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長編小説には無い、短編・掌編・SSの長所と魅力!

皆さん、短編小説掌編SS含む)は「長編小説が書けない人」の書くものだと思ってはいませんよね?

あるいは「短編小説は長編小説に劣っている」なんて考えたりもしていませんよね?

上のように考えるのは、きっとこれまで「素晴らしい短編小説」に出会ったことがない方々なのでしょうが…

どうにも世の中「長編>短編」のように思っている人が多い気がするので、今回はそのあたりを深掘りしていこうと思います。

ここで言う短編小説は、長編の「おまけ」的な短編(SS)ではなく、それ1つだけで独立した短編小説のことです。
(独立した短編か、「おまけ」や「外伝」的な短編かで、難易度が雲泥の差のため。)

短編の方が長編より難しい!

人にもよることなので、ハッキリとは言えないのですが…

少なくとも自分にとっては「短編に比べたら、長編の方がずっとやさしい」ものでした。

芸術は、足し算よりも引き算の方がずっと難しいのです。

皆さん、せっかく考えた設定を「ボリュームが出過ぎてしまうから」と言って、カットすることができますか?

せっかく書いた文章を「尺に合わないから」と言って、数ページ分バッサリ切ることができますか?

ですが、短編は時に「それ」をしなければならないのです。

短編は「短い」からこそ「短編」。ボリュームが増え過ぎてはいけないのです。

なので、常にボリュームを調整していく必要があります

後からカットするのが嫌なら、設定がふくらみ過ぎないよう、文章量が増え過ぎないよう、最初から「抑えて」いかなければなりません。

しかし同時に「物語には必要最低限の説明が必要」です。

その「最低限の説明」だけで、ある程度のボリュームを取られてしまうこともあるのです。

かと言って作品が「説明」ばかりに終始してしまうと、まるで「あらすじ」や「ダイジェスト」のようになってしまい、小説としての魅力が落ちます。

皆さん「予算をこの範囲で抑えてくれ」と言われるのと「予算ならいくらでも、たっぷり使ってもいい」と言われるのと、どちらがラクですか?

「短編」とは、まるでそんな「予算」のごとく、文章量という「制限」が設けられたギチギチの「縛りプレイ」なのです。

■短いがゆえに凝縮された、濃密な物語の結晶!それが短編!

文章量を抑えなければならない短編では、必然的に「なるべく無駄な文章は入れない」ようにしなければなりません。

ダラダラ展開を間延びさせることは許されませんし、描写も「好きなだけ書いていい」ということにはなりません。

そこには、相当にシビアな「取捨選択」が必要とされます。

無駄をとことんまでぎ落とし、物語にとって本当に必要なものだけ描き出す――そんな短編は、長編よりも密度の濃い、要素がギュッと濃縮された物語となり得るのです。

逆に言えば、そんな風に要素の取捨選択で物語を「凝縮」させられない人間には、短編を書くことはできません。

(実際、短編が書きたいのに「気づけば長くなってしまっている」という「長編癖」に苦しんでいる物書きさんは多いかと…。)

構成や取捨選択を考えなくてもダラダラ書ける長編とは違い、より「物書きとしての実力」が試されてしまうのが「短編」なのです。

さらに言えば短編は、余分な描写で濃度が薄まっていない分、テーマもハッキリ分かりやすくなります。

そこでもまた長編と違って「誤魔化しが効かない」のです。

正直、物書きにとっては厄介きわまりない作品スタイルではあるのですが…

執筆が難しい分、物書きとしてのスキルを上げるのにもまた最適なのです。

■気軽に入れる!スキマ時間にも読める!

読者にとっての短編の長所は「気軽に入りやすい」ということです。

数百ページ、数千ページの長編にはなかなか手が出ないという読者も、数ページだけで終わる短編なら「読んでみようか」という気になりますよね?

さらには読書時間も短くて済むため、多忙な現代人でもスキマ時間に読むことができます

読書離れ活字離れが叫ばれて久しいこの時代…

小説というコンテンツに人を呼ぶための「入りやすい入口」は絶対的に必要なものです。

短編スキルを磨いておくことは、物書きの戦略的にも、とても意味のあることなのではないでしょうか?

(過去記事でも触れていますが、実際、商業出版の世界でも「5分後に○○な結末」などの短編オムニバスをよく出していますよね?)

■短編なら、重いテーマも重くなり過ぎない!

自分が実際に短編を書き始めて気づいたことが「短編なら、重めの話でも書きやすい」ということでした。

重い話を大長編で語るのは、書き手にとっても読み手にとっても大変なことです。

読んでいる間中ずっと、その重さに浸り続けなければいけないわけですから…。

そのあまりの重さにげんなりして、途中リタイアする読者も出ることでしょうし…

書く方にとっても、その重さを執筆中ずっと引きずり続けるのは辛いことです。

しかし短編であれば、たとえ重くても、その重さは「一瞬」のこと。

その「重さ」に飽きるor飽きられる前に物語を締めることができます。

逆にその重さが新鮮で「たまになら、この重さを味わってみてもいいかも」と思えるほどです(←これは個人的な感想ですが😅)。

自分などは、このことに気づいて以降「重い話は短編にしようかな」と思っているくらいです。

■短い小説なら「小さなテーマ」も扱える!

実際に短編を書き始めて気づいたもう1つの長所が、「短編なら、ささやかなテーマでも扱える」ということでした。

長編には、設定や物語を「膨らませる」のに足る、ある程度大きなテーマ性が必要です。

しかし短編なら「こんなのが物語になるの?」というくらいの「ささやか」な話題でも小説化できるのです。

たとえば「自分だけ時代に乗り遅れている気がして、なんとなく辛い」ですとか…↓

「地元に帰省するたびに、見知った景色が変わっていって、置いてけぼりの気分になる」ですとか…↓

そんな「下手すると一文だけで終わってしまうような小さなテーマ」でも、短編なら物語にできます。

長編だったら「とても物語として膨らませられそうにない」と諦めてしまうようなテーマでも、短編なら扱えるのです。

ある意味、長編よりもよほど「自由度」が高いですし、実験的な作風を試すのにも向いています

長編では書けないようなものが、短編なら書ける…

短編とは実は、そんな「可能性」に満ちた小説スタイルなのです。




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