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チック・コリア氏を悼む

マイルス・デイヴィスとの共演などで知られるジャズ・ピアニストのチック・コリアが、2021年2月9日に癌で亡くなったと氏のFacebookで発表された。享年79。

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上に転載した最後の言葉に、力を貰う。
「表現活動をする人は、ぜひ続けてほしい。あなた自身のためにも、私たちのためにも。世界は多くのアーティストを求めているし、なによりもまず、すごく楽しいことだから。」(筆者訳)

氏の経歴・偉業の数々は、以下の記事をはじめ、至る所で確認できる。

追悼チック・コリア ジャズの可能性を広げた鍵盤奏者の歩み
(2/15付、Rolling Stone Japan)
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/35409

ジャズ・ピアニストの「巨匠」チック・コリア死去─ ジャンルの可能性広げ グラミー23回受賞
(2/12付、ARBAN)
https://www.arban-mag.com/article/68983

父が氏のファンだった
筆者自身は、氏の音楽には間接的に触れていった。
父が氏のファンだったのだ。昔から寺にはいつも氏のCDが転がっていて、父は仕事をしながら、よくそのCDを大音量で聴いた。

2019年の来日公演がアナウンスされた時、すぐ父に伝えると、「高いな」とぼやきながらも迷わずチケットを取り、満足そうに出かけていった。
そんなに嬉しそうな父の姿を見ることも常には無いことだったので、よっぽど好きなんだなと伝わってきて、そこまで好きならば私も一度は観てみたいものだと機会を伺っていたのだが、その夢は叶わなくなってしまった。
やはり、見ておきたいアーティストは見ておかないと、チャンスを失うなぁと改めて思う。

本年のグラミー2冠受賞
先日3月14日に発表された第63回グラミー賞では、「ベスト・ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム」にチック・コリア氏の『TRILOGY 2』が選ばれた。また、同アルバムの収録曲「ALL BLUES」は、「ベスト・インプロバイズド・ジャズ・ソロ」も獲得。2冠を得た故人の代理として、妻で音楽家のゲイル・モラン氏が挨拶をされた。

「グループ内でプレイするミュージシャンのための安っぽいけど、良きアドヴァイス」16か条
氏の逝去に接し、SNSでは、氏がかつて記したという「グループ内でプレイするミュージシャンのための安っぽいけど、良きアドヴァイス」16か条、というハンドアウトが投稿され、反響を呼んだ。

このハンドアウトを、音楽ジャーナリストでDJの吉岡正晴氏が訳をつけて公開してくださっている。吉岡氏も書いておられる通り、すべての「なにかに取り組んでいる方」が創作に応用できる内容で、私も留めておきたいので、ここにシェアしておきたい。
(原文は吉岡正晴氏のnoteに詳しい。ここでは氏の対訳のみ掲載)

チック・コリアのグループ内でプレイするミュージシャンのための「安っぽいけど、良きアドヴァイス」16か条

1.  聴いたものだけをプレイしろ
2.  もし何も聴こえてこなければ、プレイするな
3.  指や手足をぶらつかせるな。常に(指や手足に)意識・目的を持て
4.  きりなく即興をするな。つねに、意識・目的を持って何かをプレイしろ、その即興を発展させるにせよ、しないにせよ、(意識がなければ)終われ、そして休みを取れ
5.  スペース(空間、間)を残しておけ、そのスペースを作り出せ、意識・目的をもってプレイしない場所を作れ
6. 自分の音を、他者と融合せよ、自身の音をよく聴け、そして、バンドの他のメンバーの音とその部屋の音に微調整せよ
7.  同時に複数の楽器をプレイするとき、たとえばドラム・キットや複数のキーボード、それぞれの(楽器のサウンドの)バランスを必ず取れ
8.  自身の音楽を決して(無意識に)機械的に作るな、自身の癖のパターンから作るな。それぞれの音、フレーズ、部分を意図的に慎重に作り出せ
9.  他の者が好きであろうものをプレイせず、自身の好きなものをプレイすることに進め
10.  様々な要素のコントラスト(明暗、強弱)とバランスをうまく取れ。その要素とは、高い音/低い音、(テンポの)速さ/ゆっくりさ、(音の)大きさ/ソフトさ、緊張/リラックス、密度の濃さ/薄さなどだ。
11.  他のミュージシャンをよく見せるようにプレイしろ。全体のサウンドをよく鳴らすようにプレイしろ。
12.  リラックスした体でプレイしろ。緊張の元凶となるものはすべて常に解放しておけ。
13.  曲の導入部分、発展部分(途中)にスペースを作り出せ、そして、意識的にフレーズを作り出して終了せよ。
14.   自身の楽器を決して叩いたりするな。やさしく、優雅にプレイしろ
15.  スペースを作り出せ、そしてそのスペースに何かを埋め込め
16.  真似は最小限に、他のプレイヤーのフレーズを発展させ、コントラストをつけたフレーズをクリエイトしろ


ライブで同じ空気を味わうことは叶わず、氏は旅立ってしまった。これからは氏の遺した音楽と言葉の数々を、折に触れて確認していきたいなと思う。


<了>


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