一人組立(永瀬恭一)

画家。2008年より「組立」開始。 mail→nagase@zc5.so-net.ne…

一人組立(永瀬恭一)

画家。2008年より「組立」開始。 mail→nagase@zc5.so-net.ne.jp HP→https://nagasek1969.wixsite.com/mysite

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  • 一人組立

    異なるものが接点を持った状態を「組立」と呼ぶ。 https://nagasek1969.wixsite.com/mysite ひとりで美術を組み立てる「一人組立」をぼちぼちやってます。

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一人で美術を組み立てるということ

・一人でいるということ。 ・誰とも繋がらない、あいた両手を確認すること。 ・たくさんの荷物を一度手放すこと。 ・すっきりとした孤独を大事にすること。 ・離脱し、反復すること。 ・そして、そこから見える「外の世界」に向かうこと。 ・「外の世界」で、別の、ひとりの人と会ってみること。 僕は働きながら絵を描いていて、たまに文章なども書いている。大まかな活動履歴についてはwebサイト(https://nagasek1969.wixsite.com/mysite)を見てもらえればわか

    • 桃山の多重の声・智積院長谷川派金碧障壁画群

      サントリー美術館で「京都・智積院の名宝」展が開催されている。私は智積院には以前に訪れており、長谷川等伯・久蔵らによる金碧障壁画群(桃山時代/1591-92年頃?)もそのときに見ている。当時は等伯の早逝した息子の久蔵による〈桜図〉が印象強く、これは父よりも優れた作家だったのではないかという思いを持っていた。 今回、改めて再見して感想が変わった。久蔵〈桜図〉の「印象の強さ」は、胡粉を盛って立体的かつパターン的に反復された桜の視覚インパクトによるもので、これはある意味わかりやすい

      • 降り注ぐ血──フラ・アンジェリコ《キリストの磔刑》について

        2022年2月、国立新美術館での「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」に出品されたフラ・アンジェリコ《キリストの磔刑》(1420-23年頃)は、63.8×48.3 cmの板にテンペラと金地で描かれています。会場に掲示されていたキャプションを以下に引用しましょう。 このキャプションはおおよそ問題がありません【註1】。が、文字数の関係もあって詳細とは言えません。ここではキャプションで省かれた細部を十分に見たいと思います。図像にキャプションで指摘のある楕円を描きこんでみま

        • やまいのあと(軽い)

          11月中旬の一週間、コロナ感染となり自宅療養していました。回復し、社会復帰しております。ありふれた、大したことない記録ですが、以下忘備録的に経過報告を。50代で仕事をしながら絵を描き、文章も書いています。配偶者との間に子どもがひとりという情況です。 発症 15日(火)から体調がすぐれませんでしたが、過信もあり放置していました。16日には朝から咳、のどの痛みがありましたがここでも普通に仕事に行きました。明らかな判断ミスです。熱っぽい感じがあり、午後も体調が戻らなかったのでさ

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          ドラマ「無言館」の宛先は、どこなのか

          24時間テレビ内のドラマ「無言館」を録画で見た。まず作品以前の話として、僕はこういった枠組みのドラマが嫌いだ。“愛は地球を救う”といったキャッチフレーズの特番が、そしてその企画の一環として日本の敗戦した8月に戦没画学生を扱ったドラマを制作するという企画意図が嫌いだ。 それでも「無言館」を見ようと思ったのは、本作の監督・脚本を担当した劇団ひとりに関心があったからで、きっかけは劇団ひとりがやはり監督した映画「晴天の霹靂」(2014)の予告をyoutubeで見たことにある。本編は

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          イメージの「のこりかす」の「のこりかす性」を追う・リヒター展

          東京国立近代美術館で、リヒター展を見てきた。僕の率直な印象としては食い足りない。奇妙に閉塞している。しかし、この閉塞感は、思いの外検討を要するように思える。公式サイトには以下の文言がある。 「画家が手元に置いてきた初期作から最新のドローイング」があるボリュームを占めていることは本展に重要な骨格を与えている。これは規模や作品数の問題ではない。言ってみれば展覧会の精神に関する「ささやかさ」が、本展においてはむしろ見られるべきものなのだ。 「日本では16年ぶり、東京では初となる

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          戦争の美術/美術の戦争について

          最初はツイートで終わらそうと思っていたのですが、長くなったのでブログにします。 いうまでもなく、以下の文章は2022年2月24日に始まったウクライナ-ロシア戦争についてのものです。 3月11日からロシアがネットを遮断(国外とのアクセスを切るのだと思います)するとのことで、またtwitterとFacebookのプロフィールを変えました。意味が分からないひとは調べてみてください。 今回の出来事は、twitterでも書きましたが、表現に関わる問題をとても多く含んでいると感じ、

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          連続対談「私的占領、絵画の論理」第五回「絵画における人のかたちと外部」─及川聡子─ レポート

          2021年11月20日、ART TRACE GALLERYに及川聡子さんをお迎えした連続対談「私的占領、絵画の論理」第五回「絵画における人のかたちと外部」は無事終了いたしました。ご参集いただいた皆様、ありがとうございました。 及川さんには日本画作品一点と自作のお人形を一体、持ってきて頂きました。ART TRACE GALLERYでは向井三郎さんによる個展「Birds Passing」が開催中であり、プロジェクター投影と及川作品をかける壁面をお借りいたしました。向井三郎さんと

          連続対談「私的占領、絵画の論理」第五回「絵画における人のかたちと外部」─及川聡子─ レポート

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その30「出かける面倒と出かける面白さと」

          とうとう明後日です。 連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」 第五回「絵画における人のかたちと外部」─及川聡子─ 及川さんには作品画像などいろいろ準備していただいています。楽しみです。 加えて朗報です。及川さんには当日、作品一点と、更にサプライズ的な「何か」を持ってきて頂きます。実作を見られる貴重な機会ですので、お見逃しなく。 さて、今回で「私的占領、絵画の論理」第五回の事前準備のブログはおしまいなのですが、最後に一回、及川さんと関係ない話を書きます。コロナ禍の副産物

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その30「出かける面倒と出かける面白さと」

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その29「及川聡子の「凄さ」は一瞬でわかる」

          前回の続き。画家の及川聡子さんのお話を伺う 連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」 第五回「絵画における人のかたちと外部」─及川聡子─ は、土曜日20日になっております。宮城から作家さんをお呼びする、めったにない機会です。なんといっても、対面でお話ができるのは、なかなか得難いチャンスとなってしまった昨今です。ご来場くださいませ。 さて、及川さんの作品をめぐって、遠くまでやってまいりました。レオナルド・ダ・ヴィンチから始まって、ジャコメッティやヒルデブラントを経由し、果

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その29「及川聡子の「凄さ」は一瞬でわかる」

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その28 「魂の所在」

          前回の続き。11月20日に及川さんをお呼びする対談企画、目前に迫ってまいりました。ぜひご予約を。 連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」 第五回「絵画における人のかたちと外部」─及川聡子─ 氷や煙、といった「無生物」を長年描いてきた及川さんが、しかし数年前から人物を描くようになった、このポイントが興味深いのですが、例えば氷や煙を描いていた頃、及川さんは「うさぎ」の絵を描いています。 ただ、このうさぎの絵は、展示会場では周辺的な場所に置かれていました。大きさも小さいもの

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その28 「魂の所在」

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その27 「及川さんの絵画には彫刻が埋め込まれている?」

          前回の続き。11月20日に及川さんをお呼びする対談企画はもうすぐです! 連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」 第五回「絵画における人のかたちと外部」─及川聡子─ ご予約お待ちしています。 及川聡子さんが描き始めた──それが及川さんなりの、ある「構想画」への一歩目ではないかと僕は思っているのですが──人物の表現、そのキーになるのは“彫刻性”です。日本画的なるもの、ではないのですね。もう一度、及川さんの人物像を見てみましょう。 とくに頭部の表現に注目してください。これ

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その27 「及川さんの絵画には彫刻が埋め込まれている?」

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その26 「私達は、芸術の歴史の中でどこにいるのか(いないのか)」

          前回の続き。11月20日開催の、画家・及川聡子さんにお話を伺う対談企画 連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」 第五回「絵画における人のかたちと外部」─及川聡子─ で検討したい問題について、つらつらと書いていきます。美術は、たいへん大雑把に考えると、人間が自分の運命を決めている(とそれぞれの時代に考えた)主題について描いてきました。太古は動物に表象されるような「世界・宇宙」です。ラスコー壁画が有名ですね。 ラスコーの洞窟壁画 紀元前15000年頃? 次に、「神」ある

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その26 「私達は、芸術の歴史の中でどこにいるのか(いないのか)」

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その25「美しさが構造から出来上がっていくことについて」

          美しい画面の構築が印象的な及川聡子さんのお話を伺う機会が、ようやく来ました。 連続対談シリーズ「私的占領、絵画の論理」 第五回「絵画における人のかたちと外部」─及川聡子─ 僕の「一人組立」と美術家のNPO法人であるART TRACEの共同企画、画家の方々との連続対談「私的占領、絵画の論理」は、なんと前回から1年!の間隔をあけて第五回の開催にこぎつけます。きたる11月20日(土)の19:30から、両国ART TRACE GALLERYにて。要予約。 今日からまた、及川さん

          連続対談「私的占領、絵画の論理」について。その25「美しさが構造から出来上がっていくことについて」

          批評的であることの根拠

          2021年9月20日、美術史家・美術批評家で上智大学教授の林道郎氏が、セクシャルハラスメント・アカデミックハラスメントで元教え子の女性から提訴されているとの報道を僕は読んだ。林氏は「指導教官という立場ではあったが自立した成人同士の自由恋愛をしていたに過ぎない」と主張しているという。 画家としての僕はかつて林氏に、自主企画展「組立」でトークイベントや鼎談を依頼し受けていただいた。さらに林氏が責任編集の一人となっていた美術批評誌に編集協力という立場で参加した。編集協力を僕は20

          批評的であることの根拠

          M-galleryでの対話その2(三松幸雄さんと)

          M-galleryでの、永瀬恭一個展「感覚された組織化の倫理」は会期を無事終えました。ありがとうございました。この展覧会では、コロナウイルス感染状況から公開のイベントを断念した代わりに、会場で対話を行い録音をアップロードしています。 前回、ギャラリーマネージャーの伊藤真理子さんとお話しましたが、今回、三松幸雄さん(哲学/現代芸術)との対話を公開いたします。収録は展覧会会期中の2021年3月11日でした。 全部で3つのパートに分かれていますが、全体として、永瀬の画家としての

          M-galleryでの対話その2(三松幸雄さんと)