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最低なのは僕だった。

僕には好きな人がいる。
ただ、僕は好きだけどその人は僕のことを好きではないみたいだった。

けど諦められず、僕はその子を好きなままだった。


めげずに何度もデートに誘って告白をしては振られる日々だった。


ただ、そんな僕を好きでいてくれる別の子がいた。


そうだな。
僕が好きな子をA子として、
僕を好きな子をB子としよう。


僕はA子のことが好きで好きでたまらなかった。
ただ、A子は僕のことなんか見てくれなくて、遊んでいるときだってスマホばっかり触っているし「どう思う?」って聞いても上の空だった。
僕の見た目や態度の変化にも気づかない。
でも、彼女が僕に見せる嬉しそうな顔や楽しそうな顔、彼女の仕草や匂いや声も全て愛おしいと思った。

そのくらい好きだ。


でも、A子と付き合うことはおそらくないんだと思う。

だから僕を好きでいてくれるB子に僕は甘えていたんだと思う。


B子は僕と会えば「かっこいい~!」と言って僕の写真ばっかり撮るし、
待ち合わせの時に僕と目が合った瞬間、笑顔になって僕の方に向かって小走りでやってくるし、
時折甘えた声でくっついてくるし、
一緒に遊んでいるときだって僕のことを見てくれる。

そして、僕に「好きだから付き合ってほしい」と言っては僕ははぐらかす。




僕は完全にB子をA子が離れていった時の保険にしていた。
ドクズだと自分でも思った。

だから、A子のことをB子には隠した。

B子に好きと言われながら、僕はA子に好きと言い続けた。


そして僕はB子を都合よく扱った。


酔った勢いで電話したり、
寂しい夜に会いに行ったり、


我ながら最低だと思った。
でも、やめられなかった。
A子は相変わらず振り向いてくれなかったし、B子はずっと僕のことを好きでいてくれた。

ただ、「好き」と言ってくれるB子への返事をはぐらかしている僕の態度にイラつき悲しんでいるようだった。


そうしている間にA子に好きな人ができて、僕は諦めざるを得ない状況になった。
泣いて、苦しくて、もはやA子に腹が立った。

そして、A子という好きな人を失った僕は、
クズでどうしようもない僕はB子に近寄った。




「次会ったらB子に告白しよう。」

僕は思い返せばずっと好きでいてくれて僕のことを考えてくれていたB子と一緒にいたいと思った。


いつもの駅の改札前でB子と待ち合わせをして
B子は僕を見つけるなり犬のように小走りで僕の方へ向かってくる。

事前にLINEでやりとりをして行くと決めていたケーキを食べに向かった。


落ち着いた雰囲気で静かな空間のカフェに着き、
苺が載ったケーキの写真を記念に撮って、食べ始める。

『今日は全然スマホ触らないの珍しいね。』

B子が言う。

「そんないつも触ってたっけ?」

『触ってたよ。だから珍しいなって。』

静かな空間が余計に返事をしづらくさせて、僕は話をそらした。




僕はいつ気持ちを伝えるかで頭がいっぱいだった。
A子には「好き好き」と言えていたのに、B子に言うとなった途端
急にどうすればいいのか分からなくなってしまう。


僕はB子に「少し話したいことがある」と言った。
するとB子は『そっか。私も今日話したいことがあったんだ。』と言い、僕らは少し歩き始めた。


B子から話したいことがあると言われ、僕は何を言われるのか不安で話し出せずにいた。
『あのね。さっき話したいことがあるって言ったでしょ。』とB子が話し始める。

『私ね、もうそろそろしんどいなって思い始めちゃった。』
『好きだけど、いつまで待てばいいか分かんないし。』
『多分だけど、私じゃなくても良いんでしょ…?好きって言ってもはぐらかされて、疲れちゃった。」
『だから、今日で終わりにしたいんだ。』


僕はすぐに返事が出来なかった。
B子から別れを、終わりを切り出されると思っていなかったから。

状況を理解するのに少し時間が必要だった。


そして出た言葉は「ごめん」だった。
続けて僕は
「遅いかもしないけど、俺やっとB子の大切さに気付けたんだよ。」
「一緒にいて本当に大事にされてるなって、好きでいてくれてるんだろうなって思ったし、あんなに写真撮ってくれて俺のわがままに付き合ってくれて、いっぱい会ってくれて…」

『あのさ、もう私最近は写真撮ったりしてないよ。』

『それに、明らかに前と今じゃ私態度全然違うよLINE見返して。』

『前から思ってたけど、私と会ってるときスマホばっかり触ってるしさ、私と話してても適当な返事しかしないじゃん。』
『髪型変えても、ネイル変えても、一緒にテレビ見て可愛いって言ってた全然系統が違う服を着ても全然気づかないし何も言ってくれないじゃん。』

『ねえ、どこまで都合が良いの…?そういうところがほんとに私嫌だった。』

『本当に好きだったし、彼女になれたら幸せだなって本気で思ってたよ。』
『でもあなたの中に私はずっといなかったね。都合が良いだけだったね。』

『今日はもう帰るね。』


僕は何も言えなかった。
そして彼女を追いかけることもできなかった。


ふと、A子の顔が思い浮かんだ。
自分がされていたことをそのままB子にしてしまっていた。

A子に腹が立って、最低だと思っていたけど、
本当に最低だったのは僕だった。




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