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わたしと霊性|第6話 ヤンキー VS 幽霊

今回は「自分には霊感などない」「目に見えない世界なんて信じられない」という世界線で生きていた人たちが、一瞬で「目に見えない世界は在る」という世界線に転じた実体験の話を綴らせて頂きます。

これは僕が丁度20歳頃の出来事です。


「トワは霊感があって幽霊が見えるらしい」という謎の噂が、突如として地元の仲間内を駆け巡ります。そしてある日の深夜、一台の車が僕の実家へと襲来します。

「トワ、乗れ!行くぞ!」と、中学時代からの付き合いのヤンチャな仲間たちに拉致されて、僕は地元で有名な「心霊スポット」へと、半ば無理矢理に向かわされたのでした。

草木も眠る丑三つ時、軽快なヒップホップが田舎の漆黒の闇を切り裂きながら、やがて目的地の心霊スポットへと到着。

「トワ、どうだ?幽霊はいるか?」

と、仲間たちはニヤニヤ笑いながら完全にふざけきっている。

僕は基本的に心霊スポットなんて行かないし、行きたくないし、好きではない。それまで幽霊なんか見えたことはなかったけれど、そんな場所に行ってしまったら、きっと自分には見えてしまうのだろうという確信にも似た懸念だけが不思議とありました。

仲間の悪ふざけが、今日は一段と過ぎるなあと思いながらも、とりあえず辺りの様子を見渡してみる。

「どうだ?いるか?」

と、仲間の半笑い声と共に、車はさらに奥へ奥へ、より深い闇へと吸い込まれて行く。

そしてそれは、闇の中に薄っすらと白い小屋のような建物が浮かび上がってきて、すぐのことだった。


「あ、小屋の裏側に女の人がいる」


僕がその言葉を発した瞬間、
自分達がいる空間の中で、明らかに「プツンッ」と、何かの糸が切れたような感覚があった。

そしてそれと同時に、車内の空気が鉛の様に一気に重苦しくなり、視界のトーンが明らかにワントーン暗くなったように感じた。

「ウッ!…」
「オエエッ!…」

そしてもれなく全員が強烈な寒気と頭痛と吐き気に襲われて、もうそこに先程までヘラヘラと笑っていた集団の姿はなかった。

全員が未だかつて味わったことのない異次元の恐怖に包まれて、生まれたばかりの小動物のように震えていた。

「早く車出せっ!!!」
「早くここから出るぞっ!!!」

と、車は急旋回して、僕らは一目散にその場を後にしたのだった。

やがて近くの広い駐車場に着くや否や、一行は雪崩れのような勢いで車から脱出。そのまま全員腰が抜けた様に地面にへたり込んでしまった。

「うわー…マジか…」

「確実に、いたよな…」

「あれは、マジだったな…」

実際に観たのは僕だけだったはずなのに、僕が観たもの・感覚が、一瞬でその場にいた全員に電気信号の様なエネルギーとなって伝わったのでした。

それは普段「自分には霊感などない」「目に見えない世界なんて信じられない」と思っていた面々が、目には見えないけれど確かに存在する世界、存在に触れた瞬間でした。


当たり前だと思っている世界のすぐそばに、当たり前でない別の世界がある。


実際に体験すること以上の学びなどなくて、僕らがそれ以後心霊スポットを訪れることは二度とありませんでした。

それはあまりにもバチ当たりで馬鹿げた遊びがきっかけだったけれど、あの出来事はきっとみんなのその後の人生感を一変させたと思います。

自分たちが生きているこの世界の、命というものに秘められた秘密に触れてしまった様な、そんな20歳の出来事でした。


最後に、興味本位で心霊スポットと呼ばれる様な場所に近付いたり、畏敬の気持ちも持たずに霊的な力の強い場所を訪れるのはやめた方がいいと思います。

よく恐怖の対象にされてしまう「霊」も、もともとは生きていた人なので、必要以上に恐れることはないと思いますが、失礼なことをされたら嫌な気持ちになるのは当然だと思うので、何に対してもですが、マナーは大事にしたいですね。


つづく



「岸和田少年愚連隊カオルちゃん最強伝説 妖怪地獄」

丁度この出来事があった頃、ヤンチャな面々に薦められて一緒に観たこの映画。

竹内力さん演じる最強の番長「カオルちゃん」が、岸和田最強の名にかけて妖怪たちとの死闘を繰り広げます。

「妖怪をしばく」「河童をいてこましたる」という尋常じゃない世界観。

そこにはマナーも畏敬の念もへったくれもありませんが、全てのことがどうでも良く思えてくるぐらいバカバカしくて、当時みんなで息が出来なくなるぐらい笑ったのがいい思い出です。笑

笑うって本当に大事です。

こういう色の映画は普段見ないんだよなぁ・・・
という人にほど、食わず嫌いせずに観て大笑いして頂きたい傑作です。


◆「わたしと霊性」第1話はこちらから


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