげることです。
母親が子供にするように無償の愛を注ぐことが大切なのです。

よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートは死生観や自殺に関する参考文献の購入などに活用させていただきます。