らいすた1周年特別号〜Magazine Study vol.13〜

【今号の目次】
1.特別企画 対談「EBMと作業療法②」
2.9月26日のらいすた概要
3.9月26日のらいすたQ&A
4.10月10日のらいすた概要
5.10月10日のらいすたQ&A
6.その他のQ&A
7.今号の研究論文リスト
8.時事ニュース
9.研究アイデアをシェアしちゃいます!
10.私のオススメ本
11.まがすたでしか言えない〇〇
12.近況報告
13.次回のLive Sudy
14.質問送り先案内
15.【1周年ありがとう!】プレゼント企画☆
16.署名

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1.特別企画 対談「EBMと作業療法②」
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1)エビデンスのヒエラルキーの捉え方
寺岡:前回、患者個人の治療効果に関する決定的なエビデンスは1症例RCTだというお話でしたが、エビデンスのヒエラルキーという考え方もだいぶ変遷していっているんですよね。
https://ebm.bmj.com/content/early/2016/06/23/ebmed-2016-110401

京極:そうですね。治療に関する疑問に限っていえば、もっとも単純で広く受け入れられているのは、「事例報告/事例集積→ケースコントロール研究→コホート研究→ランダム化比較試験→システマティックレビュー&メタ分析」という線形モデルです。この場合、方法論でエビデンスの階層が決まっておりまして、基本的には上位に行けば行くほどよいという話になりますが、もちろん最終的にはエビデンスに対する批判的吟味とセットになりますので、たとえメタ分析でも含まれるランダム化比較試験に問題があれば信頼できないことになります。

寺岡:なるほど。上記の論文を読むとわかりますが、より最近の見方はシステマティックレビュー&メタ分析は事例報告/事例集積、ケースコントロール研究、コホート研究、ランダム化比較試験を評価するためのレンズで、事例報告/事例集積、ケースコントロール研究、コホート研究、ランダム化比較試もスパッと階層を形成しているわけではなく、その質によってポジショニングが変わりうることも表現していますね。

京極:非常によく設計されたランダム化比較試験は因果推論に関する精度の高い知見をもたらしてくれますが、実際に批判的吟味するとランダム化比較試験を謳っていてもけっこういい加減なものもあるんですよね。その場合、もし同型のテーマで非常によく設計されたコホート研究があったら、どっちがより確からしい結果だといえるか。これはなかなか難しい問題ですが、場合によってはコホート研究の方が確からしいかもしれないということは起こりえるわけです。

寺岡:なるほど。そう考えると、私たちは「ランダム化比較試験だから素晴らしい!」ではなく、その質を見定めながらそのとき入手できる最良のエビデンスを活用していく必要がありますね。

京極:そうです。しかもエビデンスのヒエラルキーは定式化した疑問の種類によっても変わりますから(Magazine Study vol.12参照)

2.質的研究とエビデンスのヒエラルキー
寺岡:作業療法では質的研究も重要な手法ですよね。これは、エビデンスのヒエラルキーという視点でいくと、どう捉えることができるんですか?

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