ポテサラと大久保佳代子
男の人ってみんなポテトサラダが好きよね。
テレビの向こうで大久保さんは答えた。その番組ではMCの男性芸人が女性芸能人の自宅に行き、料理を振る舞ってもらうという企画が行われていた。
他のタレントも自慢の料理を振る舞い番組は大いに盛り上がったのだが、僕はこのセリフがやたらと胸に響いた。
男の人ってポテトサラダが好きなのか、そういや僕もポテトサラダが好きかもしれない、と思い始めたのだ。
不思議なもので今まで特に興味のなかったポテサラなのに、大久保さんのこの魔法のような一言によって、僕はポテサラが好きであることを自覚し始めたのだ。
言われてみれば人間誰しもそういう節はあるかもしれない。客観的に指摘されたことで納得したり、半ば強制的に推し進められたことの方が頑張れることもある。
あなたがもし、「お前は今日から売れっ子美人モデルだ!」と言われればまるで売れっ子美人モデルになったかのような立ち居振る舞いをするかもしれない。
誰かからの一種の暗示や暴君ぶりで能力を発揮するということは珍しくない。
僕はそんなこんなで大久保さんの何気ない発言を金言と捉えたことにより、ポテサラが好きな料理にランクインした。それからというもの居酒屋に行けば必ずポテサラを頼むようになった。
ポテサラと一言にいえどそのバリエーションは豊富だ。
きゅうりや人参が入っているものもあれば、明太子やマスタードが入っているものもある。
その中でも僕好みのポテサラは、京都の四条通ににあるニューシンマチという居酒屋で食べたポテサラだ。
他県のためなかなか出向く機会がなく、一度しか入ったことのない居酒屋だがそこで食べたポテサラがなんとも僕好みだった。
ごろごろのじゃがいもにウスターソースがかかっているポテトサラダ。シンプルながらにハートを鷲掴みにするそんなニューシンマチのポテトサラダが僕は好きだ。
ポイントはこのウスターソースをかけるところにある。
今までウスターソースが特別好きという訳でもなかったけれど、最近になってやたらとウスターソースが気になるのは多分祖父の影響だと思う。
祖父が生前、食事の際にウスターソースをかけていたことが印象深い。なんでもかんでもウスターソースをかけていたわけじゃないが、いつも食卓の向かいに座る祖父の食事を何気なく見ていた気がする。祖父が亡くなった今、なんとなく祖父のことを考える時間が多くなり、知らずのうちにウスターソースをかける情景も思い起こしたのだろう。
なんでもない一言や、何気ない情景が胸に残ることもそう珍しくない。
ポテサラ然り、ウスターソース然り。
近頃は料理に目覚めつつあるので、近々自分好みのポテサラを作ってやろうかなと思っている。
男の人ってポテトサラダが好きよね。
いつかのそんな言葉が聞こえてきそうな気がした。
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