見出し画像

より良いキャリアを築く「働く場」の選択(1)~どんな時代に「仕事に就く」のか~

これまで8回にわたり、SE・IT系コンサルタントに求められる「資質、性格、振る舞い」などの行動様式について、「人(日本人)の本質を理解する重要性」という視点で紹介してきました。
今回からは、IT業界だけではなく「ITを使った仕事」に就きたいと考えている方々向けに、どのような「働く場(世界)」があるのかということを紹介していきたいと思います。これから、職業や企業を選択する上での幅を広げるきっかけや、面接時や説明会時などでその企業の位置づけや経営の在り方などを確認し、自身の思いと齟齬をきたさないための判断材料としてもらえればと考えています。

本記事で扱う業種、業界分類や企業分類、職種分類、採用分類などについては、私自身の経験、思い込みからくる認識分類となっていますので、実際の就活時には改めて確認をして下さい。また、この記事では「企業、会社」に就職するという観点での紹介とし、「起業」という観点は除外しています。

第1回は、皆さんが「どのような時代」に仕事に就こうとしているのか、就活をする際に意識して欲しい「時代背景」ということについて、紹介することから始めたいと思います。


1.「働く場」の時代背景

■参入障壁が限りなく低くなった

私が入社した1975年頃といえば、IT業界はハードウェア、それを動かすオペレーションシステム(OS)やミドルウェアと呼ばれるファイル制御システム、ネットワーク、セキュリティ、データベースなどの基本ソフトウェアの提供に加え、アプリケーション開発も、コンピュータメーカーが一手に引き受けていた時代でした。
しかし1990年代後半頃からハードウェアのオープン化(汎用サーバー、パソコンの登場)、オープン化されたOS、ソフトウエアの登場による「分散コンピューティング時代」が急速に進展し、コンピュータメーカー主導の独自ホストコンピュータ中心時代は、今や終焉を迎えていると言っても過言ではないでしょう。特に、クラウドサービス企業の登場や、ファブレス企業  *1 は、それに拍車をかけています。誰でもその気になれば、独自のハードウェア開発、独自のソフトウェア開発が可能であり、誰でも参入できる環境ができたことを意味しています。コンピュータ業界を一例に紹介しましたが、この現象は、他の業界、業種においても共通していると言えます。
これからの参入障壁の高低は、「物理的なモノ(すぐ追いつける)」ではなく、「斬新なアイデア(特許)・ビジネスモデル」をいち早く創造し具現化できるかで決まると考えています。つまり「人」の発想力がモノを言う時代であり、大企業なら安心、中小企業だから不安、という規模で選択する時代も、この業界だから安心という時代も終焉を迎えているのかもしれません。

■消費者が個人メディアを持った

多様化したSNSの進展により、これまで「井戸端会議」で留まっていた「個人レベルの噂話」を、いきなり日本規模での「噂」に拡大させることを可能にしました。更に英語(他言語)が出来れば、地球規模に拡大できます。もはや単なる情報発信ツールではなく、「個人がメディア」を手に入れた時代だと考えています。インフルエンサーというカリスマ的個人も出現し、その影響力は大きなものになっています。
インターネット技術は、単なる通信やデータ交換の業務効率化のための「手段」としての領域を超え、リアルビジネスと同等の「ビジネスチャネル」として既に成長したことは言うまでもありません。特に「手に持ち、四六時中触れている」スマホ利用形態の定着は、マーケティングの世界に大きな変革をもたらしています。それは一つ対応を間違えると、個人レベルで留まらない「大炎上」を引き起こす要因になってしまうことは、ご承知の通りです。
しかし、まだまだ「個人のメディア」を手に入れたとの自覚は薄く、「事実確認」ということを疎かにする傾向があることも事実です。よって、個人レベルでも「事実であるかということに対しての責任」の意識醸成を、また企業は個人がメディアを手に入れているという認識のもとでのビジネス活用が求められる時代であると考えています。

■センシング技術・メディア技術が進化している

ネットワーク(WEB)の世界では、「アクセスログ」という形でその「一挙手一投足」をフォロー(捕捉)することが可能になっています。それが、今や「リアルの世界」でも同じように可能になってきています。
スマホやGPSによる位置特定情報、交通系無線ICカードやBluetoothなどのNFC(Near Field Communication)技術の確立に加え、画像解析(顔認証、歩行認証、挙動解析等)、AR(Augmented Reality (拡張現実))技術に代表されるデジタルとリアル世界の融合技術などの進展は、リアルの世界での行動(履歴)把握を可能にしています。
これから世に出る機器のほとんど(家電、自動車、家のキー、音響機器、照明等々)が、ネットワークに繋がる機器として登場することになることが想定されており、所謂「ビッグデータ」としての蓄積、活用が一般的になっていくでしょう。既にこの技術は、全ての産業分野での(一次産業から三次産業まで)利活用が進んでいます。
もちろん、個人の「プライバシー保護」を前提とした活用が必須ですが、リアルの世界でも、ネットワークの世界に近い事象、行動把握が可能になっていくということです。

■知的コンピューティング時代が到来している

2029年、2030年、2045年という年度が話題になっています。特に、2045年には「Singularity(技術特異点) *2」ということが予測されています。2029年、AIは人間と同レベルに、2030年にはスマホ並みにAIが浸透、2045年には人間の理解力を超えるという予測です。
これまでに掲げた「ビジネスや経営環境、技術、情報の利活用分野」をさらに有効に展開、発展させる技術として、今「AI」に代表される「知的コンピューティング」技術が確立されようとしています。

2.意識しておきたいこと

就活において意識しておきたい観点として、以下の3点を紹介しておきたいと思います。

■AI 、ロボットとの「共存(分担)と競合・競争」

2030年、2045年という年は、現在新入社員の方々が中堅になり、会社の中核(幹部社員)として活躍している年代です。つまり、知的コンピューティングが当たり前という時代に、「仕事」をしていることになります。
間違いなく、人間と「AIとロボット」との共存は当たり前、場合によっては「競合、競争」関係になるという前提で、これからあなたが選択する仕事が今どうか、今後どうなりそうなのかを考えることが必要となっています。

■高齢者(既存領域熟練者)との競争

既に、定年延長という動きには拍車がかかり、意欲、気力、体が動く限り「働き続けられる」環境が作られようとしています。少子化対策という労働者不足への対応側面に加え、戦力維持の必要性拡大(即戦力・ビジネススピード感の確保、育成のための余裕低下など)といった経営ニーズからも避けられない事態です。
採用活動においても、これまでの様に「入社して、先輩の背中を見ながら仕事を覚え、頑張ります」という前提での採用は減少していくと考えます。「継承してくれる人材か」ということよりも、「新たなビジネスモデルを生み出せる可能性が高い人材か」が判断要素の大きな部分になるでしょう。
ただ、それは高齢者(既存熟練者)との差別化にもなり得ることですので、
今後の採用活動においては「自身の考え方、思い(意思)」を、今まで以上にはっきり語れることが肝要になると考えています。

■「アイディア次第で誰でも起業できる」という認識

時代背景の項でも紹介しましたが、今や「具体的なアイディアとビジネスモデル」が生み出せる人は、誰でも「起業」できる環境が整っています。大学時代に起業するケースや、小学生が起業する例も多々メディアで紹介され、目にした方も多いでしょう。
「だから皆さんも起業しましょう」ということではありません。あくまで、選択肢の一つとして「認識」しておくことに意味があります。企業という組織の枠組みの中でも、常に「新しいことに取り組み、挑戦すること」について考えることは、非常に重要とされてきています。「企業内起業」という制度がある企業もありますし、人が成長する上でも不可欠なことと考えます。

以上、就活をする際に認識しておいてほしいビジネス環境の背景について紹介しました。一側面として、参考にして頂ければ。
次回からは、具体的にどのような「仕事の場」が待っているのかといったことから、紹介していきたいと思います。

*1:ファブレス企業
生産を行う工場などの施設、設備等を、自社で持たない企業のこと。
*2:Singularity
米国 未来学者 レイ・カーツワイル氏 の予測 (2013年から、Google に)人類の技術開発の歴史から推測しえる 「未来モデル」の限界点。人工知能が人間の能力を超えるタイミング。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?