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愛してやまない珈琲店は私のナルニア国なのか

ドリップコーヒーを飲む家庭で育たなかった私。母が飲む「違いがわかる系のインスタントコーヒー」が私が知るコーヒーだった。


遠い記憶をたどってみると、オトナ気分で飲んだのは確か小学生。高学年だったのではなかろうか。

「夜飲むと眠れなくなるよ」や「飲みすぎないようにね」と言われたけれど、オトナ気分の私にはそんなのどうでもいい。背伸びして飲むコーヒーは、ミルクなしの砂糖たっぷりだった。

ふと、

ドリップコーヒーをはじめて飲んだのはいつだったのだろう?

そう思い、またもや記憶をたどってみても全く思い出せない自分がいるのだけれど、きっと会社員になってからではないかという結論に達した。


会社員時代はまさにバブル。会社の先輩方に、たくさんのおいしいものをご馳走になった。なりまくった。そんな時代。


外食の後の喫茶店でのコーヒーはお約束。多分、それがきっかけでドリップコーヒーを飲むようになったのだろう。


今は手軽に行けるカフェが街中にあふれているけれど、バブルの頃はスタバのようなカフェはなく、お手軽コーヒーはドトールくらいで珈琲は喫茶店が主流だった。

ちょっとオトナな珈琲専門店が、私のコーヒー好きに拍車をかけていったのは間違いないだろう。


20代前半、勤務地が厚木市だった私。

当時、本厚木駅の線路下的な路地に、小さな珈琲専門店があった。その珈琲店は扉を開けると、珈琲の香りが迎えてくれる。美しいカップ&ソーサーが所狭しと棚いっぱいに並んでいる異空間だった。

店主が客のイメージでカップ&ソーサーを選び、ココロを込めて淹れてくれる珈琲が格別だった。

プチ残業で帰れた時や、ちょっと疲れた時、ひとりになりたい時の私の隠れ家はここだった。


その後、本厚木に3店舗、町田に1店舗と珈琲店は増えたのだけど、勤務地が銀座へ異動となったことで、出張帰りでなければ寄れない隠れ家になってしまった。


銀座では老舗珈琲店を巡り、隠れ家を探したけれど、残念ながら私のココロを癒すような空間・場所は、本厚木の珈琲店を超えられなかった。


会社を退職してしばらくしても、時折あの珈琲店へ行きたい病におそわれる。決まってココロが疲れている時に、だ。


そんな時は、本厚木より近い町田店を利用していたが、そうこうしているうちに、ふと気付いたら大好きだった本厚木の小さな店舗がなくなっていた。


看護師、助産師になってからも、つらいことがあった時、悲しいことがあった時の私の癒し処で、必ずおひとり様で足を運んだ珈琲店。

そんな珈琲店も時代とともに変わっていったのだろう。今は本厚木の1店舗だけになった。もうあの珈琲が飲めるのはその店舗だけだ。


あの空間は二度と戻らないけれど、珈琲の香りと味が今も当時の空間へと導いてくれ、ココロとカラダを癒し続けてくれている。


私の愛してやまないパワースポットで媚薬。


珈琲とともに時空を超える空間は、もしかしたら私のナルニア国なのかもしれない。



この1年、全くカフェや珈琲店に行っていない。こんなにカフェやランチを我慢できるとは思わなかった。

だけどもう限界だ。


この記事を書いていて、珈琲店の珈琲が飲みたくて飲みたくて、ウズウズしてしまっている自分がいる。


そんな自分に折り合いをつけようと、ドリップコーヒーを淹れ、香りと味に癒されながらこの記事を書いている。

もう2杯目だ。



#私のコーヒー時間

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私のコーヒー時間

パラレルキャリアをもつフリーランス助産師です。歩くパワースポットと呼ばれるくらい幸運体質な私が、妊娠/出産/子育て/女性の健康/の情報発信と日々のくらしのよしなごとをエッセイでつづっています。サポートしていただけたら最高にうれしいです!