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春の島旅振り返り…4

その3の続き。ようやく今回のメインの目的地である豊島に到着。そもそも今回島旅に出ようと思ったのは、去年母と行った岡山からの犬島→豊島ツアーで豊島は若干消化不良だったから、なのでした。

実は去年も帰りの船までに多少時間の余裕はあって、行こうと思えばボルタンスキーの「心臓音のアーカイブ」まで行けたんですが、コンセプトを話したら母が「なんかちょっと気持ち悪いからいいわ」と言うので観に行かなかったんです。

その後、庭園美術館でやったボルタンスキー展で「ささやきの森」の再現展示とかを見て「くそうーこれはやっぱり本物を見なければならぬ…豊島美術館ももっと長い時間いたいし…」と思ったので、島行きを決めました。前回の反省から、今回はひとり旅で。

人と旅行するのは好きだけど、美術館に関しては、興味ある作品には時間かけたいし一通り見終わったら好きだったもののところに戻りたいしとかの癖があるので、このペースでもほっといてくれる人か別に疲れないという人とじゃないと、お互いストレス溜まっちゃうから一緒に行けないんですよね。黙ってたいみてたい時もあるし。

というわけで、家浦港に着いて「豊島鮮魚」で中国から来たという留学生の女の子(この旅が終わったら中国に帰るんだそう。卒業旅行みたいなものですね。日本語もだいぶできて英語はペラペラだった)と相席で唐揚げ定食食べて、腹ごしらえをしてから、すぐにバスに乗って島の反対側の唐櫃港に向かいました。

心臓音のアーカイブは唐櫃港から歩いて15分ぐらいでしょうか。アップダウンはなく自転車でもラク。

この鳥居のあたりでちょうど道の半分ぐらい。

この道を曲がると静かな渚に着きます。波音が綺麗で、何かの効果音用でしょうか、大きなマイクで波音の録音してるテレビのクルーっぽい人たちがいました。

ちょっと夕方になって曇ってきちゃったのですが。

これが心臓音のアーカイブの建物。建物も内装もボルタンスキーのデザインで、受付の高さまでボルタンスキーが決めているのだとか。

内部は撮影できませんが、心臓音が聴ける小部屋はこんな感じになっています。世界じゅうで録音された誰かの心臓音にあわせて電球が点滅して、部屋の内装が浮かんだり消えたりします。

庭園美術館でやってた再現展示では、電球は赤で、もう少し生々しいというか、おどろおどろしい雰囲気もあったのですが、このアーカイブの部屋は、もっとニュートラルな雰囲気だった。音はすごくボリュームをあげてあるので、バチバチと点滅する灯とあわせて身体に刺さるみたいに響いてくる。初めての人は、同じ人間の鼓動なのに、こんなにいろんな音がするんだ、と驚くと思う。

このアーカイブの小部屋では基本的に世界中の登録者たちの心臓音がランダムに流れていますが、海を望むライブラリーでは、パソコンで録音地や時期、録音者の名前などを検索して絞り込んで、特定の心臓音を聞くこともできます。

希望する人は、1500円くらいで自分の心臓音を録音して作品に参加することもできます。心臓音は半永久的に保存されるため、ここにくればいつでも聞くことができる。たとえば、亡くなった人の心臓音を聞きにくることも可能。登録すると、自分の心臓音のCDももらえます。こんなケースに入れて。

心臓病の手術前に録音にきたという人や、毎年一回、定点観測みたいにして自分の心臓音を録音にくる人もいるんだそう。

録音は小さなラボに入ってパソコンのガイダンスに従って自分1人でやります。マイクは肌に直接つけるので厚着の季節には大変かも。必須ではありませんが、短いメッセージつきで録音できるので、いつか自分の心臓の音を探しにきてくれた人への手紙も残せたりもします。

生きてる間に大切だった人にこういう形でメッセージが残せたら、別にお墓とか要らないなぁとちょっと思った。この静かな渚がものすごくよくて。大切だった人には、めんどくさいお墓の草むしりとか掃除やってもらうより、砂浜散歩して海や空でも眺めてのんびりして欲しいじゃないですか。

これは翌日、もう一度行ったときの写真なんですけど、いいでしょ。このなんにもない感じが。

そんなわけで、去年のリベンジを果たした心臓音のアーカイブ、とても良かったです。夕方の豊島は空いていて、受付のお姉さんといろいろお喋りできたし、翌日予定していた「ささやきの森」へのアタックルートも比較的なだらかな道を教えてもらえました。こういうのは地図みてもわかんないですからね。

ゆっくり浜辺も歩いて、帰りにちょっと途中の分かれ道の先にある神社にも登ってみました。

こんなとこ。

町指定天然記念物らしい。

曇天にオレンジの屋根が映える。

さて、寄り道しながらのんびりと港に帰ってきたら、ちょうど乗って帰ろうかなと思ってたバスが出発しちゃってました。まだもう一台バスはあったけど、1時間ぐらい待たなきゃならないし、少し外の空気も冷たくなってきたしで、近くの雑貨屋さん兼たこ焼きやさんに入って、たこ焼き食べながらお店のおばあちゃんとお話してました。

だいたいここらの人はツケで買い物するんだけど、タバコはさすがに高いからタバコは現金って貼り紙を出そうか迷ってるみたいな話だとか。タコの水揚げが少なくてちょっと材料が足りないだとか、昨日まで養殖ノリの収穫の時期だったこととか。他愛のないおしゃべりをしてるうちに、息子さんが私と同い年だと判明したり、あったまらせてもらいながら15分ほど。

にしてもずーっとこの店にいるわけにも行かないよなぁと考えながら、家浦港に乗り捨てできる自転車借りて、海沿い走って帰ればいいんじゃないか、とふと思いつき、今から自転車借りられるとこないですかねぇ(←その段階で4時を少し過ぎていていて、島のレンタル自転車はたいてい5時には返却なので、無理のある話ではあるのですが)と聞いてみたら、すぐ脇にレンタサイクルの店があるから聞いてごらんと言われて行ってみることに。

数件隣にあったレンタサイクル店はもう看板を下げるとこだったんですが、ダメもとでかくかくしかじかと事情を話して、バスを待つより自転車のほうが早そうなんで今から借りられませんか、5時には家浦で返却しますので、とお願いしてみたところ、店の方が「今からうちの弟が家浦乗り捨ての自転車を引き取りに車で行くから、その車に乗っていったらいいわよ」と言ってくださって、トラックで島の反対側の港まで送っていただいたんです…!

走ってる途中にもバスに乗りそびれた風情の人を拾って荷台に乗せてあげたしりて、結局私の他にも二人、このTさんのトラックで家浦まで送ってもらっちゃいました。港で預けた荷物のピックアップの時間とかもあったので、本当に有り難かったです。

実はこのTさんとの出会いには続きがあるのですが、それはまたの機会に。

そんなわけで、この日の宿は港から徒歩五分ぐらいのたかまつ屋さんです。

ようやくのチェックイン。

まだまだ続くよ。このペースだとあと3回ぐらいかな…

#旅行 #瀬戸内海 #豊島 #島旅 #201703 #心臓音のアーカイブ #ボルタンスキー #アート

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