私の魔女修行
「助産師は魔女」って言われているんだよ。
誰から聴いたのだろうか。
その記憶はあいまいだけど、この仕事に就いてしばらく経った頃だった。
「助産師は魔女」まさにそうだと思ったものだ。
ベテランの助産師が、お産中の女性に寄り添い、時にその進行がゆるやかになれば休息を促したり、カラダを温めたり動かしたりと、繰りだす匠の技から導くお産はまるで魔法のように映った。
分娩介助(赤ちゃんをとりあげる技)なんて、まるで古いフランス映画をみているように鮮やかで美しく、スマートだったから。
分娩台の出産という無機質な場であろうとも一瞬にして変えてしまう。そんな魔法を自由自在繰りだせるベテラン助産師は、私にとって「魔女」そのものだった。
お産の感じ方は人それぞれではあるけれど、「痛い」「怖い」「苦しい」というイメージが世間一般にあるので、痛いところに手が届く寄り添いの達人である助産師は、産婦さんからみても「魔女」なのだと思ったりする。
そんなイメージから「助産師は魔女」だと言われているのだと思っていたのだけれど、そうではない悲しい歴史がそこにはあった。
中世ヨーロッパで実際にあった魔女狩りだ。
医療が未発達だった当時の病気治療といえば、ハーブやまじない、祈りや占星術でヒーラーが行っていた。(時代に多少のズレはあるが、日本も薬草や呪術による治療がおこなわれており、陰陽師などがヒーラーにあたる)
ヒーラーは主に女性で、お産を担うこともあったそう。いかにも怪しげなまじないや占星術、ハーブを操るヒーラーは「魔女」として格好のスケープゴードになってしまったのだろう。
そんな時代にこの仕事をしていなくてよかった。いや、もしかしたらそんな前世があって、カルマの解消のために助産師になったのかもしれない。
ならばとことん魔女になろう。なってみせよう。
私の魔女修行は一生続くのだから。
パラレルキャリアをもつフリーランス助産師です。歩くパワースポットと呼ばれるくらい幸運体質な私が、妊娠/出産/子育て/女性の健康/の情報発信と日々のくらしのよしなごとをエッセイでつづっています。サポートしていただけたら最高にうれしいです!