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アメリカでレイオフされました

最近シリコンバレーでレイオフ(解雇)が相次いでいたり、外資系の会社の日本でのオペレーションでもレイオフがあったりで、レイオフについて見聞きする機会が日本でも増えたのではないでしょうか。労基法や組合で雇用がガッチリ守られている日本やヨーロッパに比べたら、確かにアメリカでのレイオフは多いと思います。私も今までに何度も同僚達がレイオフされるのを見てきましたし、実は私も去年レイオフされました。しかし私の経験からアメリカのレイオフは日本で考えられているイメージとは少し違うかもしれないと思います。

日本での解雇というとかなり深刻な状況をイメージすると思います。もちろんアメリカでも解雇された人達は殆どの場合動揺しますし、解雇されなかった人もかなり精神的に影響を受けます。私も初めて同僚達がレイオフされる様子を見た時にはショックを受けて、1年くらい仕事をしなくても生活できるだけの緊急資金を真剣に貯め始めました。しかし20年以上アメリカで仕事をして何度もレイオフの光景を目にしたりレイオフのプロセスに関わったりすることで、レイオフの悪い面だけではなく違った側面も見えてくるようになりました。そしてレイオフには悪い面だけでなく良い面もあり、人材の流動性を活性化するには有効な手段であるとも思ようになりました。

まずアメリカでのレイオフは会社都合によるものなので、一般的に解雇された人に問題があったという見方はされません。個人のパフォーマンスが良くても会社が特定の事業から撤退するとなるとその部署ごとなくなります。なのでレイオフされた人イコール雇う価値のない人とは思われません。逆に求められるスキルや経験のある人にはここぞとばかりにスカウトが来ます。ある時サンフランシスコにオフィスがあるゲーム関連の会社が業績不振のために大量にエンジニアを解雇したのですが、オフィスの前に「仕事が必要ならここに電話してください」という他の会社の求人広告があったという記事をネットで見たことがあります。実際に私の会社で解雇されていった同僚達も無事に新しい仕事を次々に見つけていきました。人材の流動性が高いアメリカの労働市場では新しい仕事を見つけるのも比較的容易です。

そして会社の規定にもよりますが、レイオフの際には次の仕事を見つけるまでの期間生活していけるように一時金が支払われる場合が殆どです。私の友達はレイオフされて一時金が出たので「やった!ボーナス!」と言って、嬉々としてバケーションに出かけていました。またレイオフがあることは会社の業績や経営方針の変更などによって事前に従業員の間で噂になることがあり、人によっては転職活動を既に始めている人もいます。私の同僚は他社に転職が決まって辞職することを伝えようと考えていた日にレイオフが発表されたので、レイオフの一時金が丸儲けになった人もいます。彼はレイオフされた一週間後には転職先で働き始めました。

さて、去年私もレイオフされたのですが、私は社歴が長かったこともあり以下のようなレイオフのパッケージでした。

一時金:半年分のお給料
健康保険:半年分の健康保険は会社持ち
次の仕事を見つけるための転職サポートサービス(メンターがついたりLinkedInの有料のトレーニングが受け放題だったり)

そして失業保険を申請でき、毎週450ドルが無職である限り働いていた州から半年間支給されました。(金額は期間は州によって違うかもしれません。私はカリフォルニア州からの支給でした。)

これらのお金やサービスは自己都合で辞めると受けることができないので、中にはレイオフされるのを心待ちにしている同僚もいましたし、実は私もレイオフを告げられた時は心の中でガッツポーズをしていました。

私がレイオフには良い面があると言った理由は、スキルや経験のある人材が定期的に必要とされる会社に流れていくことです。私の場合レイオフされなかったら今も前職にそのまま居着いていたと思います。10年以上続けていた仕事で正直自分自身の成長が感じられなくなっていましたが、コロナ禍もあり居心地の良さに甘えていたかもしれません。しかしレイオフされたことにより、自分の将来を真剣に考える機会を得てこれからのキャリアについても考察することができました。幸いなことに次の仕事のオファーもいただけ、新しいことを学べる環境に再び足を踏み入れることになり、与えられたチャンスに感謝しています。

レイオフについて楽天的なことを書きましたが、こんな気楽なことを言えるのはある程度の蓄え、そして次の仕事を見つけられるだけのネットワークとスキルがあったからだということは付け加えておきたいと思います。やはりパフォーマンスがあまり良くなかった同僚は次の仕事を見つけるのに苦労していましたので、何かあった時のための蓄財は必要だと心から思います。

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