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第二ボタンを引きちぎって

先輩の卒業式に向かっている。サムネの花束を持って、電車に揺られながらこれを書いている。

どうせまた会えると思っていた高校までの卒業式とは違い、多分これから先『会いたいっす!』とか『飯行きませんか?』とかを送ったとて平日に会えることはきっとない。

金曜日の夜に「お疲れっす!」と言いながら社会に揉まれてやつれた顔をしている先輩に会いに行くのが御の字といったところだ。

学生とは違い、社会人になるあの人たちとは今日を境に分断されてしまうことだろう。

あーあ、卒業判定取り消しにならんかなぁ〜とか、留年してくれんかなぁ〜とか、そんな気持ちがあることに間違いはない。

でも、送らないといけない。それが後輩としての最後のけじめだろう。

まだ行きの電車だ。泣きそうだ。

あと数日後の大学のラウンジに、先輩はもういない。

気づけば自分も3回生だ。先輩よりも後輩の方が多くなってくる。

特に何もしてないのに、さして後輩がいるわけでもないのに、先輩になってしまった。

再来年、自分との別れに泣いてくれる後輩はいるだろうか。

泣いてくれなくてもいい。長押しさん卒業か〜、と思ってくれる後輩はいるだろうか。

カッコよくて、粋な先輩になりたい。

「長押しさーん…」と言われたらサラッと助け舟を出せる先輩になれるだろうか。

「何が分からんの?あーこれはな、こうや」とヘラヘラしながら言えるくらいになれるのだろうか。

そんな後輩の自分は、高校の頃やり残したそれがある。

それは、先輩の第二ボタンを貰うこと。

「先輩の第二ボタンください!」という文化はまだ残っているのだろうか。

いやこれ告白的なそれじゃなかったか?と正気に戻ればそうなのだけど、まぁ、それは、そうだ。その通りだ。

踏みとどまることができてよかった。

じゃあ最後に先輩から何を貰えば、いや、強請ればいいのだろう。

今日くらいは送るだけにしておこうか。

送辞もお礼も何もできないまま、卒業されてしまう。

まぁ、どうせ自分の先輩だ。

「俺らがやったったことを後輩にやったれ」みたいに中途半端に真っ直ぐにカッコいいことを嬉しそうに言うんだろう。

今はまだ、その優しさに甘えておくことにしよう。

というわけで、卒業式に行ってきます。

自分を含めてあと数回しかない卒業式。あの空気を目一杯吸って、再来年サラッと卒業できるように頑張ります。

単位大丈夫なのかしら……

勉強しよ……

ではまた明日。

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