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アラマイヨの憂鬱

アラマイヨに憂鬱な日などない。

「もうちょっとリラックスしなよ!何も問題ない、何も気にしなくていいさ!」

というのが彼の口癖である。

私が歌手仲間を集めた飲み会の幹事をよく行うことに関して、ほとんどの人々が、スルーするか、一言二言感謝の意を述べてくださる、というのが通例だ(別に感謝されたくてやっているわけではないので、それでいい)。

しかしアラマイヨは違う。

「またオーガナイズしてくれたんだね!ありがとう。君は本当に太陽さ、皆を明るくしてくれる。君のエナジーが皆を元気にするんだ、そのことだけは覚えていてね。」

私は、このように多少照れ臭い台詞をサラッと言えるアラマイヨこそが太陽だと思った。人に決して悲しい顔を見せないアラマイヨ。二児の父であり、素敵な奥様もいる。アラマイヨはエチオピアからオランダへと渡り、そこで大学を出てからロンドンの銀行で勤めている。エチオピアのエリートに違いないのだ。彼のスラっとしたスーツ・スタイルからはいつも輝かしいオーラが感じられる。

「僕はクリスが大嫌い、でもあの人は出世すべきだよ。」

アラマイヨは、自分が何を嫌いか、誰が気に食わないかを明確に発言することでストレスを内にため込まないという能力を持っているのではないか。しかし同時に彼は非常に公平な感覚を持ち合わせており、たとえ嫌いな相手であっても能力を認め、それを他人にも伝える。

アラマイヨはその熱いエネルギーを常に全力で飛ばすことにより前進しているから、後ろを見るヒマなどないし、その必要などないのかもしれない。

ただし、アラマイヨの女癖は悪い。

「僕が結婚して、子供がいるってことは、別に君にアプローチをかけないことの理由にならないさ。」

堂々と笑顔で爽やかにそう言われると、なるほど、と言ってしまいそうになるが、私はすかさず反論する。

「Oh no!そんなこと言ったら奥様が悲しみますよ。それに、私は誠実な男性がいいですが。」

「それは女の意見さ!女の意見!」

アラマイヨの発言は性差別主義者と捉えられることも多い(実際に人権を顧みない発言が多い)。したがって彼は面白いし、よい性格なのであるが、彼の会社の一定数の人々、特に英国人は彼のことをよく思っていないようだ。私自身も、いつもアラマイヨに、そのような発言はよくないこと、女性の人権を尊重せよ、ということを伝えている。

しかし私は彼が好きでもある。彼はエチオピアから来た太陽。この薄暗いロンドンの街を照らしてくれる存在。憂鬱をいともたやすく取り除いてくれる存在。


ロンドンにおける私の憂鬱な生活をサポートして下さると、とてもありがたいです。よろしくお願いします。