海外逃亡者noteカバー_1_

海外逃亡者(1)

2009年から2012年4月までの僕を一言で表す一番適当な言葉は「海外逃亡者」だろう。
時系列を整理してこれを書いてる今その言葉を自ら書けるようになったことはある意味誇らしい。
良いことも悪いことも肯定して前に進むしか脱却も再生もありはしない。

多くの不思議な案件は、後日書くとしてまずは、僕の今のスタイルを作ったある事件について書き始める。
2011年の秋口ごろ、上海の案件が片付き敗戦処理に入り僕には、いくらかのまとまったお金が手に入った。
家族で大阪へ旅行し、普段会うことのなかったfacebook友達に関西空港近くで会うことにした。
その中に、納田夫妻もおりあまりたくさん会話した覚えはないが「韓国から食品を仕入れたい。」と持ちかけられたことが記憶している。

韓国に戻り、いつもの日常を過ごしていると「韓国のりを仕入れたい。」と納田からメッセージが届いており、いくつかサンプルを知人に準備してもらい日本へ送った。すると次は「ごま油」「キムチ」「味噌」と続けていく。取引数量が多くなるかもしれないから一度韓国の工場に行って打ち合わせをしたいとなり、工場の下見の段取りをしていた11月ごろに納田からメッセージが届く。

「取引手数料を払うより雇いたいのでうちに来てくれへんか?」

僕はありがたい申し入れだが少しだけ考えさせてくれと返答し、ババァに相談した。
「やりたいならやってもいい。」と言われ少し口惜しそうに電話口から感じた。
僕の中でも、子供が生まれたことで安定した雇用での仕事をした方が家族は幸せではないか?と考えていた。
正直上海の敗戦処理を最後に辞めたかった。結果負けるとわかってるのに負けを縮めていく仕事など誰が好き好んでやりたいと思うだろう?とかなり精神的には当時は辛かった。それでも年末あたりに上海の件がひと段落することを予想していたので納田に雇用の件について打ち合わせるため再び大阪へむかった。

「月70万と役員待遇でどうだ?」と提示される。
「それで構わないです。」

それぐらいのやりとりで、決まり一度会社へ行こうとなり船場にある会社前で待ち合わせした。
東芝ビルから納田が出てきて、飯でも食おうというのでそのまま飯になる。
納田の経歴や自慢話などをへ〜と聞いていた、最初に起業した時が探偵業だと言った。
初期にかかるお金が1万?ぐらいでまったく金のかからない商売でいまだに副業で続けていてる。それに中古車の売買しており車が好きなので売り買いは趣味でやってると言っていた。

とにかくよく喋るやつだった。いつも一緒にくっついてきてた嫁は反面無口だった。僕は役員待遇ってことで「専務」となり意味不明だったがまぁ登記するまではなんとでも言えるだろうと思いやりたいように言いたいようにさせておいた。

「一件、人探しの依頼が入ったんやが「専務」一緒にやらへんか?」
「探偵業、面白そうですね。」

こうして、なぜか探偵業を手伝うことになる。

案件はこうだ、
「地上げの共有地の地主が高齢で行方がわからなくなっているので探して欲しい。」
さっそく謄本に記載されている持ち主の情報を洗い現場へ行ってみる。たしかに周りは地上げされていて一部古い建物が点在していた。聞き込みをしてみるが、みな知らないと言って相手にしてくれない。
地域のタバコ屋とか昔から商売やってる店主にふらっと話かけてみると高齢で病院へ入ってるのではないか?
そのヒントをもとに、タクシーでの半径1000円程度のところの病院と老人ホームをしらみつぶしに当たることにした。病院へ行っても「●●さんいますか?」と言っても所在は教えてくれないなので、親戚を装いメモを手にもって「甥なんですけど、●●の部屋ってどこですか?息子に連絡がつかへんので弱ってしもて。」って言うと大概教えてくれる病院では。老人ホームは電話口で女に電話をかけさせる「姪ですけど、そちらに●●いますか?」と女というだけでほぼノーガードで教えてくれる。16件ほど捜索してると、うんよく見つかり。
納田の嫁にアポをとらせ所在確認がすんだ。10時から始めて17時には終わった。納田はほぼ僕に付いてきただけでアホな冗談をずっと言ってただけの印象が強い途中嫁を呼びつけて怒鳴りつけて泣かしてたのでよくわからん奴だと思った。依頼主の不動産屋に会いにいき報告してその日は終わった。

この時点でいくつか自分の中に危険フラグが立っていたかもしれないが「安定雇用」という文字にすっかりそのフラグの直感を僕は無視していた。ババァに電話したい気持ちもあったが何気ない話ではぐらかしてしまった。嫁や家族にも良い話しかしなかった。

どんな時も自分の中で芽生えた直感に従ったほうがいい。

今ならあの時の自分にそうアドバイスするだろう。
人間は動物なのだ危険だとか危ないと思えば防衛本能が働くそれを遮るのはいつだって自分の甘えだと思う。
僕は確実に判断するのに弱くなっていたと思う。月70万貰うのだから、なにか役に立てることを返してあげないとと思い肯定的な解釈へむかっていた。

そうして、雇われ「専務」はここから地獄を見ることになる。

つづく


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40才になったので毎日書く修行です。