なちょ@ロンドン

ロンドン在約5年。実体験を元に、色々と書いています。

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マガジン

  • ロンドン人の憂鬱

    ロンドンに住む人々それぞれの憂鬱を実体験に基づき書いています(登場人物のプライバシー保護のため、名前・職業などは変えてあります)。ロンドンという国際的かつメランコリックな街は、人々の内なる葛藤を知るのに適した街だったのです。

  • ロンドンすべらない話

    ロンドンの憂鬱な話しが憂鬱すぎるので、面白い方向で行こうと思います笑 すべるかもしれないけれど。

最近の記事

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ローラの憂鬱 その2

私はビリオネアの主催する奇妙なパーティーに何度か出席する機会があった。それは非常に異様な雰囲気を秘めたパーティーであり、参加者の皆がビリオネアに見返りを期待しているような、何やらあからさまにいやらしい目をしていた。このような目をしていなかったのは、彼の家族と、どこかの国の政治家くらいのものであった。彼の家族は一目見るとわかるくらい、ダイヤモンドまみれであった。パーティー会場の光が反射して、目が痛いくらいまぶしい。耳たぶのダイアモンドがあまりにも重そうで、耳がちぎれないかが心配

    • Konmari

      私はとある五つ星ホテルの玄関口にKonmariと書いてあるのを見つけた。コンマリねー。何かコンマリ関係のイベントがあるのだろうか。 とにかく私は別の用事があったので、Konmari会場を通り抜けて化粧室に向かった。女性用化粧室で手を洗っていると、隣のブロンド女性が、すごくニヤニヤしながらこちらを見てくるではないか。 目が合った瞬間、ときめいた様子で(笑)、 "Hi !" と声をかけてきた。この瞬間、わたしはまずいと思った。もしかして、もしかして?私をKonmariだと思っ

      • マルタの憂鬱

        マルタ曰く、鯉のような安っぽい、泥臭い魚は食べられないということである。しかしマルタが幼い頃は、ポーランドの家族と一緒によく食べていたそうだ。母親が鯉を買ってきたら、まずは自宅の浴槽に入れ、泳がせておく。そして、家庭の中で一番勇敢な者が、鯉を死に至らしめる役割を負うらしい。そしてこの家ではマルタがその役を引き受けていた。 しかし、その「勇敢な娘」が旅行に出ているある日、母親が後先を考えず鯉を買ってきてしまった。誰も鯉を殺めるどころか、水槽にいる鯉を掴むことすらできない状態だ

        • ヘンリーの憂鬱

          ヘンリーとはあまり話したことがなかったが、地下鉄で事故があったある日、Elephant & Castle駅の人だかりの中に彼を見つけた。どうやらヘンリーは仕事帰りだけれど、駅に入れないでいるみたいで、その顔には珍しく苛立ちが見え隠れしていた。 「ヘンリー!どうしたの?」 彼はとても不機嫌そうに、帰りたいのに帰れないのだということを説明してくれた。 「大変だね、私は今からこの近くのパーティーに行くの。」 「あ、じゃあ僕も行っていい?どうせすぐには帰れないからね。」 そ

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        ローラの憂鬱 その2

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        • ロンドン人の憂鬱
          6本
        • ロンドンすべらない話
          1本

        記事

          アラマイヨの憂鬱

          アラマイヨに憂鬱な日などない。 「もうちょっとリラックスしなよ!何も問題ない、何も気にしなくていいさ!」 というのが彼の口癖である。 私が歌手仲間を集めた飲み会の幹事をよく行うことに関して、ほとんどの人々が、スルーするか、一言二言感謝の意を述べてくださる、というのが通例だ(別に感謝されたくてやっているわけではないので、それでいい)。 しかしアラマイヨは違う。 「またオーガナイズしてくれたんだね!ありがとう。君は本当に太陽さ、皆を明るくしてくれる。君のエナジーが皆を元

          アラマイヨの憂鬱

          ローラの憂鬱 その1

          私はローラが怖い。いまこの瞬間にも彼女の口から、残酷な言葉の数々が放たれるかもしれないからである。「同じパーティーに同席している人」としての彼女は許容できても、仕事のパートナーとしては最悪なタイプである。彼女は私がフリーランスでデザイナーをしていた頃のクライアントであった。 彼女の特徴としては、とにかく、連絡がない。情報を共有しない。「新しいブランドを立ち上げるから、ロゴをデザインしてくれ」と頼まれたものの、ブランドイメージも何も聞かされないまま、とにかく作れ、とのことであ

          ローラの憂鬱 その1

          エカテリーナの憂鬱

          ロシア出身、美しいエカテリーナは今日もロンドン南部のオフィスでため息をついていた。彼女の体格は華奢そのものだが、その青い瞳には誰にも分からないような苦しみを乗り越えた末に身に付けた強さのようなものが感じられた。 エカテリーナと私はパーティーで出会った。とある英国法律事務所のアニバーサリーパーティーで、出席者はほとんど法曹資格者であった。私はそこに歌の仕事に行ったのである。参加者の中で目を引いたのが、弁護士、エカテリーナ。 そこに事務所のパートナーらしき男性が訪れ、エカテリ

          エカテリーナの憂鬱