NagaM

詩・散文・日記・雑記。♂。 ゆっくり書いていきます。(R6/01/19)

NagaM

詩・散文・日記・雑記。♂。 ゆっくり書いていきます。(R6/01/19)

マガジン

  • Kisikaの日記

    亡きキシカの日記から。

  • 詩・その他

    詩・散文詩・その他

最近の記事

桜雨「Kisikaの日記」28

   H16/04/08 昨日までは 黄砂に染まっていた空から 今日は雨が降って来ます 白く煙る水のカーテン 向こう側にはぼんやりと 山肌が透けて見えます 満開の桜の木を包む 水の立体がゆらゆら揺れて うす暗い納戸の奥の 私の横顔が揺れている いつか雨が上がり 水の立体が崩れ落ちて 桜の木を囲む広い湖になれば 風に散ってゆく白い花びらが 湖面を覆うことでしょう あなたは花びらを踏みながら 湖面の道をひとり歩いて 私のもとへ 帰って来てくれるでしょうか それとも花は散

    • 春の夜明け「Kisikaの日記」27

             H16/04/07 真夜中の 川堤の道を 紅い布が のたくりながら 這うように 這うように 走る 桜の木の横を 通り過ぎて 逃走する 私のからだに 絡み付いて 拘束して 捻じる 私は 必死になって  紅い布を 振りほどき あなたに 縋り付くけれど ああ そんなことをしては いけないよ わたしは 石の海溝に住む 女の元へ 会いに行くのだから あなたは そう言って 紅い布で 桜の木に  私を縛り付けて 草叢に うずくまり 夜明け前に 鬼が来るのを

      • 死の島

        噴水と橄欖樹のある広場 くすんだ色の神像が並ぶ市街 水盆から零れる水が 広場の敷石を濡らし 何処へ行くのか誰にも告げず 暗い布を纏った女が歩いて行く 街角で籠が倒れる 転がり出た無花果の実を ひとつ拾う 翳を抱いて歩く人々 木陰で薄笑いを浮かべる老婆 遠くで子供が泣いている 夕刻には遥かな沖合の 大渦に群がる鳥達が 今朝は街の上空を舞っている とも綱を解いて 海へと漕ぎ出す小舟に 青い花を懐に隠し持つ女が 乗り込んでゆく 肌を打つ潮風 波に揺れる小舟 魚が跳ねる

        • 黄砂の歌「Kisikaの日記」26

             H16/04/06 舞い上がる黄砂の中を 私は歩いています 見渡すばかりの砂漠の上を 頭にはターバン 鼻や口を布で塞いで オアシスを求めて ひとり歩いています 黄砂の向こうに 現れては消えてゆく セピア色の人影が 黄砂の歌を 口ずさんでいます そんな夢を見て 今朝は目覚めました お庭に出て 今日は洗濯日和かどうか 確かめましょう 青空は出ているけれど 遥か西の空を眺めてみれば うっすらオレンジ色の 黄砂の空 洗濯はまたにして 夢で聴いた黄砂の歌でも 歌いましょうか

        桜雨「Kisikaの日記」28

        マガジン

        • Kisikaの日記
          28本
        • 詩・その他
          1本

        記事

          天国への階段「Kisikaの日記」25

             H16/04/05 今朝はいつにも増して 頭がボーッとしています 何だか不安になってきました お薬を飲めばスッキリするかしら でも このままの方が 天国に近いのかも知れませんね あら 電話が鳴っています 受話器を取ると しばらくの沈黙の後 「天国への階段を探しなさい」 ひと言だけで プツと電話は切れました あの子が二十歳を迎えた頃 繰り返し聴いていた曲 「天国への階段は  ささやく風の上に横たわっているよ」 ふうん そうですか でも 何を寝とぼけたようなことを 歌って

          天国への階段「Kisikaの日記」25

          逃避行「Kisikaの日記」24

             H16/04/04 今日は肌寒い日 予報はいい天気なのに 朝のうちは雨でした 捉えどころのない日々を きのう 今日 あしたと この島で生きている私は この世界の何処にも 比類の無い 唯一無二の私 なんてことはないわ きのう港でもう一人の私を 見かけたんだもの あら あなた何処へ行くの? 幼い男の子の手を引いて 今日は連絡船の甲板に立ち 波間を飛ぶように泳ぐスナメリを 幼い男の子に見せてあげている あしたはレンゲの花咲く畦道を パラソルを差して歩いて行くの 逆光で眩しい

          逃避行「Kisikaの日記」24

          ヒメウツギ(四月の風)「Kisikaの日記」23

             H16/04/03 雛祭りのお人形を 仕舞うのが遅れたら お嫁に行くのも遅れますよ そんな夢を見て 今朝は目覚めました 歳を取った私には もう関係のない言い伝え 気にすることはないと ヒメウツギが白い蕾を付けた 庭の掃き掃除をしていたら こころはいつも 恋人を待っているような 気分でいなさいと 四月の風が囁くのです 庭木の水やりを終えた後で ひと月のあいだ飾っていた 雛人形を片付けましょう 午後には母になった娘と ヒメウツギの白い蕾のような ちっちゃな女の子が 私に

          ヒメウツギ(四月の風)「Kisikaの日記」23

          甘夏みかん2「Kisikaの日記」22

             H16/04/02 三月のお日様が 私のお家の前庭に コロコロ転がり落ちて来て 庭の木に橙色の果実が ひとつ生りました 空にお日様が無くなって 一瞬 世界は夜に覆われましたが 遠くの星雲から恒星がひとつ 超光速ですっ飛んで来て 新しいお日様になったから すぐに昼に戻りました 三月のあいだ中 このお日様の交代が 取っかえ引っかえ繰り返され 四月が来る頃には 庭の木に橙色の果実が たわわに実っていたのです 私はちょっと憂鬱です 五月初めの収穫の季節に 足腰がお

          甘夏みかん2「Kisikaの日記」22

          エイプリルフール「Kisikaの日記」21

             H16/04/01 今日は四月一日 エイプリルフール お粧しをして おしゃれな服を着て 街の広場へ行って 皆が見ている前で 女神様の 水鏡に向かって 思いっ切り 嘘を吐きましょう 一世一代の 大法螺を吹きましょう 皆が大笑いして 女神様が 喜んでくれたら よく当たるという ご神託を下されるのです でも今日は四月一日 エイプリルフール 実のところ ご神託も 大法螺なのです よく当たるというのも 大嘘なのです それってけっきょく 何なのですか? 私はかねてから 疑問を抱い

          エイプリルフール「Kisikaの日記」21

          潮 騒「Kisikaの日記」20

             H16/03/31 真夜中にあの人は 私を起こしにやって来る 一度目は音を立てずに 私は目覚めてお小水に行き 布団に戻ってまた眠り込む 二度目は微かな音を立てて またお小水に行くついでに 窓の外を覗いてみたら 風が梢を揺らす音でした 今夜はもうあの人は 来てくれないのかしら 布団の中で耳をすますと 梢の揺れる音の間から 囁き声が聴こえて来ました 何と言っているのかしら あの人は私に 郵便が来たと告げています 私はあの人に尋ねました こんな真夜中に 何処

          潮 騒「Kisikaの日記」20

          春の生活「Kisikaの日記」19

             H16/03/30 巷に春は来たけれど ほんとうの春じゃない 私はいつも古いお家を あちこち整理しているから 毎日のように ゴミを出しに行く 都会のように 曜日は決まってなくて この島の裏側の山に いつ捨ててもいいと 決められた場所がある これでも年季の入った 農家の主婦だったんだから 車の運転はお手のもの 軽トラにゴミを積んで 山道を登って行くと 山のケモノ達や とうの昔に 山へ還って来た人達と 会うことが出来るから ゴミ出しはとっても楽しい 終わったらお家に帰り

          春の生活「Kisikaの日記」19

          Avalon「Kisikaの日記」18

                 H16/03/30 地球照の冷たい光が 月を蒼く染める夜 私はやっと あの島へ帰って行く 妖精たちの歌声に誘われて 桜の花びらが舞い踊り 聖剣を胸に抱いた 阿麻王が棺に眠る あの伝説の島 アヴァロンへ ですって? そんなわけありません 海馬に似た弓状列島の 多島海に浮かぶ 平凡な島へ帰って行くの むかしむかし お嫁に来てしばらくは 辛いこともありました でも どんな処でも 住めば都と言いますよ 新月の儚い光が 水面で戯れています 私は木の舟に ゆられゆられて

          Avalon「Kisikaの日記」18

          春が来る「Kisikaの日記」17

                 H16/03/27 春が来れば 人はみな 帰るべきところへ 帰って行く だから私も なつかしい島へ 桜の花が咲き 妖精達が舞う あの島へ 帰るつもりだったのに ふいに巻き起こった 春一番に攫われて 灰色の街の 冷たい建物の中に 閉じ込められてしまったの 運んで来るところを 間違えていますよ 春一番さん 私は窓の外の枯れ木を 想像の桜色に染めて 風の中で舞い踊る 妖精になるの 春が来る  春が来る 春が来る という歌を 季節の布地に そっと 織り込みながら

          春が来る「Kisikaの日記」17

          徘徊する「Kisikaの日記」16

             H16/03/24 きみのうなじは 草原を濡らす朝露のように あおくて冷ややかだから わたしは 時と方位のオリエンテーションに 挫折した鳥になって 大空を徘徊する だけど大空は スルリと 右の蝸牛管に引っ込んだ と思ったら 左の腋窩のぶつぶつを爬行して 尻たぶらの蒙古斑を見に 暗黒の岸壁からジャーンプ! 大陸は月状骨から 両眼の虹彩へと脱臼三昧 すべては隣家のポチが むやみやたらと 歯軋りするからです ネピア数のカメ虫に 追い縋る白色矮星 脊柱の腹側を

          徘徊する「Kisikaの日記」16

          礼 拝「Kisikaの日記」15

             H16/03/24 予兆が熱い虎として襲来する夜に 私はここに在り 同時に遠方に居て 未明の天体から淫靡な憑依を受けた 湖沼は群れる積層雲を突き抜け 朱色の空が山野から遁走する朝に いまだ音の来ない街を離れて 巨木の回廊をひとり歩いて行く 時の風洞を旅して来た異邦の巡礼者達は 嗤うミイラの歯列に泥炭を擦り付け 左腕の無い少女への礼拝を切望している 巡礼者達の列に混じって 揺れる麦の穂を視姦で祓えば 朝の祈祷が空に火の歴象を焼き付ける 真白い正午に銅鼓は打ち鳴ら

          礼 拝「Kisikaの日記」15

          夢の裏側「Kisikaの日記」14

             H16/03/23 夢の表側で 星は青白い炎になって 私を焼きに来る 星から逃げるために 夢の裏側を探して 私は深夜の街へ出掛けて行く 街を歩いていると 暗い路地の奥に立つ木の扉に 「ここから先は裏側」と書いてある 扉を開けて入って行くと 漆黒の宇宙を背景に 灰色のクレーターが何処までも続く 月の裏側に出たのでした 月の裏側を歩いていると クレーターの中心に立つ石の扉に 「ここから先は表側」と書いてある 扉を開けて入って行くと 漆黒の宇宙を背景に コバルトグ

          夢の裏側「Kisikaの日記」14