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リョーリの部活 第2話~聞き耳~

放課後、多少の期待と緊張と不安を抱きながら調理実習室に向かった。

考えてみれば高校に入ってからまだ家庭科の授業で調理実習をしたことがなく、1度も行ったことがないので調理実習室の場所が良くわからない。
多分実験・実習棟のどこかだと思う。

実験・実習棟は僕たちの教室がある講義棟と中庭を挟んだ向かい側にある。
実験・実習棟の入り口には簡単な案内図があった。
1階の一番奥、被服実習室の隣りに調理実習室はあった。

調理実習室の前まで来ると中から2、3人の女の子の話し声が聞こえてきた。
同好会のメンバーの話し声なんだろう。
結構楽しそうに話は弾んでいる。
はたして僕もこの同好会の中でよい人間関係を築くことができるのだろうか。

「昨日の『初めてのお笑い』見た? もじゃりんずのコントは面白かったー」
昼休みに聞いた高橋さんの声だ。
「何それ?」
「深夜にやってるお笑いのオーディション番組」
僕も何度か見たことはあるけどもじゃりんずっていう人は知らないな。
「夜遅くやったら無理やわ。朝早くからお豆腐作るの手伝ってて夜は早く寝るようにしてるから」
「シノのとこお豆腐屋さんやったっけ」
「うん」
「もじゃりんずは何か普通に仕事やりながらお笑いしてて、職場にばれたらあかんからって二人とも顔を白塗りしてコントやってた」
いつまでも調理実習室の前で立っているのもなんだったので期待、緊張、不安を抱きつつドアをノックした。

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