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【2019シーズン】ヤクルトスワローズ観戦記

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ヤクルト観戦記、2019年シーズンはこちらにまとめて入れていきます。(オープン戦含む) 勝った日も、負けた日も、試合のある日は毎日更新しています。
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#阪神戦

みわちゃんが反芻した打球と、ライアンの完投と 【9/19阪神戦◯】

セカンドの横を打球が抜けて行った時、みわちゃんはとても悔しそうな顔をした。こうしてとるんだよな、と、何度も何度も確認する仕草をした。もうすぐ、ユニフォームを脱ぐのだ。それでもみわちゃんは最後まで、野球選手として、野球をするその人生をまっとうしようとする。 二軍球場とは思えない立派な鎌ヶ谷スタジアムで、私はこれから育とうとしている若手たちと、そしてもうすぐユニフォームを脱ごうとしている人たちを眺めていた。 「終わり」なんてもしかしたら、区切りに過ぎないのかもしれない、と思う

大事なのは誰かの評価じゃなくて、自分で納得できること【9/18阪神戦●】

いつかそれは、終わるのだ。華々しい記録も、勝利の余韻も、王者の立場も、何もかも。 いつかは、記録が途切れる時が来る。いつかは、負ける時が来る。誰しもにその瞬間が待っているのであれば、大切なのはそこから這い上がることだ。 てっぱちの盗塁の記録が途切れる。ヤクルトの最下位が決まる。でも戦いは、そこで終わるわけじゃない。てっぱちはこれからも打席に立ち続けなきゃいけないし、ヤクルトは試合を続けなきゃいけない。いつだって、勝つというシンプルな目標のために。 いつだって大切なのは、

生きている限り必ず、終わりはくるけれど【9/12阪神戦◯】

神宮での試合がしばらくないので、ファームの試合を見に行こうと、ジャイアンツ球場まで足を伸ばした。 びっきーは、そこでぐっちとにこにこしながら話していた。(あとぐっちはなぜか、タイセイくんのことを「キャプテン」と呼んでいた、たぶん。なぜ。) ああ、いいなあ。と、私は思った。それぞれの胸に、あらゆる思いを抱えているのだとしても、そこが二軍の球場だとしても、いやだからこそ、同じユニフォームを着て、こうして並んで二人で一緒にいるところを見られると、なんだかほっとする。二人が同じチ

ここまできたら総得点1位を目指していきたい【9/11阪神戦●】

677点。 今季、今日までにヤクルトが失った点数の総数である。 ちなみに他球団の失点は、9月11日現在、以下の通りである。 巨人 517点 横浜 552点 広島 553点 阪神 528点 中日 502点 これを見ると、ヤクルトの677点がいかに芸術的点数かということがわかる。 もっとも失点の少ない中日(なのか!)とは175点、ヤクルトの次に失点が多い広島(なのか!)とでも、124点の差である。すごくないですか?すごい。 一方、597点。 これは今日までの時点でヤク

塩見はしっかり前を見て、答えた。【9/10阪神戦◯】

仲睦まじいことで有名なカップルが破局する、離婚する、というニュースを見るたび、そりゃあ、外からは絶対にわからないことが二人の間にはあるよな、と、思う。 例えば、「あの二人が別れるなんてショック」とかはあんまり、思わない。他人にわからないことは、山のようにあるのだ。 小川さんとみやさまが二人で退任する、というにあたり、二人の気持ちは実際のところ、私たち他人にはさっぱりわからないのだ、と思う。もちろん、二人の関係だってわからない。(とても良いバランスだな、とは思うけれど。)

今ある環境の中で、強さと弱さに向き合って【8/25阪神戦◯】

石山が抜けて、ハフが抜けて、五十嵐さんが抜けて、そしてこんちゃんが抜けた。(じゅりはどこ。)そしててっぱちが途中交代した。 満身創痍。私は今季何度も口にした言葉をまたつぶやく。でももう、ここまできたら、開き直ってやるしかないんだよな、と思う。できることを、その環境で。 もちろん、やりきれない思いは拭えない。阪神戦のたびに、私はぐっちのことをつい考えてしまう。誰かが抜けるという痛みはいつだって誰かを苦しめる。「いるのが当たり前」だったその場所は、いつしかすっかりと景色が変わ

「覚悟」とともに立つ、その背中に【8/24阪神戦●】

(写真は覚悟を持ってお祭りの射的に挑むむすめ。) 平井くんとあきおが六本木でご飯を食べてお会計をしようとしたら、思ったよりずっと高くて、二人で持っているお金を寄せ集めてなんとか払ったら、帰りのタクシー代もなくなってしまい、どこかの階段に座り込んで途方に暮れてしまった、というエピソードが、有料アプリの動画「座談会」で語られている。 私はその回がどうも好きで、何度も何度も見てしまう。2017年2月、まだルーキーイヤーを終えたばかりの若かりしこーたろーとじゅりが飛び入りゲストと

「やくるとがよわいんじゃなくてあいてがつよいんだよ」とむすめが言う【8/23阪神戦●】

エラーをして走者を出したおっくんは、真っ先にマウンド五十嵐さんのところへ向かった。五十嵐さんは、おっくんに大きく頷いたように見えた。 まだ若いおっくんがそこに立ち、五十嵐さんが投げる時、少なからず緊張だってすると思うのだ。大先輩が投げる時にミスをしてしまったら(もちろん誰が投げる時だって同じなのだけれど、それでも心情的に)気まずいだろうし、「やっちまった感」は大きいだろうと思う。 だけどもちろん(それはもちろんと言える)、おっくんはいつものように、五十嵐さんの待つマウンド

だけどベテランにしかできない仕事がきっとある【8/8阪神戦●】

(※ベテランというのはきよしのことではありません、念のため) 阪神ファンの「あと一球!」コールが神宮に響く。ライトスタンドからは負けじと「奥村コール」がかかる。だけど阪神ファンの声に、ヤクルトファンの声はかき消されそうになる。昨日と一昨日は気づかなかったけれど、球場は結構な黄色に染まっていた。広島戦の赤ほどではないけれども、まあこれは、結構、黄色だ。 友人の息子くんが夏休みの自由研究に各球場の特徴について調べていて、神宮の特徴について聞かれたけれど、「多くの場合、ビジター

188cmの19歳と、167cmの39歳と。【8/7阪神戦◯】

「カツオさんを「生きる見本」だと言う、田畑さんのコメントを見かけて、そうだよなあ、生きる見本だよなあ、と、改めて思う。 打ち込まれる日もあった。イニングの途中でマウンドを降りることもある。でもそれでも、何度も何度もそこに戻ってくる。その度に、少しずつ、あらゆる調整をして、考えて、考え抜いて。 その小さな身体で、それを短所ではなく、長所にでもするかのように。みんなが持っているものはないかもしれない。でもだからこそ、みんなができないことが、できるのだ。ないものを長所にする方法

おっくんの笑顔が「本当に」チームを救う、それは優しい一勝だ【8/6阪神戦◯】

半月ぶりに戻ってきた東京には、ようやく夏が来ていた。暑いねえ、と、言いながら、ビールを飲む。神宮には、夜の風が吹き抜けていく。 どれだけ負けている試合でも、この空気があればなんとなく、救われるような気がしていた。それは、去年も、一昨年も。 だから5回裏、花火が上がるのを見上げながら、「まあ、良いか、負けても。花火は今年もきれいだし」と、私は思った。久々の神宮は、目の前の試合が負けていてもやっぱり、私の好きな場所だった。 だけど今日のヤクルトは、久々に、「花火の時間を過ぎ

夜はささやかな絶望に満ちているけれど【7/21阪神戦●】

ホテル近くのコンビニで、ポークたまごおにぎりとかタコライスとかサラダとかを買い込み、近くのビーチでばんごはん、ということにした。 なぜかWi-Fiのはいるそのビーチで(すごい時代だ)、去年と同じように、私はヤクルトの試合を見ていた。去年と同じように、ヤクルトはしょっぱなからピンチを迎え、そしてチャンスをつぶしていた。 だけど南国のビーチでiPadを通じてみる山中さん、というのはなんだかとても、目の前の景色に馴染んでいた。もちろん、いつだってヤクルトは勝ったり負けたり負けた

この海さえも、いつかどこかにたどり着くように 【7/20阪神戦●】

東京はいつまでたっても梅雨があけず、ずっと肌寒い日が続いていた。「神宮のビールが美味しい季節」には程遠い。いつまでも、カイロをしのばせて神宮に通った日々が続いている気がする。夏なんて幻なんじゃないか、という気すらしていた。 だけど那覇空港から出た瞬間、まとわりつく湿度と気温は確かに「夏」だった。そう、ちゃんと夏は来るのだ。季節はいつだって、巡ってゆく。 不安定な機内Wi-Fiで、試合の配信は何度も止まった。もう諦めて、本を読み始める。ヤクルトは点を取ったり取られたりしてい

大切なことを学ぶのは、きっと勝つことより負けることからだ  【5/23阪神戦⚫️】

どれだけ点を取っても取っても、ピッチャーが点を取られて負けるという試合が続くと、野手はそこそこ気落ちするだろう。 どれだけ0点を守っても、野手が点を取ってくれず負けるという試合が続くと、ピッチャーはそこそこ気落ちするだろう。 その小さなズレは、つもりつもるといろんなヒビにはなってしまうかもしれない。例えばもし、「点を取っても一緒じゃん!」と野手が思ってしまえば、その気持ちは後から何かに影響を及ぼしてしまうかもしれない。 野球というのは、投打のバランスで成り立つスポーツな