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【毎週ショートショートnote】親切な暗殺

なぜ、ここにいる?
いつか出会うことにはなっていただろう。
しかし、その”いつか”が今日とは早すぎる。

集中しろ、俺。
視界にしっかりと”ヤツ”を捉える。
”ヤツ”が俺に気づいているのかはわからない。
…が、出会ってしまったが最後。

今ここで殺すしかない。

あたりを見渡し使えそうな道具を探す。

心配するな、なるべく楽に殺してやる。
もちろん、彼女にも気づかせない。
”ヤツ”にとっても彼女にとっても、さながら親切な暗殺といったところか。

息を整え、近くにあった新聞紙の束を手に取る。
…今だ!
丸めて棒状にした新聞紙を勢いよく振りかざした。

「今なんか叩いた?」
キッチンから顔を覗かし、彼女は聞いた。

俺は答える。
「いや、何も叩いてないよ。気のせいじゃない?」
気づかれていない。

今日から始まる彼女との新居での同棲生活。
虫嫌いの彼女を引っ越し早々落ち込ませるわけにはいかない。
永遠の眠りについた”ゴキブリ”を後ろに隠し、胸を撫で下ろす。
暗殺完了ミッションコンプリート

(408字 ※ルビ含まず)

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