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ビートルズの日

今日はビートルズを聴いている。メンバーの誰かの記念日でもなく、私が今年から始めた最初の日。

1年前、病室の窓を少し開けると、まだ桜には1週間ほど早い夕暮れに大きな太陽。雪国ならではのキーンと冷たい空気は既になく、春の風の中に芽吹き始めた蕾の匂いも感じられるような、よく晴れた日だった。

コロナ禍の中、自分も病気療養中だった母は、私と奇跡的に父の最期の瞬間に立ち合うことができた。
これはドラマのシーンなのか?と思いたくなるほど、医師が人生最期のあのお決まりの言葉を言い終わると、母はすぐに『ありがとうございました』といい車椅子を自分で押しホスピスのロビーへ向かった。そして父が帰りたいと望んでいた自宅の方向に沈む大きな夕日を病室の窓から拝むように見ながら1人で佇んでいた。

その姿を見て私も、あの大きな太陽は父の想いを載せて山の向こう側の自宅に無事帰ったのだろうと思うと共に、お疲れ様。人生よくがんばったねと父への御褒美のようにも見えた。

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『意識ははっきりしてなくても、最後までちゃんと耳は聞こえているらしいから』と看護師のいとこに聞いていたので、私は医師と母が去った部屋で父が好きだったビートルズの「BEATLES 1」Love Me Doを流してあげた。

イントロから思ったよりも悲しくなったので耐えきれずにチェンジして、父の好きなShe Loves Youを流してあげたけど、今度は陽気すぎる雰囲気にバツが悪い気がして少しボリュームを下げた。父の人生の最期に何かしてあげたかった。こんな時間の過ごし方が正しかったかどうかわからないけど。

ビートルズ武道館コンサートはテレビで見たらしいけど、口数少ない父親とはそんなに話もしなかった。休日は文庫本をもって山で昼寝をするのが趣味で。戦後間もなく何もない山の中で育ったのに、考えたらとてもシャレてる人だったのではないかと思う。

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私がティーンエイジの感度が高い時期に多くのカルチャーに興味をもったのは、父の影響が大きいなと改めて感じた。メジャーリーグの大ファンでもあり、洋画全般やチャップリン、アメリカのコメディやジョーク、(日本の)ドリフターズも大好きだった。

『お父さんの誕生日プレゼントはいつも靴下やTシャツが喜ぶよ』と母に言われプレゼントしていたこともあったが、先日父の部屋を整理してたらカーペンターズとビートルズのCD、ブルースのハーモニカがでてきた。

もう少しCDをプレゼントしてあげてもよかったかな〜


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