見出し画像

礼 拝「Kisikaの日記」15


   H16/03/24


予兆が熱い虎として襲来する夜に
私はここに在り 同時に遠方に居て
未明の天体から淫靡な憑依を受けた

湖沼は群れる積層雲を突き抜け
朱色の空が山野から遁走する朝に
いまだ音の来ない街を離れて
巨木の回廊をひとり歩いて行く

時の風洞を旅して来た異邦の巡礼者達は
嗤うミイラの歯列に泥炭を擦り付け
左腕の無い少女への礼拝を切望している

巡礼者達の列に混じって
揺れる麦の穂を視姦で祓えば
朝の祈祷が空に火の歴象を焼き付ける

真白い正午に銅鼓は打ち鳴らされ
遠ざかる少女の幻影に追いすがる人々の
肩から腕が悲鳴をあげて墜ちて行く

午後に巡礼者達の列を離れて
幻肢の痛みの刻印を抱きかかえながら
巨木の回廊を再び歩き 夕刻の街に帰る

風が街路を彷徨う人々の影をさらい
予兆が熱い虎として襲来する夜に

音は来る 光速の
Street  Fight が始まる



この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?