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【11/24日本シリーズ オリックス戦◯】カツオさんはヒロインでいつも、誰かに感謝する

カツオさんはお立ち台で、「めちゃくちゃうれしいです」と言ってはにかんだ。それはほんとうに、ほんとうに嬉しそうな笑顔だった。

私は今シーズン、何度も何度も見たカツオさんの悔しそうな顔を思い出し、思わず泣いた。優しいフォロワーさんがくれた「塩入りタブレット」を取り出し、口に入れる。

やさしさの味がして、私はまた、泣く。

「第4戦という大事な試合を任されて、なんとか監督の気持ちにこたえたかったので、『絶対大丈夫』という気持ちでマウンドに立ちました。」と、カツオさんは言う。

そして、「自分はほんとうに、楽しみながらマウンドに立つことができました」と。

もう塩タブレットは残っていないのに、涙は次々と溢れてくる。なんて優しい一勝なのだろうと、私はそう思う。

「自分によかったねと言ってあげたい」と、カツオさんは言う。決して、決して表には出さなかったけれども、何度もすり抜けていった勝ち星に、誰よりも一番悔しい思いを抱えていたのはきっと、カツオさん自身だ。40歳を過ぎ、自分より若い選手が次々と引退を決意し、そして若手はぐんぐん成長していく。奥川くんがCSで完封勝利をあげ、けいじくんが日本シリーズで完封勝利をあげる。焦りだって、きっとあるだろう。どう転んだってやっぱり、アスリートにとって「若さ」というのは武器なのだ。

それでもカツオさんは、へこたれることなく、そしてふてくされることなく、そこに立ち続ける。私はもう何度目だという、「カツオさんみたいな大人になりたい」と、今日も思う。

カツオさんを「勝たせてあげたい」と思うみんなの気持ちが、空回りしているように見えるのを、何度も目にしてきた。まだマウンドに立ちたいというカツオさんのその悔しい表情を、何度も見た。

だけど、どんなにピンチを背負っても、そしてどんなに味方が点を取れなくても、それでもカツオさんは冷静に、目の前の打者を打ち取っていった。「自分にできることを、やる。」そのシンプルな思いが、見える気がした。

カツオさんはいつもヒロインで、誰かへの感謝の言葉を入れる。「信頼できるブルペン陣」「先制点を取ってくれた野手陣」「素晴らしい守備」「キャッチャーの良いリード」…。必ず、必ずそういう言葉が入る。

本当は、味方が点を取れなかった日も、エラーをして失点を許した日も、ブルペン陣が逆転を許して勝ち星を逃した日も、たくさんたくさんあったのだ。そのたびに深い深い溜め息をついた。カツオさんを勝たせてあげて…と、何度も何度も思った。

だけどそれでもカツオさんは、「チームのおかげで」と、言う。きっと、本心から。

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