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印刷の色のこと、どのくらいご存じですか?

こんにちは!ナディアのYです。

勝手にアナログ回顧シリーズ第3弾です。(社内から、次は印刷で書いてほしいとのリクエストがありましたので)
ナディアとお仕事された方の印象としてはデジタルクリエイティブの会社という印象をお持ちかもしれません。
間違いではないのですが、会社の掲げるブランドTAGLINEは「Design for everyone」であり、必要であれば動画やプリント、いかなる分野にも対応可能です。
今回はそんな中で印刷について少し過去の経験を語ってみたいと思います。


まず今回お話しする印刷とは平面にインクを吐出し、文字や図、画像などを定着させるものとします。3Dプリンターは対象外ということをあらかじめご了承ください。

印刷技術ができて世の中どうなった?

世界史の授業でも教わったように印刷(この場合は活版印刷を指します)とは火薬、羅針盤と並んで 世界3大発明の一つです。世界史アレルギーの方が蕁麻疹を出さないように細かい説明は省きますが、グーテンベルクさんのおかげで文字や情報が紙という媒介物に定着されて大量生産が可能になり、手書きで写しとっていた作業から解放され、情報というものの入手が容易にできる第一歩になったと思ってください。

それから600年近い歳月が流れ、ペーパレス時代となり情報はデジタル化されました。www(World Wide Web)の中に膨大な量として蓄積され印刷に対しての需要が極端に減ってきているというのが時代の流れとなっています。
では、このまま印刷という技術は過去の遺物となっていってしまうのか?というと個人的にはNoではないかと思っています。

検索すると諸説あって、どちらが優勢なのかは不明ですが「漫画を読むなら紙派?電子派?」という統計が一定数あります。
実際には減少傾向ではありますが、全盛期は週600万部!を誇っていた少年ジャンプはいまだに150万部を確保しています。

手に取る、というリアルを求める気持ちは無くならないのではないかなというのが、希望も込めた個人の見解です。
教科書だけは重たいものをランドセルに入れて何冊も持ち歩くより電子化された方が良いのになとは思ってます。
とはいえ、落っことしたり、濡らしたりするヤンチャな子もいるだろうしなぁ〜。
あ、歴史の偉人の顔に落書きしたり、パラパラ漫画もできなくなりますね。う〜ん。

入稿作業で一日が終わる

現代の印刷技術とはという技術書的なことはここでは語りません。ググると色々と出てくるのでテクニカルなところはそちらにお任せします。
簡単にここ30年余りの変遷を語ると入稿の方法は最初は版下というもので行っていました。シリーズ第2弾(※1)でお伝えした写研などの文字を指定して写植屋さんに文字組のベースを組んでいただきます。
(もちろんベースのレイアウトはデザイナーが指示書を作ります。WFみたいなものですね)
その文字は印画紙に焼く(フィルムの写真をプリントするのと同じ)ので、ピントを甘くして文字のシャープネスを変えるなんて手法もありました。
この台紙にトレッシングペーパー(ちょっと透ける紙)を被せそこに掛け合わせの指示(C100%、M80%、Y15%、K5%)を手書きで記載します。
雑誌原稿が複数あると、その雑誌分その作業が発生するので版下の指定だけで1日終わるなんてこともザラでした。

90年代後半になってMacが普及し始めて、ようやくデジタルデータでの入稿が可能になりました。(Illustrator 5.5)。
画像データは写真の場合はポジフィルム (※2 シリーズ第1弾 参照)イラストも手描きイラストなどの場合は現物を反射原稿として渡すor複写して フィルムで入稿するという流れでした。

そこから5~10年が経過してデジカメの解像度が印刷に耐えうるところまで到達し、ようやく完全データ入稿が可能になり現在に至ります。

青とオレンジは濁ります

紙(印刷)と電子(画面表示)の差はCMYKか、RGBかの違いになります。
言い換えると「減法混色」と「加法混色」の違いとなります。

「減法混色」=CMYKでの表現方法
ベースが白(紙白)となり、そこにCMYK4種の点を載せて色を作っていく方法です。 従って一番密にインクを乗せた状態がC100%、M100%、Y100%、K100%の状態で4色ベタなどとも呼称します。リッチブラックなどという4色を掛け合わせて締まりのある黒にするという表現もあります。

(株式会社ウエーブ 印刷の黒「スミベタ(K100%)/リッチブラック/4色ベタ」より )

「加法混色」=RGBでの表現方法
ベースが黒となり、R、G、Bの3色の色を光源として当てることによって色を作り上げる発色方法です。こちらは光の量が増えていく感じになるので最も密な状況が白になります。

デジカメで撮影した画像というのは電子領域で定着させているのでRGBで発色しています。これを印刷として定着させるためにはCMYKに変換する必要があります。
ここからようやくKnow Howのお話になっていきますが、ここで気をつける必要があるのが 前述のように色の作り方が異なっているものへ変換するので、どうしても歪みが生じます。
かなり大雑把な表現となりますが、どうなるかというと
青とオレンジは濁ります。

印刷を頼まれた時に気にすること

いやいや、そこだけ自信持って言い切られてもと思ったあなた。
そうですよね。
なので、印刷が必要である前提でサイト受注を受けた場合に私が気にすることをいくつか記載します。

1.青空とか果物とか青とオレンジが大きく配置されるようなKey Visualは避けます(黄緑も向いてない)
かなり後ろ向きな対応策ですが、リスクヘッジです。この2色はCMYKでの再現に向いていないのは 避けようのない事実なので、逃げではないと思います。

でも、巷には青空が綺麗なポスターや柑橘系果樹がど〜んとアップなオレンジジュースのポスターなどありますよね。予算次第ですが、対応策はあります。

特色を使う:基本的に印刷はCMYKの4色を使って印刷します。しかしこれ以外の色を追加することも可能です。この場合、PANTONEのカラーチップの色や金や銀、白などいかなる色でも再現可能ですのでその色を追加することで再現する事は可能です。ただし当然色数が増えるので工程も増えるなどで予算は嵩みます。

紙にこだわる:印刷に欠かせないのが、インクを乗せられる側の紙です。これも紙によって吸い込んでしっとりとした色になるもの、発色がカラフルになるものなど特徴があります。例えばハイマッキンリーなど紙白が青白いものを選ぶ事である程度濁りを緩和させることはできます。

予算もスケジュールも余裕がない場合は、濃い南国のような青空(インディゴブルー)は避けるのが賢明です。オレンジは黄色寄りの色味に寄せましょう。

モニターでは選択肢のない発色源を増やす、キャンバス色を変えるというのが印刷ならではの表現です。

2.クライアントのブランドカラーが青やオレンジ、もしくは両方だった場合
これは避けようがないですね。ただブランドカラーですので指定色に準じているれば事故は少ないとは思います。

あとは発想の転換ですが、画像(写真)を使わない表現を考えるという表現方法もあります。
写真を使った時点でCMYKでの表現は必須になりますが、使わない事で4色印刷でない方法という選択肢が生まれます。
タイポグラフィックス主体のデザインを行うことで特色のみ3色で印刷するというやり方も生まれます。化粧品のパッケージやamazonの段ボール、Tiffanyの紙袋(あのティファニーブルーもCMYKでは出ない色です)などがこの方法です。

印刷という表現手法を依頼された時点で視覚のみに訴えかける電子媒体とは異なり手触り(触覚)などの感覚に訴えかけることも表現として拡がります。iPhoneの箱のしっとり感などを思い出してみてください。

あ、グラビア印刷の場合は傾向としてマゼンタの発色が強めに出るという傾向があります。口紅などの表現には向いていると言えますが ナチュラルメイクを表現したい場合は派手になる可能性があったりなど、色に関しては他にも文字通り色々あります。 (機会があったらその辺もまた。)

他にもサイト制作よりレイアウトに関してシビアにしないといけないなどこだわりどころはあるかと思いますが、単にデザインという視点だけではないということを頭に置いて発想を開始すると表現の幅や提案の奥行きも厚みを増すと思います。
一つのきっかけとしてこんなことから考えてみるのも如何でしょう。

※1 シリーズ第2弾

※2 シリーズ第1弾

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